イー・アクセス決算、「EMOBILE LTE」は2週間で7万契約獲得


エリック・ガン氏

 イー・アクセス(イー・モバイル)は、2011年度(2011年4月1日~2012年3月31日)の業績を発表した。

2011年度増収増益、経常を純利益は過去最高

 2011年度の業績は、売上高が2047億4300万円、営業利益が244億4100万円、経常利益が121億8400万円、純利益は151億5600万円となった。イー・アクセスは、2011年3月31日付けでイー・モバイルを吸収合併し、イー・モバイルはサービスブランド名称となった。このため連結子会社がなくなり、2011年度の決算から非連結の決算となっている。このため、財務諸表上は前年比データは記載されていない。

 ただし、比較するために用意されたイー・アクセス側の試算では、売上高が前年比13%増、営業利益が63%増、経常利益が140%増、純利益は4%増と増収増益となっている。EBITDAは前年比4%増の625億円、設備投資額は前年比19%減少の332億円。

2012年度通期予想

 また、2012年度(2012年4月1日~2013年3月31日)の通期予想も公開され、売上高が前年比22%増の2500億円、営業利益は7%増の260億円、EBITDAは6%増の660億円で、純利益は前年比11%減少の135億円とされた。純利益の減少は、2011年度に含まれる法人税等調整額32億円の影響。

 なお、事業セグメント別の予想値も明らかにされた。無線事業の売上高は前年比34%増の2150億円、営業利益は77%増の170億円、EBITDAは25%増の540億円。ADSLの固定事業は、売上高が前年比22%減の350億円、営業利益が39%減の90億円、EBITDAが38%減の120億円。

 なお、説明を行ったイー・アクセスの代表取締役社長のエリック・ガン氏は、2012年度の予想について「かなりコンサバ(保守的)な数字」と語っている。



設備投資額

 2011年度の設備投資額は、前年比20%減の332億円だった。2012年度は、イー・モバイルが3月よりスタートさせたLTEへの設備投資が加速するため、前年比36%増の450億円と見積もられている。

 純フリーキャッシュフローは、2011年度が前年比377%増の186億円、2012年度は62%減の70億円とされた。



MVNO事業者の割合減らし、ARPU上昇へ

 イー・モバイルの契約数は、2010年度の312万契約から90万契約を積み増し、2011年度は402万契約を達成した。四半期毎の純増数の推移を見ると、おおよそ1四半期あたり20万会員を獲得しており、2011年度は20万契約を下回ることはなかった。

 同社は2011年度第3四半期の決算会見において、3段階にステップアップしていく中期的な成長戦略を発表している。2012年度はその最初のステップとなり、「モバイルブロードバンド市場でのポジション強化」を目標に据える。

 2011年度の月次解約率は1.5%となった。1ユーザーあたりの通信収入を示すARPUは2740円だった。一人あたりの顧客獲得費用は2万5000円で、その回収にかかる期間は9.1カ月とされた。

 一方、2012年度のイー・モバイルの会員獲得目標数は、450万とされた。ARPUは2800円で、月次解約率は1.6%、顧客獲得費用は3万円となり、その回収期間は10.7カ月とされた。

 2012年度に解約率が上昇する理由について、ガン氏はイー・モバイルのMVNO事業者の解約増加を理由とした。約400万会員のイー・モバイルユーザーのうち、現在約25%がMVNO事業者の契約によるもので、イー・モバイルはこの割合を減らし、自社ブランドでのサービス展開を強めたい考えだ。その意気込みはARPUにも反映されており、2012年度のARPU増加予想は、MVNOの契約割合低下によるものという。ガン氏は、自社展開の割合が増えることで「3000円以上になるのではないか」と話していた。



「EMOBILE LTE」開始2週間で7万契約

 3月15日、イー・モバイルのLTEサービス「EMOBILE LTE」が始まった。利用料は月額3880円で、現在順次エリア拡大を進めているという。全国のエリアカバー率は、サービス開始時の40%から、6月に50%、7月にも70%とする計画だ。

 「EMOBILE LTE」の通信速度は、下り最大37.5Mbpsで(一部で最大75Mbps)、上り最大12.5Mbps(一部で最大25Mbps)となる。世界的にも珍しいのは、下り最大42MbpのDC-HSDPA方式と、同一周波数帯を利用してLTEサービスを運用している点だ。

 ガン氏は、同社が1.7GHz帯で展開している現在の「EMOBILE LTE」について、1800MHz帯のGSM事業者とほぼ同じバンド域であるとする。現在世界で約16の通信事業者が1800MHz帯でLTEを展開し、約37の事業者がLTEサービス提供に向けて準備していると説明した。

 また、事業者名を出さない形で、NTTドコモの「Xi」、ソフトバンク系のAXGPを比較し、製品面ではバッテリーが長寿命であるとした。料金面では、他社が月額5000円台なのに対し、「EMOBILE LTE」が月額3880円と割安であることをアピールした。

 家電量販店の販売シェアについても言及し、モバイルブロードバンド端末のシェアは、毎週30%程度と首位を維持しているが、「EMOBILE LTE」のスタートからは45~53%とシェアが高まっているとした。

 なお、3月15日のスタートから2週間の「EMOBILE LTE」の契約数は7万回線とされた。



プラチナバンド「700MHz帯」について

 このほか、現在、総務省において申請を受け付けている700MHz帯の割り当てについてもあらためて説明した。

 ガン氏は、900MHz帯の免許割当ではソフトバンクに1点差で破れたとし、電波特性が良いとされるプラチナバンドを持っていない事業者は「我々だけ」とアピールした。

 なお、700MHz帯は3社に割り当てる方針が総務省より示されている。ガン氏に手応えを問うと「獲得できると思っている。あとは3枠のどこを獲るか、これから問題になるだろう」と語った。イー・アクセスでは6月にも割当先が決定すると予想している。

 このほか、700MHz帯から既存の利用者を移行する費用について、総務省の試算を紹介し「全体600~1500億円を3社で負担するので、1社200~500億円。900MHzの1社2100億円負担より数字は小さい」と話していた。



 




(津田 啓夢)

2012/5/11 20:54