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ドコモ山田社長が退任、新社長は加藤薫常務に


 NTTドコモは、新たな役員人事を発表した。経営陣が刷新され、山田隆持社長が退任し、取締役常務執行役委員で経営企画部長の加藤薫氏が就任する。6月19日の株主総会で正式に承認され次第、決定する。

 前社長の中村維夫氏からバトンを引き継ぎ、4年間、ドコモを切り盛りした山田隆持社長が退任する。兵庫県西宮市出身という同氏は、社長就任直後、ドコモの全国8社体制から1社への統一で、組織改革に取り組んだ。スマートフォンの普及期を迎え、製品発表会で自らプレゼンターを務めるとともに、iPhoneに関する発言がメディアを賑わせたこともたびたびあった。2011年度は、東日本大震災後の対策を実施して、いくどか被災地を訪れるなど、精力的に取り組んだ。その一方で同年度には、多くの通信障害が発生した。

 新社長の加藤薫氏は、大阪府出身の60歳。1977年に電電公社(現NTT)へ入社後、技術畑でキャリアを積み、早期から移動体通信事業に携わった。1985年の日航機墜落事故では、チームを率いて当時開発中だったショルダーホンなどを運び、墜落現場で対応にあたる自衛隊など関係者への通信手段を提供した。2005年には、NTTドコモの出資に伴い、三井住友カードの代表取締役兼専務執行役員となり、2008年の山田体制になったドコモで経営企画部長を務めてきた。
退任する山田隆持社長(右)と、新社長の加藤薫常務(左)

 11日はNTT(持株)の決算発表日で、それに先だってNTTグループの社長交代会見が行われた。4月になってから加藤氏に社長就任の話があり、その後、4月中旬に山田氏の人事異動の通知があった。

 社長交代に伴い、副社長の辻村清行氏、鈴木正俊氏、松井浩氏は退任する。そこで新任の副社長には、財務を担当する坪内和人氏、ネットワーク担当の岩崎文夫氏が就任予定となった。また新任取締役として、研究開発推進部長で“LTEの父”とも称される尾上誠蔵氏、かつてプロダクトを担当し、現在はマーケティング部長を務める永田清人氏、第一法人営業部長の佐藤啓孝氏、フロンティアサービス部長の高木一裕氏、NTT経営経営企画部門担当部長の楠本広雄氏が就任する。なお楠本氏は社外取締役候補となる。

山田社長が振り返る4年間

 山田社長は、就任以来、これまでに「お客様満足度の向上」「スマートフォンの推進、ネットワークのインテリジェント化の対応」「総合サービス企業への進化の取り組み」「安心・安全の提供」に取り組んできた、と振り返る。

 満足度向上に関しては、支店やショップなど450カ所を訪問し、「満足度の向上が重要、という意識が十分浸透したと現場へ行くたび、確認できたのは何より嬉しかった」と語る。また安心・安全については、2011年度に発生した通信障害について、「ご迷惑をおかけし、心から申し訳ない」とあらためて謝罪、4月末までにひとまずの対策が完了していると報告した。また、東日本大震災では1カ月でエリア復旧にこぎつけ、今後の災害に向けた対策も今年2月までに完了し、「通信事業者最大の責務は、なんと言っても通信の確保、ということが再認識できた」と語った。

 次期社長となる加藤氏については、移動体通信事業に関わり続け、モバイル市場の変化を肌で感じてきた人物と評し、震災や通信障害への対策、そして今後に向けた中長期計画の策定などで、経営企画部長として加藤氏の功績が大きいと述べ、「持ち前の明るい性格とスピード感で、変化の激しい時代においてドコモを引っ張っていって欲しいということで社長就任をお願いした」とした。加藤氏には今後も満足度の向上、現場を原点とする姿勢を続けて欲しい、と語った。

スピード重視の加藤氏、「飽くなき好奇心とへこたれない精神」

 「本日の取締役会で、次期社長の指定を受けた加藤です」と挨拶した加藤氏は、過去4年間、山田体制の経営企画部長として、ドコモの変革に取り組んできたと振り返り、今後は「スピード&チャレンジ」という言葉を掲げ、魅力的な端末、サービスの提供で「(ドコモの中長期計画で目指す)スマートライフの実現に全力で取り組む」と意気込む。社長就任の話を打診されたときは、「身の引き締まる思い。激動の時代だが、長年、移動体通信に関わり、ぜひやりたいと答えた」と述べた。

 具体的に3つの柱がある、とした加藤氏は「スマートフォン時代におけるモバイルサービスの進化」「総合サービス企業への進化の加速」「新たな挑戦を支える基盤の強化」を挙げる。

 1つ目は、自社による研究開発を活かすイノベーション、最先端企業とのアライアンスによって、端末とネットワークが連携した魅力的で先進的なサービスをスピーディに提供したい、と考えているとのこと。

 2つ目の総合サービス企業に関する取り組みでは、モバイルと相乗効果がある分野で、他社とのアライアンスを積極的に進め、新たな市場・新たな価値の創造に挑戦する。グローバルでも海外キャリアへの出資に加え、「いわゆるプラットフォームの構築にも取り組みたい」とした。海外展開について質疑で問われると、インドを中心とする海外キャリアへの投資を含め、これまでの取り組みで、成果はまだ出ていないが、今後の進化に向けた礎が盤石になってきた、と評価し、中長期的な取り組みで進めるとコメント。またプラットフォーム展開などでさまざまな検討を進めており、「一定の結実が出る時期が来るだろう」と、近い将来、何らかの発表が行われることを示唆した。

 3つ目は、モバイル領域のコスト構造の改革の実施、ネットワーク基盤の高度化、さらなる満足度の向上、そして新領域への挑戦に向けた体制構築、人材育成に努めるとした。

 モバイル通信の黎明期から進化と発展に情熱を捧げた、と語る同氏は、人を中心とするサービスや企業として、「飽くなき好奇心とへこたれない精神で頑張りたい。ドコモグループ一丸でチャレンジを繰り返したい」と、先進性をアピール。質疑で、最も重視する項目を問われた加藤氏は「スピードとチャレンジの中でも、やはりスピードを重視したい。モバイルは革新がとても速く、世界中の動きに対して、迅速に対応することが重要だ」と語る。

 NTTグループにおけるドコモの役割について、加藤氏は「昨今は、一言で言えば、モバイルの時代という側面が大きい。コンシューマサービスについては、ドコモが主体的に提供したいと思っている。一方、それを支えるネットワーク、クラウドはグループ全体で最適なものを考えていければいいと思っている」と述べる。

七分で良しとせよ

 スピード感を重視するコメントを強く打ち出した加藤氏だが、会見最後の質問に答えるなかで、「スピードに加えて、もう1つ『七分で良しとせよ』という言葉が好きだ。あまりにも完璧を求めるあまり、時間の概念がなくなる、ということを自ら戒めている。たとえばサービスであれば、ユーザーに育ててもらう、という側面があってもいい。失敗すれば、できるだけ早くやり直せばいい。これまでもそうしてきたし、これからもそうしていきたい」と述べた。

iPhone、現状では難しい

 今後どういった端末を整えるか、という問いの中で、加藤氏は「ユーザーがどのような端末を好み、選ばれていくのか、その時々でベストなものを選びたい。ベストなラインナップになればいい」と回答。

 iPhoneについては、「従来から申し上げている通り、現段階ではなかなか導入が難しいと思っている。一部報道にある通り、いろんな条件がある。それが我々の考えと少しあわないところがある、というのが正直なところ。一方ではオープンなOSのもと、多くの方々とのアライアンスを通じて魅力あるサービスを構築したい」と語った。




(関口 聖)

2012/5/11 14:08