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ソフトバンク株主総会、日本で「営業利益1位を目指す」


孫正義社長(オンデマンド配信映像)

 ソフトバンクは、2012年6月22日午前10時から、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて、第32回定時株主総会を開催した。

 議長を務めた孫正義社長による開会宣言のあと、2011年度の事業報告を約8分間のビデオを通じて行い、このなかで売上高、営業利益、経常利益、当期純利益において、過去最高を更新したことを示し、有利子負債の削減が進んでいることや株式の格付けが過去最高となっているといった財務体質の強化についても触れた。ビデオのなかでは、iPadのテレビCMを挟み込むなど、アップルとの連携の強さも強調してみせたのが印象的だった。

 続けて孫社長は、約1時間30分の長時間に渡って、今後の事業方針を説明した。

 まず、創業以来の歴史を振り返りながら、2011年度にKDDIがiPhoneの取り扱いを開始したことにも言及。「これはソフトバンクにとって、携帯電話事業参入以来、最大の危機と捉え、この難局に立ち向かった。結果として、iPhoneの販売は、圧倒的シェアでKDDIを上回った。歴史を振り返ると、数々の苦難があった。なぜ、これだけの苦難が来るのかとも考えたが、これらは成長に欠かすことができない試練だったのではないか」などと語った。

 続けて、孫社長はスクリーンに、「3」、「2」、「1」という数字を次々と写し出し、それぞれの数字の意味について説明した。

 3では、売上高で3兆円を突破という点に言及。2では、ボーダフォンを2兆円で買収し、買収後には2倍のユーザー数に拡大したことを示す一方、昨今のウィルコムの取り組みについても触れ、「ウィルコムの契約数は480万契約と創業以来最高となった。毎月黒字となっており、社員に特別ボーナスも出した。ウイルコムには優秀な社員が多く、学ぶことも多い」などとした。

 そして「1」という数字では、「2016年度連結営業利益で1兆円を達成する」という目標に加えて、新たに、「さらなる目標として、国内のすべての事業会社のなかで営業利益1位を目指す。現在、1兆円以上の利益をだしているのはNTTだけ。一番営業利益を稼ぐ会社になることを、次なる目標にしたい」と語った。


 

 さらに「269120」という数字を写し出し、「これは、ソフトバンクの株主数である26万9120人。いつも株主からは、配当について質問が出て、それに対して私は、成長も内部留保も必要であると回答してきた。しかし、目標として、純有利子負債半減、3年間でフリーキャッシュフロー1兆円も達成した。そこで、株主還元を重視する方針を掲げ、2014年度に予定していた増配を、2011年度に前倒しで実施する。これは一株あたり20円ぐらいと考えていたが、前年実績の年間5円の8倍となる年間40円の配当とした。これが今日の唯一の決議事項である」などと説明した。

 また、「純有利子負債をゼロにする必要はありますか?」という文字を写し出し、「有利子負債は、ピーク時の2兆4000億円の約5分の1となる5000億円となった。日本で一番有利子負債を減らした会社でもある。このままゼロにすることもできる。しかし、適正な有利子負債を維持し、配当を増やすことでの株主還元、そして、成長戦略をバランスよく推進していくことが、ソフトバンクらしい。新たな財務戦略に挑む」とした。

 さらに、「今後の成長戦略を聞かせてください」という質問内容を写し出し、ここでビデオを放映した。

 放映したビデオは、2004年の株主総会の様子。孫社長は、「いずれ利益で、1兆、2兆と数える規模になりたい」と満面の笑みで語っていた様子を映した。

 「この時の純利益は、1070億円という最大の赤字。それにも関わらず、満面の笑みで、こんなことを言っていた。普通に考えれば、ただのアホ。脳天気も甚だしい。薄くなった頭を見せながら、頭を深々と下げなくてはならない。しかし、内心はまぁみておけ、俺は必ずやるぞと思っていた。だから、満面の笑みで語っていた。役者ではないので本音を語ったもの。そして、今日は、明確に、期限付きで1兆円の営業利益達成を公言している。これを果たせなかったから、『ただのペテン禿』(笑)。ネットでよくそう言われるが、禿げてはいるが、ペテンではないと言い返している(笑)。1〜2年はずれることはあるかもしれないが、以前のように、『ホラだと思って聞いてください』という前置きは一切なし。それだけの腹積もりで、役員一丸となって取り組んでいく」とした。

 先にも触れたように、営業利益1兆円は日本では1社だけ。全世界でも43社しかないという。「ぜひ、この一員になりたい」と孫社長は強調した。


営業利益1兆円、鍵はモバイルのデータ収入

 営業利益1兆円に向けた具体的な取り組みについては、「鍵はモバイルである」と語る。

 「2016年度の1兆円の目標達成の鍵はモバイルである。これがこけると1兆円の達成は無理である。そして、その鍵はデータ収入になる。すでにソフトバンクでは65%がデータ収入に転換している。これは世界のモバイル会社が目指している方向性であり、この先頭を走っているのがソフトバンクである。データ収入はさらに伸ばしていきたい。これを伸ばすための3つの戦略がある。それは、顧客基盤の拡大、ネットワークの強化、スマホコンテンツの強化になる」とした。

 顧客基盤の拡大では、スマートフォンへの取り組みについて、「ここにいる株主で、スマートフォンを持っていない人は時代に遅れている。今日の帰りにすぐにスマートフォンを購入し、買うときにはソフトバンクの店に行ってほしい。当社がいち早く、スマートフォン市場に本格的に取り組みはじめたときには、スマホは日本には必要ないといっていた記者がいた。そうした記者は頭を丸めてほしい。私以上に毛があることがおかしい」などと冗談を交えて発言。高校生のうち95%がスマートフォンを購入したいとしていること、iPhoneの累積購入者のうち42%が女性になっていること、50歳以上の購入比率が11%に達していることを示し、「老若男女がスマホに向かう時代がきた」などとした。

 さらに、「私は、iPadなしには生きていけない。小刀(iPhone)だけでなく、大刀(iPad)を持たないと格好がつかない時代がくる。大刀を持っている人は時代を先取りしている人。株主投資も先を読むのが必勝パターンである。ぜひ両刀を持ってほしい。また、これを自宅の廊下だけで使っている『自宅武士』ではいけない。どこでも使えることは当たり前になってくる。ソフトバンクは、アップルよりも早く、iPhoneとiPadを全社員に持たせた」などと、iPadに対する想いを語りながら、「携帯電話市場は、成熟産業なのか。私は、1人2台の時代になり、平均して1人1.5回線の時代がやってくると考えている。またM2M市場は今後10倍に拡大する。市場は成熟していない。これから成長することになる。モバイルインターネットの第一幕のはじまりであり、ここでソフトバンクの株を売るのはもったいない」などと述べた。

 また、「昨年度、ドコモとKDDIが通信障害により行政指導を受けたが、ソフトバンクにはそれがなかった。理由はボーダフォン買収後、10倍に基地局を増やしたことにある。これは電波が届かないということでお叱りを受けていたことへの対策でもあるが、スマホの時代が来ることで、基地局を増やさないと問題が起こることを知っていた。他社はつながることから基地局を増やさなかった。ソフトバンクは、ここ2〜3年に渡り、基地局の数を先行して増やしてきた。その結果、混雑はしているが、渋滞であり、事故を起こすほどの状態にはなっていない。また、渋滞を解消するには、パイパス道路があるといい。ソフトバンクは、Wi-Fiスポットを急激に増やし、全国26万カ所に設置。ドコモの社長は、会見でWi-Fiスポットはいらないといっており、結果として9500か所にとどまっている。事故を起こして、初めてこの重要性を認識したのではないか」と語った。

 加えて、プラチナバンドに対しても説明。「まだ利用者の間からは、つながりにくいという指摘がある。これを解決する唯一の方法がプラチナバンド。2012年3月には、900MHz帯の割り当てを受け、7月25日からスタートする。これは努力ではなくて、認可の問題であった。これから日本中に広げていける。これで電波の届く範囲が3倍に広がる。これまでの課題を一気に解決できる。『どこでもつながるソフトバンクへ』というこれまでにないイメージを打ち出せる」とした。

 今後は全機種でプラチナバンドを利用できることに触れ、「当初、総務省は国際バンドではない方向でやろうとしていたが、私自身が総務省に怒鳴り込んでいって、最後ギリギリで国際バンドにあわせることになった。これによって、iPhone 4、iPhone 4Sでもプラチナバンドが利用できるようになった」といったエピソードも披露した。

 スマホコンテンツの拡大では、ヤフーが、日本のインターネットユーザーの84%に使用されていることを示しながら、「ヤフーは、経営陣を刷新し、平均年齢44歳の若い経営体制となった。これまではPCファーストだったが、これからは新たな機能をすべてスマホ優先でやっていく『スマホファースト』にする」と語ったほか、「960社のインターネットカンパニーがソフトバンクグループのなかにある。これらがすべてスマホに向けた利用とサービスをやっていく」などと語り、「モバイルインターネットナンバーワンに向けて取り組み、具体的な戦略に基づいて、1兆円を達成を目指す」とした。


 

 一方、自然エネルギーへの取り組みについては、「7月1日から、京都、群馬で運転を開始し、全国で200MWの発電を行い、先進的事例を示す。連携業績への影響は軽微。志が大切である」と語った。

 さらに、「新30年ビジョンの進捗についてはどうか」というスライドを表示し、「ソフトバンクは、2040年には、戦略的シナジーグループを5000社へと拡大する計画を掲げている。一昨年は800社だったが、これが960社に増えた。まだ目標には遠いが、予定よりも速いピッチで増えている。これまでの社会変革には、農業革命や工業革命があったが、いまだに日本の経営者や政治家は、モノづくり日本にプライドを持っている。これは間違っている。世界の工業製品に関する企業の世界の時価総額に対して、情報通信関連業界の時価総額は2倍になっている。大きなトレンドを見誤ると、つぎはぎでは挽回できない。ぜひ大きなトレンドを見誤らないでほしい。情報革命から取り残されると大変なことになる。インターネット経済圏は350兆円。これは経済規模は世界4位に匹敵するもの。ソフトバンクグループのインターネットユーザー数は合計で14億人。これは中国の人口を抜いた規模である」と説明した。

 説明の最後に孫社長は、「2001年の株主総会で、ある株主の女性から、退職金のすべてをソフトバンク株に使ったが、それが10分の1になってしまった。しかし、私は今もあなたを信じています、と言われたことに涙が出たことを思い出す。ソフトバンクは、2040年には時価総額でトップ10入り、時価総額200兆円を目指す。上場した時点では、2000億円の時価総額。今日時点で3兆円まできた。これを200兆円にする。歴史をみると、それぞれの時代において、人々が最も必要とする企業がトップ10に入っている。世界の人々から最も必要とされる企業になりたいというのが、私がソフトバンクを創業し、経営している志である。だが、株価をあげ、配当をあげることにも取り組んでいく。一人でも多くの人の悲しみを減らし、喜びを増やすために経営をしている」などとした。

 その一例として、放射能測定機能付きスマートフォンの受付を今日から行い、7月中旬から出荷することも説明した。孫社長は、「『情報革命で人々を幸せに』がソフトバンクの役割である」などと長時間に渡った事業方針説明を締めくくった。

質疑応答

 引き続いて行われた質疑応答では、15人が20項目の質問を行った。

 「iOS 6が発表されたが、孫社長として今後注目している機能はあるか」という質問には、「Siriはすばらしい技術。スティーブ・ジョブズが残した将来の発展に向けたひとつの事例である。まだSiriはスタートしたばかりだが、今後は、多くの製品、サービスにインパクトを与えると考えている」とした。

 株主優待として、株主専用のお父さんグッズを用意してほしいという要望には、「やりましょう」と即答した。また、株主総会の出席者が孫社長と握手してほしいという意見には、「最近は私の警備がうるさいが、相談してみる」とした。

 創業以来、最も苦しかったことについて質問が飛び、これに対して、「ヤフーBBを始めた時には本当に苦労した。朝も夜もなく仕事をし、趣味のゴルフも1年間封印した。だが、精神的に一番苦しかったのは、創業1年半を経過したときに、肝臓を煩い、3年半に渡り入院を繰り返し、20代にも関わらず余命5年ぐらいだろうと言われたこと。これは、家族と社員、お客様の笑顔をみたいという意志、そして主治医の努力によって回復した。拾った命なので精一杯がんばる」とした。

 新30年ビジョンについては、「まだまだ大ボラである。新30年ビジョンを実現するときには私がいないかもしれない。後継者へのバトンタッチも含めて、ソフトバンクグループ一丸となって成し遂げなくてはならない。私が現役で引っ張るのは60代までと決めている。ソフトバンクアカデミアでしっかりと後継者を育てていく。ソフトバンクアカデミアはやってよかった。また新30年ビジョンのなかでは、世界中の人にも幸せになってほしいと考えており、しっかりと海外展開もやっていく」とした。

 「60代で政治の世界への転身してほしい」との意見については、「私は事業家で人生を終わるつもりでソフトバンクを創業した。政界に出るつもりはない。ただ、原発の件は一国民として大変憂慮している。少しでも再生可能エネルギーなどで事例を示せたらと考えている。政界に出るほどの力や、思いはない。本業を通じてがんばり、Twitterなどでぶちまけたい」などとした。

 なお、 議案であった「剰余金の処分の件」については可決された。

 会場には2039人の株主が出席。さらに株主以外の一般入場者も招待したほか、インターネットによるライブ中継も行った。株主総会は、12時33分に終了した。

 総会終了後には、17年間に渡り、ヤフー社長を務めた井上雅博氏が、ソフトバンク取締役退任の挨拶を行い、「いい経験をさせてもらった。当初はインターネット利用者が10万人と言われていた時代だったが、17年間で利用者数は5000万人、7000万人と言われている。この過程に携わることができた。ヤフーBBは、NTTに独占され、高くて使いにくかった日本のデータ通信を、世界で一番のインターネット環境に作り上げることができた。ヤフーケータイも世界をリードするサービスに作り上げることができた。孫社長の高い志がなければできなかったこと。ヤフー、ソフトバンクの一利用者、一株主として応援していきたい」と語った。

 孫社長は、「ヤフージャパンは、16期連続の増収増益を記録し、日本で最大のインターネット企業を作り上げた。そのことに感謝している。取締役として引き留めたが、若い経営陣に気持ちよくバトンを渡したいということであり、残念で心残りだが、気持ちよく、感謝とともに送り出したい。本当にありがとう」と語った。

 




(大河原 克行)

2012/6/22 14:04