スマホの進化にあわせたドコモの“秋モデル”


NTTドコモ プロダクト部長の丸山氏

 NTTドコモは28日、9月~11月にかけて発売する新機種の報道関係者向け説明会を開催した。プレゼンテーションを行った同社プロダクト部長の丸山 誠治氏は、今回のモデルを提供するに至った背景、個々の製品が紹介されたほか、アップルとサムスンの法廷闘争の影響についてもコメントした。

Xi対応の5機種

 28日に発表されたのは、クアッドコアCPUのハイエンドモデル「Optimus G L-01E」、ドコモ初のファーウェイ製スマートフォン「Ascend HW-01E」、高いスペックながら持ちやすいサイズに仕上げられた「AQUOS PHONE si SH-01E」、カーボンファイバーを用いた軽量ボディの「MEDIAS TAB UL N-08D」、7.7インチディスプレイの「GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E」となる。

ドコモの新機種群夏モデルと併売される

 いずれもXi対応とのことで、一部エリアでは下り最大75Mbpsで通信できる。いずれも2.1GHz帯で、1.5GHz帯には非対応。このため、ドコモが今年度中に計画する、一部地域での下り最大112.5Mbpsのサービスは利用できない。

 またAndroid 4.1への対応については、「基本的にできるだけ前向きにやっていきたい」(丸山氏)方針とのことで、ハードウェアの性能などがAndroid 4.1に対応しているかどうか、検証した上で、順次案内していくとのこと。

 機種紹介のプレゼンテーションで、LGの「Optimus G」が紹介される場面では、クアルコムのクアッドコアCPUを搭載するスマートフォンが発表されるのは、今回初とされ、米クアルコム社長兼COOのスティーブ・モレンコフ氏からのビデオメッセージも披露された。

optimus G L-01EAQUOS PHONE si SH-01E
Ascend HW-01EGALAXY Tab 7.7 plus SC-01E
MEDIAS TAB UL N-08DクアルコムのモレンコフCOOからのメッセージも

“秋モデル”提供の背景

 携帯電話各社は、商戦期にあわせて、毎年、夏モデルおよび冬春モデルを発表している。そうした慣例からすると、8月下旬の今回、“秋モデル”が発表されるのは異例だ。説明会の冒頭、この点に触れた丸山氏は、「これまで夏と冬にまとめて発表してきたが、スマートフォンが主流になった現在は、デバイスなどの進化速度が大変速い」と説明する。

 CPUやメモリ、カメラ、ディスプレイといった部品の進化、そしてAndroidの度重なるバージョンアップなど、スマートフォンの進化が止まらない状況は当面続く。だからこそ、そうしたトレンドをキャッチアップした新機種を商戦期にとらわれずスピーディに投入し、多様化するニーズに応える――それが今回、新機種群を紹介した背景なのだという。

ドコモのスマホ年間販売数多様化するニーズとスピーディに進化するスマートフォン

 質疑応答でもあらためて問われた丸山氏は「これまでやってきた、夏と冬に分けて、という形が難しくなってきているというのが、我々の基本的な理解。これはOSのバージョンの上がり方、主要デバイスの進化を踏まえるとわかりやすいと思う。そうした進化の速度と、我々の商戦期が完全に合っていれば問題ないが、ずれていくことになる。夏と冬の2回と、硬直的に発表会を開催していくのではなく、できあがったものを随時、出していくのが自然ではないか。今回は5機種、個性的なモデルが揃ったため、説明会を行うことにした。今後の発表の仕方がどうなるかわからないが、準備が整い次第、提供していきたい」と説明した。

 一方、今回の製品は、9月の発表が噂されるアップルの“次期iPhone”への対抗策か、と問われると、「新しく出るiPhoneがどういう機種かまったく存じ上げないため、競争できるかどうか、コメントしようがない。しかし、今回の機種は、ニーズがあるからこそ進めており、最先端のスペックで充実したモデル」と語った。iPhoneの取り扱いについては、これまでのドコモの幹部が述べてきた通りのスタンスと変わりない、とした。

 なお、冬モデルは別途発表される見込み。夏モデルで発覚した、チップセットなどの不足が招いた、スマートフォンの在庫薄については、「ドコモの需要予測能力が低かった」としつつ、秋発売モデルでは十分な数を確保できるとの見通しが示された。

米国の判決、日本には影響しない

 発表会の直前、米国で示されたアップルとサムスンの特許訴訟判決が大きな話題となった。サムスン製端末を提供するドコモはどういった考えを持つのか、説明会では、報道陣から幾度も質問が寄せられた。

 ドコモ自身も技術を開発する立場であり、発明者の権利は保護されるべき、という基本的なスタンスを踏まえた上で、丸山氏は「ドコモブランドの端末は、メーカーとドコモの共同開発という形。発売前に、第三者の権利を侵害していないか、互いに分担してチェックしている。ドコモとしては、保守的というか、慎重にやってきた部分」と語り、ドコモ製品の発売にあたっては、事前のチェックを十分に行ってきたとする。そのため、ドコモの製品として、日本市場へ投入される前には、メーカーに対して守るべき要件が提示され、それを満たすためにある程度カスタマイズされた機種が発売されてきた。グローバル版とドコモ版の違いは、そういった背景があるのだという。

 また、丸山氏は特許訴訟は、国によって企業が保有する知的財産の内容、あるいは法律が異なると指摘。アップルとサムスンの訴訟も、国によって焦点が異なり、結果が異なっても不思議ではない、として、米国の判決結果よりも、日本での判決結果が最も重要とする。

 今回、米国での判決は製品パッケージのデザインなどが争点だったと伝えられている。一方、日本で争われているのは、画面を端までスクロールさせると弾むような表現をする技術を巡る「バウンシング特許」、そしてもう1つがパソコンと端末とのデータ同期に関する特許だ。

 バウンシング特許については、共同開発を進める上で、アップルの特許を侵害しないようドコモの機種では必要な対処を行っており、問題ないと認識している、と丸山氏はコメント。データ同期の特許については、近日、東京地裁で判決が下される見込みであり、28日の時点でコメントは控える、とした。デザイン関連については「そもそも日本での争点に、デザイン関係は含まれていないという認識。それらの考え方は国ごとに異なる部分。我々がどう、というよりも、訴える側(この場合はアップル)が争点にしていない、ということになる」と述べた。

 法廷闘争を通じて、サムスンのブランドイメージが損なわれる可能性を指摘されると、丸山氏は「その可能性は確かにある」と認めた上で、世界各国の訴訟の動向を注視しながら、日本のユーザーへの説明を尽くす、とした。




(関口 聖)

2012/8/28 16:57