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ソフトバンク四半期決算、900MHz帯の基地局は来年度2万6000局に


孫氏

 ソフトバンクは、2012年度第1四半期(2012年4月〜6月)の決算を発表した。グループ全体の業績となる連結ベースでの売上高は7669億200万円(前年同期比0.2%増)、営業利益は1921億2400万円(同9.3%増)となった。セグメント別では、移動体通信事業が減収となった一方、インターネット・カルチャー事業と固定通信事業が増収となった。

 説明を行った代表取締役社長の孫正義氏は、中期目標である「2016年度に営業利益1兆円」を達成するための取り組みを紹介。ソフトバンクモバイルによる移動体通信事業では、LTEサービスの提供でデータARPUの向上を図る方針が示された。
決算概要 ハイライト

“プラチナバンド”、「ある日突然、繋がるわけではない」

 同社では7月25日より、900MHz帯による通信サービスの提供を開始。他の周波数帯よりも電波が届きやすいとして同社では“プラチナバンド”と呼び、これまで繋がりにくいと評価されがちだった同社の通信ネットワークが改善される、と広告やこれまでの会見でたびたびアピールしてきた。今回の決算説明会でも、モバイル通信ネットワークの設備増強は、利益増加を支えるとして、重要な取り組みと紹介された。
設備投資額

 プラチナバンドの基地局については、サービス開始から約1年7カ月後にあたる2013年度末までに2万6000カ所、設置する方針が明らかにされた。2012年度末までには1万6000カ所で、そこから1年でさらに1万局増やす方針。孫氏は「この展開速度は、業界の常識からすると考えられない」と語る。たとえばNTTドコモのLTEサービス「Xi」は、2010年12月にサービスが開始され、2年3カ月後の2012年度末時点で2万1000局の設置が予定されている。単純な比較は難しいが、孫氏のいう基地局の展開速度は他に例を見ないスピード感を持っているように思える。

 その一方で孫氏は、「ある日突然、全国で繋がるわけではない。既存の電波に悪影響を与えないのか。また突然ユーザーがプラチナバンドへ一気にくるとパンクする問題もある。微調整しながらテストフェーズとして進めている。サービスインした状態でのテストフェーズだが、これから一気に増やす」と語り、現在は試験的な展開を行っている時期との認識を示した。

 900MHz帯の展開については、「一気に改善」(今年3月の免許取得後)、あるいは「垂直立ち上げ」(今年5月の夏モデル発表会)、「これまでの課題を一気に解決できる」(6月の株主総会)といった表現が用いられてきた。また大々的なテレビCMもあり、7月25日のサービス開始早々にエリア改善が図られるとの印象を強く打ち出してきたことは否めない。そうしたスタンスに対して、他社からは「ある日突然改善することはない」(KDDI田中社長、7月の第1四半期決算会見)、「900MHz帯だけで電波環境が良くなることはない」(NTTドコモ加藤社長、7月の本誌インタビュー)などと指摘されてきたが、今回の説明会における孫氏の説明は、他社の批判を否定するものではなく、現実に即した内容だ。

 それでは、ユーザーが900MHz帯の恩恵を実感できる時期の目処は立っているのか、質疑で問われた孫氏は、現時点で公開しているプラチナバンドのサービスエリアマップ(9月末時点での予定)について、最終的な開局予定の基地局数に達していなくても、数局で電波が発射されれば、地図上ではサービスエリアとして示されると説明。「ずっと薄皮を重ねるように基地局のレイヤーを改善していく。トータルの数として、少なくとも2万6000局が来年度末には設置される。そこまでいけば、現在のサービスエリアの大半がかなりカバーできる」と述べ、地図上では一気に改善が図られるように見えたとしても、実際には徐々に改善を図っていくことになる、と説明した。

LTEは高付加価値サービス

 営業利益1兆円を達成するための施策として、今回、LTE対応スマートフォン向けの料金プランが紹介された。パケット通信定額サービスの料金が月額5985円になるというもので、このプラン自体は4月に発表されている。

 今回の説明会でもLTE対応スマートフォンの発売に触れることはなく、従来より高額になるプランの提供を行う、と言った説明に留まっているが、孫氏はLTEについて「3Gより高速で、より多くの通信量を処理できる高付加価値サービス」と位置付け、3Gよりも高額なデータ通信料を設定する、とする。

 質疑で「iPhoneのパケット定額サービス(月額4410円)からすると、大きな単位(の値上げ)ではないか」「LTEは3Gよりもビット単価が安くなるのではないか」と問われた孫氏は、「これは基本的な価格であって、一部、あるいは一時的にキャンペーンを実施することがある得るかもしれない。しかし基本的にLTEは3Gより高付加価値なサービス。世界的に見て、音声ARPUの減少傾向は止められないが、その下落する音声ARPUと増大するデータARPUをトータルで見ると、決して大きな値上げにはならない」と説明。音声通話の料金値下げなど、詳細に触れることはなかったが、通信料が従来よりも高額な設定になったとしても、ユーザーの支払う料金の総額は大きく変動しない方針を示唆した。
TD-LTE互換のAXGPの速度をアピール。今回の会見では「AXGP」という表現は一切用いられず、「TD-LTE」として紹介された 4月に発表されたプラン

 今秋提供開始予定のLTEサービスについては、「ソフトバンクはLTEに対して、大幅に出遅れているのではないかと思われているかもしれないが、実際にサービスが開始されれば、サービスエリア、品質、実行速度といった面で他社を大きく上回る実績を出していけると確信している」と自信を見せた。

ソフトバンクモバイルの業績、オペレーションデータ

 移動体通信事業の売上高は、5062億1100万円(前年同期比1.5%減)、営業利益は1281億600万円(同10%増)となった。売上が減少した背景として、価格の安い機種の構成比率が上昇したこと、7月からの900Mhz帯サービス開始を控えて出荷台数が減少したことが主な要因に挙げられている。

 第1四半期には、75万3100件の純増を記録した。スマートフォンの販売が堅調だったこと、モバイルデータ通信や防犯ブザー付きの「みまもりケータイ」の販売が増加したことが影響した。契約数は2970万2100件に達した。端末出荷数は235万9000台(前年同期比13万4000台減)で、端末販売数は258万6000台(同3万6000台増)となっている。
75万件の純増 データ収入は増加傾向と説明

 総合ARPUは4020円で、前年同期から190円減少した。内訳を見ると、音声ARPUが1480円(同300円減)で、データARPUは2540円(同100円増)となる。なお、デジタルフォトフレームなど通信モジュールを除くと、総合ARPUは4300円となる。この数値はauのAPRUよりも高いと、プレゼンテーションで示した孫氏は「データ通信による売上高は19%増加した。他社はARPUの下落が止まっていないが、ソフトバンクは安価なプランから徐々にARPUが増加傾向にある」と説明した。

 解約率は1.03%で0.04ポイント減少した。新規契約での手数料は2万6500円で、手数料単価が低い機種の構成比率が上昇したことから、前年同期と比べ9700円減少した。機種変更手数料も2000円減少し、2万7000円となっている。

単月黒字を続けるウィルコム、法人分野も順調

 同社傘下になったウィルコムの業績については、1年前の2011年6月から月次黒字になったという。そのまま黒字は続いており、利益が拡大しているとのこと。ウィルコムの契約数は486万件に達し、ウィルコム史上最高の数値となっている。ソフトバンクモバイルの契約数とあわせれば、3440万件となり、auの契約件数(3568万件)に迫っている。
ウィルコムの契約数 auの契約数に迫っていると説明

 法人分野について孫氏は「一部報道で大手の解約があったと伝えられたが、実際は解約率も順調に改善しているのが実態。特にスマートパッド(タブレット)の法人における比率は、iPad(3Gモデルのみ)が80%を占める。iPadの法人顧客は7万社を超えた」と説明し、順調に推移していることを示した。孫氏は「ソフトバンクにとって法人市場はブルーオーシャン」と述べ、同社のシェアが低かった法人市場においてiPad、iPhoneが導入される事例が続々と増えており、収益増に貢献するとした。
法人向けでは8割がソフトバンクのiPad 導入企業も7万社を超えた

 このほか、公衆無線LANサービスについては、あらためて27万カ所展開し、業界トップにあることをアピール。「店外になるとWi-Fiの電波が弱くなるものの、3Gへ切り替わらず、通信できないという重大な問題も、先駆者としてたくさんのWi-Fiスポットを設置して体験してきた。そこで解決策を編み出し、特許も出願した」と語る。しかしその内容はまだ明らかにされず、提供時期についても触れられていない。

 ヤフーが経団連に加盟したことを受け、「今後期待されている部分は?」と問われると、一例として、楽天の電子書籍端末「kobo」、あるいは通販サービスのAmazonで取り扱われるコンテンツは消費税がかかっていない一方で、ヤフーがコミックを配信するときには消費税がかかることを指摘し、「同じコンテンツを日本のユーザーに販売するとき、サーバーの場所によって変化するのはおかしいのではないか」と述べて、政策などへ反映させるため活動していく姿勢を見せた。




(関口 聖)

2012/7/31 20:57