話題のiOS 6版「マップ」アプリ、アップルの見解とGoogleの動向


市ヶ谷駅周辺の地図。「スターバックス駅」と水上に浮かぶ「いちがや駅」

 iOS 6より、アップルは新しい「マップ」アプリの提供を開始した。ところがこのアプリ、アップルの意図しない形で話題を集めている。

 iPhoneなどに採用されているiOSでは、iOS 5まで地図アプリにGoogle マップをベースとした「マップ」アプリが提供されてきた。iOS 6では、ライセンス契約の終了により、旧マップアプリやYouTubeなどこれまでプリセットされていたアプリの提供が終了。GoogleはiOSアプリとして新たにYouTubeアプリをApp Storeで配信している。

まったく新しいマップ

 iOS 6から刷新された「マップ」アプリについて、アップルでは「まったく新しいマップ」とアピールしており、同社が一からデザインした地図であるとしている。地図はルート案内機能や航空写真、3D表示に対応し、国内では現時点で未対応ながらヘリコプターや鳥のような視点で地図を操作できる「Flyover」機能も用意された。刷新された「マップ」アプリについて、アップルは「これまでで最も美しく、最もパワフルな地図機能」と意気込んでいる。

 しかし、現実は時に残酷だ。新たなスタートを切った「マップ」アプリは、これまでで最も面白く、最も残念な形で利用者の衆目を集めることになってしまった。

 たとえば、編集部がある市ヶ谷を見てみると、JR市ヶ谷駅があるはずの場所に電車のロゴマークとともに、「スターバックス」と記載されている。市ヶ谷駅の存在を知らなければ、そこにあるのは「JRスターバックス駅」と勘違いしてしまう人もいるかもしれない。ちなみに、実際のJR市ヶ谷駅の2階にはスターバックスの店舗がある。ネット上では、こうした地図の誤りが面白おかしく伝えられている。

 なお、店舗情報の地図への落とし込みの不具合は極端な例ではなく、知っている場所をいくつか探してみるだけでも散見される。刷新された「マップ」アプリには、店舗情報などの記載はあるものの、建物の名前など本来ランドマークとなるべき情報が少ない点も利用者の不満を買う要因となっているようだ。

使ってもらうほどよくなる

 アップルでは、刷新された「マップ」アプリについて、「クラウドベースの地図サービスであり、使ってもらうほどよくなっていく」と話している。また、「引き続き改善していく。是非フィードバックが欲しい」とも語っており、活発な利用を求めている。

 「マップ」アプリについて問題を発見した場合、アプリ上から問題が指摘できる。画面右下の部分をタッチすると、地図が1枚めくれるかのように機能メニューが表示される。「プリント」の項目の上を目をこらすと、「問題を報告」と記載されているはずだ。ここから、地図サービスの不具合が指摘できる。

 なお、iOS 6 betaが開発者に提供された際、サードパーティ製アプリとの連携機能があることが伝えられた。今後、こうしたアプリ連携の仕組みが地図サービスをより快適なものにさせる可能性もあるだろう。



iOS版「Google マップ」

 7年の歳月をかけ、現在のGoogle マップは存在している。刷新されたアップルの「マップ」アプリは、地図サービスが一朝一夕にはいかないことを物語っているともいえる。

 アップルは、「マップ」アプリについて同社が一から手がけたとアピールしており、“アップルにとっては”まったく新しい地図サービスとなっている。しかし、ユーザーにとっては最初ではない。これまでiPhoneなどで便利に使っていた「マップ」アプリと同じ名前なのだから、古いユーザーなら数年間のユーザー体験があるのだ。アプリが刷新されたなら、これまで以上に便利なものを期待するのが普通だ。

 なお、これまで「マップ」アプリを提供してきたGoogleは、iOS版「Google マップ」を提供する可能性について、コメントしない方針だ。これまで通り、「全ての皆さんが使える環境を提供する」と話しており、現時点ではブラウザ版のGoogle マップの利用を勧めている。

 24日、Googleは「Google マップ」の乗り換え案内サービスに新たにバスルートを加えた。ユーザーが出発地と目的地を入力すると、電車やバスを含めた経路検索が行えるようになっている。

 




(津田 啓夢)

2012/9/24 16:10