イー・モバイルの基幹施設「東京エンジニアリングセンター」とは


 イー・モバイル(イー・アクセス)は、同社のモバイル通信ネットワークの運用などを担当する「東京エンジニアリングセンター」を報道関係者向けに公開した。

 東京エンジニアリングセンターは、都内にあるイー・モバイルの基幹施設。ネットワークオペレーションセンター(NOC、ノック)、最新の通信機器の試験を行うシールドルームやテストベッドなどがある。また今回は、車載基地局、屋外用基地局などもあわせて公開された。

NOC

NOC

 NOCは、イー・モバイルの通信ネットワークを監視する中枢部だ。今回はガラス越しにその様子が公開された。室内には、6月に開設されたという大阪のNOCの様子を映すディスプレイが設置されている。東京と大阪の2カ所で運用することで、どちらかに災害などがあっても、ネットワークを守る体制となっている。

 イー・モバイルのネットワーク構成イメージも披露された。他社のネットワークとの接続で、トラフィック(通信量)がどの程度になっているのか、色で表示されている。日本各地に張り巡らせたバックボーン回線(基地局を結ぶ回線)は“リング状”になっている。つまり埼玉と東京を結ぶ回線、あるいは千葉と東京を結ぶ回線はそれぞれ2本用意されており、1本の回線が災害や障害で使えなくなっても、もう一方の回線で通信環境を確保する。

他社とのネットワーク接続図同社内のネットワーク
関東のネットワークさらに拡大して、一部エリアの基地局なども

 各地の基地局の状況も把握でき、たとえば、その基地局全体での通信速度(セクタースループット)や繋がりやすさを示す数値が示される。異常があれば、遠隔でいったん操作し、ハードウェアに起因する故障などでは、原則的に2時間以内に駆けつけ、3時間以内に復旧させているという。

シールドルーム、テストベッド

シールドルーム

 シールドルームは、内部の電波が外へ漏れ出さないように“シールド(遮蔽)”された小さな部屋だ。屋外で電波を発射する場合、実験局免許などが必要となるが、シールドルーム、電波暗室と呼ばれる空間は、外部と遮断されており、その限られた空間で外部からの干渉を排除して、最新設備の試験などを行う。

 今回はLTEのカテゴリー4と呼ばれる規格に対応したルーター「Pocket WiFi LTE(GL04P)」と、基地局装置との試験を披露。理論上、下り最大150Mbpsになるところ、130~140Mbpsで通信している様子が示された。これは、基地局のアンテナと端末が近距離で、なおかつ干渉や障害物などが極力排除された状態での通信速度で、シールドルームだからこそ目にできるものと言える。

室内にアンテナとルーターを置いて実測アンテナは室外の装置に繋がっている

 テストベッドは、開発環境、あるいは試験を行う場所。今回、写真撮影は禁止されたが、担当者は「中国のメーカーと、小型の基地局装置(RRU)を共同開発している」と説明。この装置の出力は5W×2で、屋内での利用が想定されており、これまでは3G対応版が存在していたが、現在はLTEもサポートする製品の開発が進められている。

 このほか、端末修理を手がけるリペアセンターもある。ここでは、1日140件程度、月間で3000~3500件の修理を行う。サポートセンターやショップ店頭での対応を経て、検証が必要と判断された端末が送られてくるとのことで、基本的に1日で検証、修理を終える。このため、ユーザーからの発送で1日、リペアセンターでの対応で1日、ユーザーへの返送で1日、計3日間で対応するという。

車載基地局、屋外用基地局

車載基地局。アンテナは足踏みポンプのような装置で伸ばす

 車載基地局は、その名の通り、自動車に基地局設備を搭載したもの。大規模災害でのエリア補完のほか、人が多く集まる大規模イベントで運用される。イー・モバイルでは、7月のFUJI ROCK FESTIVALで運用したとのこと。アンテナを伸ばすと、周囲500m~1km程度をカバーでき、LTEと3Gの通信に対応する。

 電源を搭載しており、燃料は自動車のエンジンと共用。基地局は、1リットルあたり1時間程度、稼働できるとのことで、この車載基地局では最大で60時間程度の運用が可能という。現在、2台導入され、今後拡充される見込み。1台あたりの費用については明言されていないが、「全て入れて1000万円もしない程度。他社は驚くのでは」(イー・アクセス執行役員副社長の阿部基成氏)とのことで、安価な部類に入るようだ。

 東京エンジニアリングセンターの屋上には基地局も設置されている。その装置の1つで、LTE対応局が今回公開された。各種パーツを収納するボックス、そのボックスを支える金属の足場、さらにアンテナ装置という組み合わせで、全てあわせて800kgほどの重さ。それでも小型化された装置とのことで、ボックス内部にあるバッテリーで6時間程度駆動できるとのこと。

最も伸ばしたところ。これで500m~1km程度をカバー社内の装置
屋上に設置されている設備こちらはアンテナ部




(関口 聖)

2012/8/7 19:43