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富士通の夏モデル発表会、「日本のノウハウをスマホに」


 富士通は、NTTドコモ向けの2012年夏モデルを紹介する商品発表会を開催した。代表取締役副社長の佐相秀幸氏、執行役員常務の大谷信雄氏、執行役員の高田克美氏が登壇したほか、NVIDIA日本代表 兼 米国本社副社長のスティーブ・ファーニー・ハウ氏も挨拶を行った。また、CMキャラクターのEXILEも登場した。

 なお、シニア向けの「らくらくスマートフォン」については、別の機会にあらためて紹介される。

 

ドコモ向けは4機種、1チップの「ヒューマンセントリックエンジン」

 今回紹介されたNTTドコモ向けモデルは4機種。クアッドコアの「Tegra 3」(NVIDIA製)を搭載した「ARROWS X F-10D」はNVIDIAの画像処理技術「GeForce」と12個のGPUで高品質ゲームなどもスムーズに処理できる。「REGZA Phone T-02D」は、東芝のAV機器との連携を深めたXi対応スマートフォン。1.5GHz駆動のデュアルコアに有機ELディスプレイを搭載し、映像エンターテイメントを楽しみたいユーザーに向けた機種となる。このほか、服飾ブランドとコラボした「F-09D ANTEPRIMA」、初めてスマートフォンに触れるユーザーに向けた「ARROWS Me F-11D」がラインアップされる。

 個々の機種を紹介した高田氏は、薄さ、ハイスペックなCPU、高速通信など、基本的な性能を追求した上で、センサー技術を活用して使いやすさを追求する「ヒューマンセントリックテクノロジー」を搭載することが、富士通の全てのスマートフォンに共通する考え方と説明する。

持ってる間ON エコ技術
睡眠前にアプリを起動し、寝返りの様子、いびきを記録する「睡眠ログ」

 かねてより富士通では、「人を中心としたヒューマンセントリック」というコンセプトを掲げているが、今回の夏モデルでは、そうした考えに基づく各種機能を処理するため、1つのチップにまとめ“ヒューマンセントリックエンジン”として搭載。これにより、各機種に共通する形で、センシング技術と応用するアプリケーションの開発を統一できるようになり、より幅広い機種に搭載しやすくなったという。

 具体的な機能として紹介された機能の1つは、「持ってる間ON」という機能。これは、加速度センサーが傾きや揺れを検知し続けている間は、ユーザーが端末を手にしていると判断し、画面表示が自動的にオフにならないようにする、というもの。電力消費の激しいスマートフォンのなかには、省電力を優先するあまり、ユーザーが操作中であっても、設定を優先して画面を消灯し表示をオフにするものがある、と高田氏は説明し、「持ってる間ON」の利便性をアピール。また、ソファやベッドなどで端末を手にしたまま横になる際、画面の天地が自動回転(オートローテーション)して見づらくなることがある。これに対して「戻ってシェイク」という機能では、2回端末を振ると、自動回転した画面が元に戻って見やすくなる。このほか省電力機能として、Wi-Fiの圏外に出ると、自動的にWi-Fiをオフにしたり、画面消灯中に一定時間以上、動作しているアプリを知らせてくれる機能などを搭載する。

周囲の光にあわせてディスプレイを調整する機能も 寝転がって端末が横になると画面も自動回転
素早く2回振ると、天地を切り替えて、一時的に画面表示を固定する 固定すると通知

 

NVIDIA、省電力性と高処理能力をアピール

NVIDIAのファーニー・ハウ氏

 NVIDIAのファーニー・ハウ氏は、「ARROWS X」に搭載されるTegra 3の特徴を説明。その内容はこれまでNVIDIAの説明会などで紹介されたもの。ファーニー・ハウ氏は、クアッドコア(4つのCPUコア)について、高い負荷がかかる状態では4つのコアをフルで用いるものの、それなりのパワーが必要な場合は2つのコアで処理し、通話など低い処理能力で済む場合は4つのコアは休ませて、低負荷用のコアが稼働すると説明する。

 この「4+1」の仕組みにより、高性能と低消費電力という相反するスペックを実現できた、とファーニー・ハウ氏は胸を張り、「Tegra 2」と比べパフォーマンスは5倍となる一方、、バッテリー消費は「Tegra 2」の60%に抑えられたと語る。画像処理についても、12個のGPUと、NVIDIAのパソコン向けチップと同ブランドの画像処理技術「GeForce」によって高い能力に仕上げられている。

従来より強化されたTegra 3の特徴 負荷に応じて駆動するコア数を変える

 

物を作らない物作り

富士通の佐相副社長

 MM総研の調査によれば、国内出荷数が4年ぶりに4000万台を超えた中、富士通は、2011年度の国内出荷シェアでトップになった――そう語る佐相氏は、富士通にとってスーパーコンピューターとともにモバイル分野は業界のトップになった分野と説明。そのスーパーコンピューターでシミュレーションしながら端末開発を行っており、富士通では「物を作らない物作り」(佐相氏)を進めているという。

 説明会が行われた28日は、NTTドコモの「GALAXY S III」が発売された日でもあり、海外メーカーとの競争について問われた大谷氏は「(富士通のスマートフォンの強みは)日本メーカーが日本人のために開発したもの。これまでのフィーチャーフォンも優れた機能を持ち、セキュリティも高かった。昨年は遅れを取ったが、指紋認証やセキュリティなどフィーチャーフォンで培ったノウハウ、機能を今年は本格的にスマートフォンへ投入していく」と語り、海外メーカーに十分対抗できる、との見方を示す。

 2011年度は800万台を出荷したとのことで、今年度も同等以上の業績達成を目指し、同時にシェアトップの維持に向けて頑張る、とした大谷氏は、ARROWSおよびREGZA Phoneブランドについて「ARROWSシリーズは、海外オペレーターとも話をしている。まだ具体的な話は言えないが海外展開に向けて頑張っているところ。REGZA Phoneについては、最終的にオペレーター(携帯電話会社)が決定するが、良い物ができれば継続する。その都度判断しながらやっていきたい」と語った。

 新たなバージョンが発表されたWindows Phoneに対しては「Windows 8のパソコンも同じチームで開発しており、パソコン、タブレット、スマートフォンで一体となったサービスも提供できるだろう。しっかりとやっていく覚悟」と前向きなコメント。会見後、あらためて尋ねたところ、大谷氏は、Windows Phoneは法人向けでの展開に期待すると説明。Androidはまだ法人での導入が積極的に行われておらず、その一方でWindowsベースのパソコンを利用する法人はまだ数多く存在することから、エンタープライズ分野での利用が見込め、富士通として積極的に取り組む考えを示した。

 クアルコム製チップセットの数量不足が指摘される中で、富士通への影響について、大谷氏は「影響がないことはないが、アプリケーションプロセッサは今回紹介したTegra 3があり、ベースバンドプロセッサでは“さくらチップ”(通称、NTTドコモなどと共同開発)の物量はたっぷりある。トータルではカバーできる」と述べる。

 

「日本ならでは」を重視する富士通

 さくらチップは、NTTドコモ、NEC、パナソニック、富士通が共同開発したLTE対応の通信プラットフォームおよびそのプラットフォームに対応したチップセットのことで、関連する各社での通称となっている。昨年末、サムスンを交えた形で、さくらチップの製造、今後の開発を行う合弁会社の設立が模索されたが、今春、断念している。大谷氏は、「さくらチップは今春モデルから導入しており、「大変重要な日本の財産。今後発展させて使っていきたい」と質疑でコメント。囲み取材で、合弁会社の設立が頓挫した影響を問われても「生産への影響はない。次に向けた開発も進めている。日本発のモデムは大事だと思う」と重ねて述べており、日本ならではの技術として重要視する考えを示す。

大谷常務(左)と高田執行役員(右)

 富士通の携帯電話は那須などの事業所で生産されているが、海外への移転について問われると、「日本で物作りをしようというのは、パソコンでも続けているスタンス。海外に生産を委託すると、『富士通としてやっている意味』が薄れてしまうし、儲からなければ売却してしまう。しかしこれからクラウド、ネットワークの時代が来る中で、スマートフォンは、エンドユーザーの手にある重要なポジションを占める。クラウド、ネットワークとセットで提供する以上は、自社技術でやっていこうと考えている。富士通としては日本で開発製造にこだわっている唯一の企業ではないか」と語る。

 日本ならではの強みを重視する、と語る大谷氏はフィーチャーフォンにも触れて「世界的に見れば立派なスマートフォン。日本のユーザーの細やかなニーズに応えて開発してきた」とし、今後も“枯れた技術”であるSymbianベースの機種を投入する考えも示す。ネットを活用する利用スタイルのユーザーはスマートフォンに移行しつつ、電話重視のユーザーはフィーチャーフォンに残り、今後も2割〜3割は残るのではないか、との見通しも示した。その一方でAndroidベースでのフィーチャーフォン開発は行わないとした。

不具合対策を取り入れた開発プロセス

 昨年11月に発売された「REGZA Phone T-01D」は、発売直後に不具合が発覚し、販売を一時停止。こうした状況から、質疑応答で品質管理について問われると、高田氏は「ソフトウェア面で起因する不具合はあった。Web上でもご指摘をいただき、あるいは全国の営業経由でユーザーの声を頂戴している。夏モデルについては、パソコン開発の部隊も参画して、改善すべきところを開発プロセスに取り入れ、品質基準を高めた」と説明した。

 また、大谷氏は「昨年は、まずそれなりの機種を出すことに注力した。これまではSymbianという、よく理解したプラットフォームで、チップセットも自社製で品質は安定していた。しかしスマートフォンではAndroidというオープンプラットフォームで、クアルコムやテキサスインスツルメンツのチップセットを用いて、恥ずかしながら、品質面で課題が残っていた。今夏に向けて、品質向上に向けて最優先で取り組んだ。もともとLinuxのようなオープンなプラットフォームを使いこなす部隊は、富士通にもいる。オープンなものは、ある程度性悪説の視点で、疑いつつ取り組まなければならないと、目線も変え、評価ポイントも何倍にも増やした」と説明する。

 また発売直後に不具合が発覚する背景について、大谷氏は「発売前にドコモさんと評価を重ねて大丈夫と判断して発売すると、ユーザーは数多くのアプリをダウンロードする。さまざまなアプリが存在して、メモリを大量に消費するもの、ネットワークをがちゃがちゃと触るものなどがあり、そのあたりの検証が弱かった。(検証コストが大幅にあがりそうだが? という指摘に)そうですが、やるしかない」と述べた。

EXILE登場、「ARROWS」にあわせた曲も

TAKAHIRO

 発表会終盤には、CMキャラクターであるEXILEのなかから、TETSUYA、KENCHI、TAKAHIRO、KEIJIの4人が登場。「日本のアーティストとして、少しでも力になれれば」(TAKAHIRO)と述べ、ディスプレイの美しさや、便利に使える指紋センサーなどを紹介した。ARROWSシリーズにあわせ、新曲「BOW&ARROWS」もCMで用いられる

ARROWS X F-10D

REGZA Phone T-02D

ARROWS meとF-09D ANTEPRIMA


 




(関口 聖)

2012/6/28 16:25