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ソフトバンクとPayPal、合弁会社を設立


 ソフトバンクとPayPal(ペイパル)は9日、日本国内で50%ずつ出資して合弁会社を設立すると発表した。同日午前、都内で記者会見が開催され、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏、eBay CEOのジョン・ドナホー氏、PayPal代表のデイヴィッド・マーカス氏が出席した。

 「オンラインとオフラインが融合して、支払も一体化される世界になる」と孫氏は語り、PayPalとソフトバンクが最強連合とした。
左からソフトバンクモバイルの喜多埜氏、eBayのドナホー氏、ソフトバンク孫氏、PayPalのマーカス氏

 両社では今後、10億円ずつ出資して合弁会社を設立。その合弁会社の社名は、PayPalの現日本法人と同名の「PayPal Japan」で、両社から3名ずつ役員を派遣し、CEOにはソフトバンクモバイル取締役常務執行役員の喜多埜裕明氏が就任する予定。ただし合弁会社の設立時期は未定で、両社の取り組みが本格的に進められる7月頃を目処に設立される見込み。

 合弁会社では、日本市場において、スマートフォン活用の小売店向け決済ソリューション「PayPal Here」を提供する。「PayPal Here」は、専用アダプターをスマートフォンのイヤホンジャックに装着すると、スマートフォンがクレジットカードリーダーになるというもの。クレジットカードやデビットカード、PayPalアカウントでも決済でき、代金は即時に店舗の口座に振り込まれる。クレジットカードはVisa、MasterCard、American Express、デビットカードはVisaデビットカード、MasterCardが利用できる。

 まずはPayPal加盟店のうち限られた店舗でトライアルが進められる。その店舗は明らかにされていないが、クレジットカード決済を利用する場合、一般ユーザーも「PayPal Here」経由で支払うこともあるという。ソフトバンクの営業力を活かし、加盟店が開拓される予定で、7月から本格展開が予定されている。7月時点での導入店舗数など、規模感は明らかにされていないが、ソフトバンクモバイルのWi-Fiサービス(ソフトバンクWi-Fiスポット)の件数が短期間で急激に増えたことなどもあり、相当数の店舗の参加が期待されている。

 現時点の対応機種はiPhoneのみで、Android向けアプリは今後提供される。「PayPal Here」では店舗用アプリが用意されるほか、エンドユーザー向けのアプリは今後のバージョンアップによって加盟店での支払方法として「PayPalアカウント」が選択できるようになる。

中小店舗で安価にクレカ決済

 「PayPal Here」は今年3月、米PayPalが発表した決済サービス。オンライン決済サービスとして、世界最大級の事業者であるPayPalだが、「PayPal Here」はスマートフォンを活用して、オフラインの決済を提供するサービス。先述したように、スマートフォンがクレジットカードリーダーにできるとして、従来のクレジットカード決済システムと比べ、安価な導入・運用が可能とされ、中小規模の小売店での導入が見込まれている。海外では、米国、カナダ、オーストラリア、香港でテストマーケティングが開始されている。

 一方、日本は合弁会社を通じ、5カ国目の「PayPal Here」導入市場となる。専用アダプターは、ソフトバンクショップにおいて1200円で販売される予定で、ソフトバンクの営業陣が店舗に導入を売り込むほか、ショップで購入して、手持ちのスマートフォンと組み合わせてクレジットカード決済を実現することもできる。
手数料は5% アダプターは1200円
一般的なクレジットカード決済で導入にかかるコスト

 店舗にかかる費用は、決済手数料として1件5%(1000円の商品を販売した場合は50円)かかる。この5%は、クレジットカードブランドへの手数料も含まれるとのことで、初期費用や毎月のランニングコストといった費用を店舗が支払うことはない。国内のクレジットカード手数料は明らかにされておらず、店舗や業種によって異なったり、1回の決済で数%の手数料に加え、数十円という固定された代金が発生することもあるという。会見では、一般的なクレジットカードの導入にかかる費用として「導入コスト(CATと呼ばれる決済用端末の費用)が10万円前後、カード会社からの支払まで15日〜30日、決済手数料5〜8%」とされ、「手数料5%、手持ちのスマートフォンと1200円の専用アダプターで即日入金」という「PayPal Here」の優位性を強くアピールした。

 「PayPal Here」を導入する店舗では、店舗用のPayPalアカウントを作成し、スマートフォンアプリにアカウントを設定しておく。アプリ利用時は、最長でも24時間ごとと、定期的にログイン手続き(パスワード入力)が必要で、アプリ上では、その店舗で販売するメニュー、品物、それらの価格の登録や、POSレジのように来店客が購入した品々の選択および支払方法の選択、といった操作が可能となっている。
スマホをクレカリーダーに 店舗向けアプリ、注文入力画面
アダプターのパッケージ 同梱のシールを店頭に貼ってPayPal Here対応店とアピールできる

 支払方法には、後述するPayPalアカウントでの支払い、専用アダプターを用いるクレジットカード、そして現金が利用できる。現金の場合は、そのまま店舗側で現金を管理し、PayPalアカウントに入金は行われない。クレジットカード決済については、専用アダプターでクレジットカード情報を暗号化(AESを利用とのこと)し、3GやWi-Fi経由でサーバーに伝送する。このときVPN(仮想専用線)は用いず、店員はVPN設定などをしておく必要はない。また仕組み上、圏外では利用できない。クレジットカード決済では、ディスプレイ上に来店客からサインをもらう形となり、決済が終わると、レシート情報のメールがユーザーに配信される。領収書が必要な場合は、これまでの支払方法と同じく、口頭で店員に依頼することになる。

 もし返品や、決済対象商品の選択ミスなどがあった場合は、決済履歴から対象となる履歴を選び、払い戻す金額を手入力する。250円のコーヒーを買ったつもりが、350円の別の商品になっていた、という場合は、支払額を350円から250円に変更し、100円を来店客に戻す、という流れになる。
販売履歴 一定時間経過後はログイン手続きが必要に

“チェックイン”で支払い

来店客の申告にあわせて決済方法を選択。「PayPal」ボタンの右上にある数字はチェックインしている客の数

 スマートフォンをクレジットカードリーダーにする機能に加え、「PayPal Here」の大きな特徴となる機能は、「リアル店舗でPayPalアカウントで支払える」というもの。PayPalユーザーは、クレジットカード情報を登録しており、自分のPayPalアカウントを店員に伝えると、アカウントに紐づいたクレジットカードで決済できる、というわけだ。ただ、この“アカウントを店員に伝える”という流れでは、今回スマートフォンアプリを操作する「チェックイン」と呼ばれる仕組みが取り入れられている。

 「Foursquare」や「ロケタッチ」など、店舗や施設にいる、ということを記録するWebサービスが近年人気だが、“チェックイン”は“位置情報を登録する”行為を示す言葉として使われることが多い。「PayPal Here」におけるチェックインもまた、客となるユーザーのアカウントが店舗を訪れるときに行う。こうすることで、店舗側のアカウントからは「今、このお店にいる人のPayPalアカウント」が把握できることになり、商品購入時にチェックインを行い、さらに「PayPalで支払う」と伝えれば、店舗側は支払方法で「PayPal」を選択、アプリ上に表示されるユーザーの顔写真と購入しようとしている本人を照合して、PayPalアカウントで決済する。ここまでの流れで、チェックインは手動で行うことが想定されているが、今後は、“自動チェックイン”機能が実装され、加盟店を訪れると自動的にチェックインすることもでき、よりスピーディな支払いが可能になる、とされている。
一般ユーザー向けアプリでチェックインしたところ 支払完了画面

O2Oでオフライン決済トップを目指す

 9日の会見で、孫氏は「キーワードはO2O(Online to Offline)」と語り、インターネットから実店舗への誘導、あるいはオンラインサービスと実店舗の連携が重要と指摘する。同氏が示した資料では、米国の決済の約5割が、商品情報や店舗情報の検索などを含め、何らかの形でO2Oにあたるとされ、日本ではまだ約2割に留まると指摘。米国と同等の5割までO2Oを引き上げることを目指す。ソフトバンクグループ900社がリーチできる日本のユーザーは1億人以上として、ヤフーや携帯電話サービスなどのユーザーが来店客になると強調し、「現金を持たなくても安心して利用できる。新しい、革命的なライフスタイルを作りたい」と意気込んだ。
新たなライフスタイルの創出と意気込む オンラインではサイトごとに決済登録が必要だが、PayPalで手軽に利用できるようになる、とアピール
O2Oは米国の小売市場の5割という 日本はまだ2割

 PayPalの親会社である、eBay CEOのジョン・ドナホー氏は、O2Oの発展は、オンラインとオフラインの境界線をなくし、もはや“Eコマース”という言葉で“E”が強調する意味はなくなった、と説明。PayPalは、2011年において世界で1180億ドル(約9兆4000億円)を取り扱い、世界のアクティブアカウント数は1億1000万(半数以上は米国外)で、190の国と地域で利用できるとのことで、セキュリティの概要は語られなかったものの、こうした実績がPayPalの安全性を示す、とした。

 PayPalのマーカス氏は、「日本の小売市場は134兆円で魅力的。小規模事業者は5000万存在するが、クレジットカードの取扱店舗は少数」と述べ、PayPal Hereで小売店の収入機会の創出を目指すと語った。

 手数料5%が収益源となる合弁会社は上場を目指す方針で、「親会社(のソフトバンクとPayPal)はあくまで合弁会社の成功に全力をあげ、利益を吸い上げるのではなく、日本における支払手段のナンバーワンになって利益を上げ、上場を目指す。アダプターもコスト相当の価格で、アダプターで儲けるつもりはない」(孫氏)とのこと。

 今後は、家計簿のような機能を備える関連アプリなども提供される予定で、孫氏は「おサイフケータイの決済額はとても少額。チャージや機種変更などが面倒で、あまり使われていないのが実態ではないか。PayPal Hereはクレジットカードがそのまま利用でき100円でも何万円の買い物でも利用できる。おサイフケータイは日本における一時的なビジネスモデルだった、と数年後には言われるのではないか。自動チェックインをONにしておけば馴染みの店に行くだけで、顔パスで買い物ができるようになる」と述べ、PayPal Hereが未来の決済を担う、とした。




(関口 聖)

2012/5/9 11:41