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ソフトバンク、イー・アクセスを買収


ソフトバンク孫社長(左)は「12月15日にテザリング開始を前倒しする」とコメント

 ソフトバンクは、株式交換によりイー・アクセスを完全子会社化すると発表した。

 イー・アクセスは「イー・モバイル」ブランドでモバイル通信サービスを提供しており、ソフトバンクはイー・アクセスがサービス展開する1.7GHz帯と、3.9世代向けに割り当てられた700MHz帯の免許を取得することになる。これにより、総務省の電波施策によって新規参入を果たした事業者はいなくなり、大手3社体制となる。イー・モバイルのブランドは当面継続したサービスが提供される。

 なお、ソフトバンクでの1.7GHz帯の通信サービスは2013年春頃にスタートする予定。ソフトバンク側はイー・アクセスに対して900MHzと2.1Ghz帯のネットワークを提供する。



テザリングと速度制限

 会見の中でソフトバンクの代表取締役社長の孫正義氏は、2013年1月15日に予定していたテザリングサービスの開始日を、2012年12月15日に前倒しすると発表した。サービスは当初2.1GHz帯で提供するという。

 また、同社の通信速度制限についても10月1日より緩和する。これまで前々月に1.2GB以上の通信を行った場合、当月1カ月間、通信速度を制限する場合があるとされたが、この通信制限を撤廃する。

 NTTドコモ、au、ソフトバンクともに、直近3日間の通信量が1GBを超えた場合、ネットワークの混雑状況などを鑑みた上で、当日に通信制限を行う場合があるとしている。この通信速度制限についてはこれまで通り適用される。



 現状LTEサービスとして提供されている「iPhone 5」では、「パケットし放題フラット for 4G LTE」の場合、2年間は月額5460円(3年目〜月額5985円)となる。

 この料金プランではテザリングが利用可能で、開始から2年間はテザリングのオプション料金は無料。3年目以降は月額525円となる。LTEのデータ通信量が1カ月あたり7GB(3年目〜7.5GB)を超えると、128kbpsに通信速度は制限される。これに加えて、前述した直近3日間の速度制限が用意されている。

 「パケット定額 for 4G LTE」は、月額5460円でテザリングなしのプラン。データ通信量の7GB制限はないが、前述の直近3日間の速度制限は用意される。



経営統合について

握手を交わす孫氏と千本氏

 ソフトバンクは、イー・アクセスを株式交換により完全子会社化する。

 2012年9月28日にソフトバンクの取締役会で承認され、10月1日には、イー・アクセスの取締役会の承認された。10月1日午後、ソフトバンクの孫氏とイー・アクセスの代表取締役会長である千本倖生氏が正式に契約を取り交わした。契約書には、イー・アクセスの株主総会での承認、国内独占禁止法の届出手続きの完了などの条件が盛り込まれている。

 株式交換に際して、イー・アクセスの普通株式をソフトバンクは1株5万2000円と提示した。イー・アクセス株は1万5000円程度で推移している。ソフトバンクでは新規に株を発行することで交換に充てる。株式交換比率の算定にあたって、ソフトバンクはみずほ証券とプルータス・コンサルティングを起用、イー・アクセスはゴールドマン・サックス証券を起用している。

 なお、株式交換後、イー・アクセスはソフトバンクの完全子会社となる予定で、イー・アクセスの上場は廃止される見込み。上場廃止予定日は2013年2月25日。

 囲み取材においてイー・アクセスの千本氏は、経営統合後の取締役会には、現イー・アクセス側から3名、ソフトバンク側から2名の取締役を出す予定とした。この中に会長の千本氏、そして現社長のエリック・ガン氏が含まれるのか、千本氏は「わからない」と語っており、去就が注目される。

 このほか、経営統合した際にイー・アクセス社員をレイオフしないよう、取り決めているという。孫氏は囲み取材において、「ウィルコムの時も一人もレイオフしなかった」と語った。

端末調達に規模のメリット、ショップでは相互商品展開

 経営統合による営業力が強化されることで、携帯端末の販売台数の増加が見込まれるとし、共同調達によって規模のメリットが出る。これにより端末調達単価の低減が見込まれる。一般にグローバル対応モデルでは、1.7/2.1GHz対応のスマートフォンが多く、こうした点も好材料となりそうだ。

 ソフトバンクモバイルは約7000店舗、イー・アクセスは約2000店舗の販売チャネルを持つ。経営統合により相互サービスや相互商品展開などを加速させていく方針。イー・モバイル側がソフトバンク主力モデルの「iPhone 5」を販売することはないが、代理店を通じた販売については含みを持たせている。

 また、ソフトバンクの法人営業部隊であるソフトバンクテレコムにおいて、イー・アクセスのソリューションも展開する。



周波数

 イー・アクセスの完全子会社化により、ソフトバンクは国際バンドである1.7GHz帯を獲得する。イー・アクセスは現在、同帯域においてイー・モバイルのブランド名で、3GとLTEのサービスを提供しており、1.7GHz帯のLTE網を得たことで、ドコモやKDDIとのLTEエリア化合戦に弾みをつけたい考え。

 ソフトバンクは現在、2.1GHz帯でLTE網をサービス展開しており、同帯域を利用する既存の3Gユーザーを900MHz帯に移行させつつ余裕を作りながら、LTEを敷設していくという困難な作業が必要だった。1.7GHz帯の獲得により、早期にLTE網が展開可能になる公算だ。

 イー・モバイルでは、ソフトバンクの900MHz帯と2.1GHz帯が利用できるようになり、これまでの1.7GHzのみより、3Gの音声サービスが提供しやすくなる。



 ソフトバンクは現在、3G網で利用しており、LTE化を想定している900MHz帯、ULTRA SPEEDを展開する1.5GHz帯、現在主力でLTE化を進めている2.1GHz帯を利用しており、これにウィルコムのPHSが1.9GHz帯、さらに出資するWireless City PlanningがAXGPサービスを2.5GHz帯を提供しており、「Softbank 4G」が展開されている。AXGP方式は、TDD方式のLTEと100%互換と言われる。

 今回の経営統合でさらに、1.7GHz帯のLTE(FDD方式)を得るほか、ソフトバンクはイー・アクセスに免許が割り当てが決まっている700MHz帯についても獲得する見込みだ。

 700〜900MHz帯はプラチナバンドとも言われ、一般に電波特性が良いとされている。900MHz帯に加えて、イー・アクセスの700MHzも手中に収めることで、ソフトバンクはプラチナ帯域においてNTTドコモやKDDIと対等になるとの考えを示している。



基地局

 また、基地局を相互共有し、イー・モバイル側の1.7GHz帯のLTE設備に2.1GHz帯も乗り合わせていく。短期間でのエリア化が実現できる見込みで、相互協調によるコスト削減にも期待できるという。ソフトバンクとイー・アクセスはいずれも、エリクソン製とファーウェイ製の基地局設備を採用しており、ネットワーク設備の共有化もしやすいとしている。

 ソフトバンクでは、2012年度末までに2.1GHz帯において、約2万局の基地局を敷設する計画だ。これにイー・アクセスの1.7GHz帯の1万局が加わるとしている。ソフトバンクのスマートフォンは基本的に、2.1GHz帯と1.7GHz帯に対応した形で投入される見込みだ。

 なお、バックボーンも共用とし、ソフトバンクの4000局舎、イー・アクセスの1500局舎が統合される。これに加えて、両社のADSL回線の統合も予定される。



プレゼンテーション

赤いネクタイの孫氏

 ソフトバンクの孫氏は、イー・アクセスとの関係について「激しく競争しながら協調もしてきた。同じ志を共有し、同じ気持ちで情報革命に携わってきた」などと話し、イー・アクセスとの関係が単に競合というだけでなく、時に歩調を合わせて事業運営していきたことをアピールした。

 「志を同じくしているのであれば、もっとしっかり協力しよう。これまでは競争関係にあり、協力していてもやや疑心暗鬼、緊張関係にあったが、両社が正式に経営統合した。基本合意ではなく、一気に最終契約書に調印した」と語った孫氏、ソフトバンクはイー・アクセスを買収し、「最高のモバイルブロードバンドを提供する」と約束した。

 買収に至った理由を孫氏は、auとの激しいLTE競争とする。同氏はこの激しい競争はいいことで、「競争があるからこそ切磋琢磨する」と好意的に語った。ただし、競争の内容については、「大してあまり変わらない。お互いにツバのかけあい」「つばぜり合いは低次元」などと一蹴しており、KDDIが積極的にアピールする「iPhone 5」での優位性について、競争の本質がそこにはないとの立場をとった。

 ソフトバンクが今回、競争の鍵と位置づけたのは、1.7GHz帯だ。孫氏は「何が大切か。1.7GHz帯は国際バンドに入っており、iPhone 5にはすでに1.7GHz帯が入っている。ものすごく意味合いが変わる」と語った。

 孫氏は、2012年度末までに2.1GHzの基地局を2万局を打つとし、1.7GHz帯の1万局がこれに追加されることで、「おそらく競合よりもはるかに数も電波の繋がりもよくなる。サービスエリアが一気に広がる。2.1GHz帯も1.7GHzも両方が同時に受けられる」などと充実したエリアが提供できると自信をのぞかせた。

 なお、1.7GHz帯をソフトバンクユーザーが利用できるようになるのは、2013年春頃とした。ネットワークの調整やCSフォールバックといった通話周りの調整が必要。iPhoneを提供するアップル側にも手続きが必要とした。孫氏は、iPhone 5を利用していることを明かし、「LTEマークが出てきただけでうれしくなる。Wi-Fiを切ってLTEにした方が快適だ」などと話した。

 テザリングの提供時期を早めたことについて、孫氏は1.7GHz帯の対応によって、「安心して受けられる構えができた」とした。ただし当面は、2.1GHz帯でテザリングを提供し、1.7GHz対応は来春となる。

 イー・アクセスの企業価値については、減価償却後の設備投資額として2260億円、顧客獲得コストとして1360億円、ソフトバンクへのシナジーを3600億円、合計7220億円と算定された。

 顧客獲得コストは、イー・モバイルユーザー420万×3万円とし、ソフトバンクの獲得コストよりも安価であるとした。孫氏は「1ユーザーあたり10万円の価値がある」とした。

 このほか、イー・モバイルのブランドは存続し、ウィルコムと同様に尊重していくと孫氏は語っていた。



ソフトバンク、「4+3=2」で業界2位

 プレゼンテーションの後半、孫氏は「4+3=2」という数字を掲げた。

 孫氏は、モバイル回線の契約で数業界4位のイー・モバイルと、3位のソフトバンクが経営統合することで、3911万ユーザーとなり、auの3589万を抜いて業界2位に踊り出るとアピールした。ソフトバンクの数字には、ウィルコムの約477万ユーザーが含まれている。

 孫氏は「3位は嫌いだ。オリンピックで銅メダルを取って涙を流す気持ちが理解できない。いずれ金を目指す」と語り、201X年代に4000万契約を突破するとした2010年の目標を、2012年度内に達成するとした。

 なお、ソフトバンクの数字には、ソフトバンクとウィルコム、イー・アクセスの回線数が含まれる。グループの総力戦とするならば、ソフトバンクのWireless City Planningの約26万回線、KDDIが出資するUQコミュニケーションズの約345万回線も含めてもいいのかもしれない。その場合、契約数はほぼ並んだ形になる。



ソフトバンクとイー・アクセスは「LTEのダブルエンジン」

シルバーのネクタイで語る千本氏

 経営統合により、イー・アクセスをソフトバンクに提供することになった千本氏。「我々イー・アクセスは、12年前になんとか日本のネット環境を決定的に変えたい。できれば新しい革命を引き起こし、日本を世界有数のネット大国にしたいと思ってゼロからスタートした」と切り出した。

 千本氏は「ADSLの分野で孫さんと大変な競争した。これからはモバイル、となった時も孫さんと同じタイミングだった。成長の過程でソフトバンクは最大のお客で、競争しつつも大事な顧客関係にあった。それがここにきて成長のオプションにいくつかの可能性が出てきた。孫氏から熱意ある提案をいただき、各社から提案があった中で、DNAが一番似ているのがソフトバンクだった。ゼロからリスクをとって志をもって挑戦する姿勢は似ているところがある」とコメント。1.7GHz帯がLTEの標準バンドとなったことが、イー・アクセスの事業に大きなきっかけを与えたことことを説明した。

 さらに千本氏は、「おそらく我々が自ら成長していくより、はるかに高い価値を提供できるのではないか」と述べ、ソフトバンクとの経営統合がイー・アクセスにとってさらなる実りをもたらすとした。同氏は「どちらにせよ、ソフトバンクの子会社になることで、ソフトバンクの大きなモバイルブロードバンド戦略の中で徹底的に革命の道を目指していきたい。夢を共有してソフトバンクグループの一員としてNo.1を目指す」とした。

 質疑応答では、先にイー・アクセスが発表した新会社「楽天イー・モバイル」について影響がないとし、千本氏は「楽天の三木谷さんとも話した。変わることはなく、エリアは広くなる」とコメントした。

 このほか、ソフトバンクの孫氏はイー・アクセスとの経営統合について、「LTEのダブルエンジンになる」などと語った。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、『「SoftBank 4G」として提供するWireless City Planningの回線数も盛り込まれている。』と記載しておりましたが、その後、「SoftBank 4G」は含まれていないことがわかりました。訂正いたします。




(湯野 康隆 / 津田 啓夢)

2012/10/1 17:11