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ドコモ山田社長、「スペックではなく使い方で選べるスマホに」


 16日、NTTドコモは2012年夏モデルを発表した。都内で行われた発表会で、冒頭、代表取締役社長の山田隆持氏は、2011年度におけるドコモのスマートフォンが882万台の販売となり、2012年度は1300万台を目指すと説明。市場の拡大を図るなかで「より安心に使ってもらいたいと準備した」と夏モデルや新サービスを紹介した。

 今回のプレゼンテーションで、山田氏から語られたメッセージは大きく分けて2つになる。1つは「スペック重視で選ばれがちだったスマートフォンが、普及期を迎えて、ユーザー個々人の使い方にあわせて選ばれるようになり、そのためのラインナップを揃えた」ということ。もう1つが、「ドコモならではの付加価値を備えたクラウドサービスを提供する」ということになる。
CMキャラクターの堀北真希(左)、渡辺謙(右)とドコモ山田社長(中央)

「スペック重視から使い方重視になっていく」

 まずはラインナップについて、山田氏は、「通信速度やメモリ、CPU」などでのスペックから「ネットを楽しみたい」「NOTTVを見たい」「簡単に使いこなしたい」「動画を楽しみたい」「好みのサイズを選びたい」といった使い方で選ばれるようになると説明。「SH-06D NERV」(発表済)を含む20機種のうち、Xi対応機種が12機種となり、ネット利用を重視する層に向けた機種と位置付ける。NOTTV対応機種は新たに5機種が追加されたほか、サイズについては、3インチクラスのスマートフォンが4機種、4インチクラスが10機種、5インチクラスが2機種と、豊富な選択肢を用意したとアピールする。動画を楽しめる機種としては、クアッドコアCPUの「ARROWS X」が挙げられた。

 また、夏モデルのスマートフォン16機種でバッテリー容量が平均1740mAhとなり、2011年冬〜2012年春に発売されたモデルと比べ、約20%増量した。さらに「MEDIAS X」「ELUGA power」の2機種では、急速充電に対応し、バッテリーがない状態でも1時間で約80%まで充電できる。より滑らかに操作できるよう改善も施され、夏モデルの画面描画速度は全機種50fps以上となり、従来の約2倍になった。特に「GALAXY S II」は55.86fps、「AQUOS PHONE ZETA」は52.16fpsになるという。

 19機種をラインナップしたことについて、会見後の囲み取材で山田氏は、「スマートフォンにシフトしたということを見ていただきたい。また、どれだけユーザーにベストフィットするスマートフォンを提供できるか。ラインナップの充実度合いはドコモが一番訴えたいところ」と説明した。
今年度のドコモのスマホ販売目標は1300万台 画面描画を向上
バッテリー大容量化 急速充電対応機種も

らくらくスマートフォン

 「使いやすさ」を担当する機種としては、らくらくホンシリーズを継承する初のスマートフォン「らくらくスマートフォン」が紹介された。会見後の囲み取材で、らくらくスマートフォンについて山田氏は明らくらくホンユーザーは900万人強存在しており、今年度は、そのうち5%程度にあたる50万台ほどの販売を期待するとした。らくらくホンユーザーのデータARPUは1000円程度で、今回発表された「らくらくパケ・ホーダイ」は、従来のプランより安価ながら、データARPUの上昇が期待できるとのこと。

「iモード機は1年に一度」

 その一方で、今回のラインナップでは、フィーチャーフォンがキッズケータイだけとなり、iモード端末が1つも含まれていない。

 質疑でその点を問われた山田氏は「今回ラインナップにはないが、冬春で発表したモデルで、1年くらい対応していきたい。iモードの市場性がなくなったということではない」と述べる。囲み取材でもあらためてその点を問われると「次の冬モデルでいくつかiモード端末を出したい。フィーチャーフォンはこれから、開発期間を1年程度にしたいと考えている」と述べ、半年ごとのモデルチェンジではなく、1年ごとという期間での投入にする考えが示された。

Windows Phoneは今冬で検討

 2012年夏モデルのスマートフォンは全てAndroidとなったが、質疑でWindows Phoneの投入を問われた山田氏は「まだ決定したものはないが、冬モデルから導入できないか検討中」とコメント。機種数は多くなく、最終決定はしていないものの、導入に向けて検討しているとした。

“土管化”を避けるためのクラウドサービス

 もう1つ、大きなメッセージとして打ち出されたのがクラウドサービスだ。ドコモでは、かねてより同社の造語である「ネットワーククラウド」という言葉で、同社の通信ネットワーク経由のクラウドサービスだからこそ提供できる付加価値の創造を目指してきた。今後は、同社のクラウドサービスは「ドコモクラウド」というブランドの下でサービスを展開していくことになる。具体的なサービスとしては「しゃべってコンシェル」「通訳電話」などがあり、今回新たに「フォトコレクション」「メール翻訳コンシェル」が発表された。

 こうしたサービスを提供する背景として、山田氏は「ドコモのネットワークにインテリジェンスがあり、魅力的なサービスを機種を問わず、楽しめる。ドコモクラウドで土管化を避けたい」と話す。“土管化”とは、データを右から左へただ流すだけの存在となる、通信事業者の在り方を示した言葉だが、こうした状況になれば通信事業者にとっては他社との差別化が難しくなり、収益をあげるのが困難になる。

 ドコモが今後も生き残りをはかるためには、ネットワーククラウドは重要な施策の1つであり、ドコモ自身が単なる土管になってしまう事態は、できるだけ避けたい――これは、4月下旬に行われた決算説明会でも紹介された内容で、ここ最近のドコモから明確に示されているメッセージだ。この背景があるからこそ、iPhoneを導入しづらい、との説明もこれまで行われてきており、今回の発表会でも、iPhoneについて問われると「ネットワークにインテリジェンスを付けて、各機種で利用できるようにするためには、オープンプラットフォームのAndroidにしたい。今の環境では、iPhoneの導入は難しいと考えている」と山田氏は説明する。
堀北真希と渡辺謙も「しゃべってコンシェル」を体験。堀北真希は、渡辺謙の出身県を質問

 またクラウドサービスをドコモ自身が手がけるメリットが何かと問われると、山田氏は「ネットワーククラウドについては、たとえば通訳電話やしゃべってコンシェルは、ドコモの外にあるサーバー経由となれば遅延が大きくなる」と説明し、ドコモのネットワークで完結するサービスだからこそ一定の品質になるとする。一方で、今回発表の「フォトコレクション」のようなオンラインストレージは、他社も提供するもので、今回はドコモの製品群との親和性などから提供されたものの、「クラウドサービスを全てできるわけではない。棲み分けがある」とした。
渡辺謙は、堀北真希の誕生日を質問 しゃべってコンシェルの新機能で、堀北真希の生年月日を推定し回答

アニメストアへの期待感

 発表会では、新たなコンテンツサービスとして、「アニメストア」が発表された。これは角川書店とドコモが合弁会社を設立して運営していくもの。会見に登壇した角川書店会長の角川歴彦氏は、ドコモの6000万ユーザーに、角川の豊富なアニメを組み合わせ、「今までにないアニメ視聴機会を提供する」と意気込んだ。囲み取材では、合弁会社にした理由として、山田氏は「アニメ市場においてグローバルで展開したいため」と説明。権利関係などをとりまとめる体制として、合弁会社が適切と判断したという。

 なお、ドコモ直営のコンテンツマーケットであるdマーケットの売上は100億円を超えているとのこと。映像配信のビデオストアは100万会員となり、年間の利用額が525円×12カ月で約6000円、年商60億円のストアになっていることも明らかにされた。

Xi利用の公衆無線LANアクセスポイント

 駅構内などはNTT-BPが光回線をバックボーンにする設備となっているが、中小規模の飲食店などではXiがバックボーンの公衆無線LANアクセスポイントを展開したい、とした。混み合う2.4GHz帯だけではなく、5GHz帯対応のスマートフォンは6機種となり、今後も拡充される見込み。

NOTTVについて

 今年度100万契約を目指すNOTTVだが、山田氏は囲み取材で「5月初旬の段階で、約3万5000契約。(100万までの道のりは遠いのでは? という問いに)月額525円のビデオストアも5カ月で100万契約に達した。NOTTVが2000円、3000円であれば厳しいが、月額420円。番組が楽しく面白ければ契約してもらえるのではないか」とした。

 またアニメストアは、今回、直接NOTTVと関連はないが、相乗効果は期待する、とした。

MNP対策に手応え、チップ不足にも取り組む

囲み取材に応える山田氏

 夏モデルの割引適用後の価格は1万円台が大半を占める見込み。タブレットは0円になるなど、ユーザーにとっては手を出しやすい価格帯になる。

 4月の決算説明会では、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)での施策として、割引額を増加させる方針が示された。2012年度になって1カ月半経過し、その施策の手応えとして、「今回のスマートフォンも実質価格が1万円〜1万5000円くらいになるが、ユーザーに浸透するまでは時間がかかり、4月の勢いはそこまでではない。ただ、4月と5月15日までの状況を見るとポートアウト(転出)が25%ほど減少した。効果は出ている」と解説した。

 このほかクアルコム製チップセットが不足しているのでは、という指摘について、山田氏は「Xi対応チップが品不足であるのは事実。現時点で売れ筋のところの予測が当たれば問題はない。冬にかけても供給をお願いしている」と述べる。ドコモでは、サムスンや国内メーカーと、ドコモが中心となって開発したXi対応チップセット(通称さくらチップ)の生産に向けて、合弁会社の設立を目指したものの、条件が折り合わず断念。こうした背景を踏まえた今後について「ああいう状況で、その一部をやりたいと思っていたが、これからはクアルコムということになる」と、詳細な説明を避けて言葉を選びつつコメントした。

Xiのエリア拡充

 Xiのエリアについては、2012年度、あらたに1700億円ほど投資して、エリア拡充を図る方針が示された。これにより、Xiエリアの拡充と品質確保に取り組む。

 一方、auが前日15日の発表会で、LTEの実人口カバー率を2012年度で約96%にする、と発表したことについて「実人口カバー率というのがよくわからないが、ドコモは2012年度末までのXiの投資額が累計3000億円になって、人口カバー率が70%になる。かたやauは1.5GHz帯の開設計画において『2014年度までに5000億円を投資して、人口カバー率96%』としていた。しかしauの投資計画は1000億円程度で、実人口カバー率が96%と言っている。どういう理屈かよくわからない」と述べた。

最後の発表会

 この6月で社長職を退任し、相談役になる山田氏は、これまで新製品発表会のプレゼンターとしてたびたび登場し、積極的に活動してきた。

 社長として最後の製品発表会となる同氏は「退任会見では、赤いドコモのネクタイをしていると、まだまだ続けるぞ、と捉えられかねないと思い、青のネクタイにした。(最後の発表会を終えてどうかと問われ)もともと固定系でキャリアを積んで、移動体に来てわからないことばかりだったが、今や、思い残すことはない。お客様満足度向上も店舗側に伝わった。スマートフォンも昨年度882万台売れた。ネットワークのインテリジェント化、総合サービス企業への礎を築けた」とあらためて振り返った。




(関口 聖)

2012/5/16 18:43