孫氏が通信網の優位性をアピール、全機種対応で攻勢かける


ソフトバンクの孫氏

 「他の科学者が“できます”と言うのに対して、山中教授は“やります”と答えた。私もよくTwitterやFacebookの中で“やりましょう”とつぶやいている。物事ができるというのと、やってみせるというのでは結果が全然違う。本当はできるのにやっていないことがたくさんある。不可能と思えることでもなんとしてでもやるんだ、やりましょうという精神が物事を著しく進化させるんだと思う」――ソフトバンクの代表取締役社長である孫正義は、京都大学の山中伸弥教授が受賞したノーベル賞の話題になぞらえて、持論を展開した。

 10月9日に開催されたソフトバンクの冬モデル発表会の中で、孫氏はまず、ネットワークサービスについて説明した。

プラチナバンド

 同社が「プラチナバンド」の名称で展開する900MHz帯を利用した通信サービスについて、繋がりやすさをアピールし、「単に繋がるというだけではこれからは済まされない。よりサクサク、より快適に、より高速に繋がることがこれからのスマホ競争時代においてはネットワークの鍵になる」と話した。

 「プラチナバンド」の提供エリアは一気に拡大していくという。東京の港区エリアを例に、ビル陰などで電波が届きにくいところも繋がるようになると説明した。

 また、Wi-Fiサービスについては、「他社に先駆けて一気に拡げており、そのWi-Fiを5GHz対応にし、より高速に繋がる」などとした。



「SoftBank 4G」と「SoftBank 4G LTE」

 さらに、「SoftBank 4G」と「SoftBank 4G LTE」について紹介し、「SoftBank 4G LTE」は「iPhone 5」向けのネットワークだと語り、同じく「iPhone 5」を提供するKDDIとLTE対応市区町村の比較結果を披露。KDDIが541市区町村であるのに対して、ソフトバンクは1090市区町村とアピールした。孫氏は「より広いエリアでLTEの電波が使える、より高速通信のLTEがiPhoneで受けられる」と述べた。

 さらに、ソフトバンクでは東海道新幹線のLTEの通信状況を調査し、孫氏は「他社よりも繋がる」と話した。ただし、この比較はKDDIのiPhoneとのみ比較したもので、LTEサービスを展開するNTTドコモやイー・モバイルについては調査に含まれていない。

 孫氏は、「東京の都心だけでなく、全国レベルでLTEのネットワークを展開している。しかし、あまり他社との比較を一生懸命に言っても、人間が小さく見えてしまう。競争がお互いを切磋琢磨するという意味で前向きにとらえている」と話した。なおソフトバンクは、これまで他社との比較結果を効果的に披露することで、時に有利な条件を求めたり、時に成果を強調したりと巧みに演出している。

 このほか、イー・モバイルの経営統合についても言及し、「より多くのユーザーにLTEのネットワークを広く早く提供できる。世界でもトップレベルのiPhoneのネットワーク」と話した。



 FDD方式のLTEが「SoftBank 4G LTE」ならば、TDD方式のLTEと完全互換したサービスが「SoftBank 4G」(AXGP方式)だ。孫氏は、世界標準の技術であることを強調し、「端末もネットワークも世界標準で非常にコストパフォーマンがいい」と話した。「SoftBank 4G」については、マイクロセル化した基地局を採用し、より多くのユーザーがより高速なサービスが利用できるとアピールした。

 孫氏は、「他社が謳っている高速なLTEがあるが、実際により多くの地域でより高速なサービスが実現できている」と語り、第三者の調査結果として、同氏が「人間が小さく見えてしまう」と語る比較データを紹介した。ICT総研が8月28日に調査したもので、「SoftBank 4G」が18.2Mbps、「EMOBILE LTE」が10.25Mbps、「Xi」が5.5Mbps、「UQ WiMAX」が4.5Mbpsと案内された。



スマートフォン全機種「SoftBank 4G」対応

 孫氏は、今回の発表会で「SoftBank 4G」という言葉がたくさん出てくる述べ、「現在最高速のスピードを誇っているSoftBank 4Gに対応させた」と冬モデルについて紹介した。

 発表会は、「AQUOS PHONE Xx 203SH」「ARROWS A 201F」「STREAM 201HW」「RAZR M 201M」「HONEY BEE 201K」「PANTONE 6 200SH」の順番で冬のスマートフォンが紹介された。いずれも下り最大76Mbpsの「SoftBank 4G」に対応し、テザリングもサポートしている。

 端末には、ヤフーのウィジェットが搭載されており、これまでよりも連携が強化されているという。

 このほか、Disney Mobile on SoftBankのスマートフォン、折りたたみ型フィーチャーフォン、フルセグ受信で防水対応デジタルフォトフレーム、スティック型の映像配信サービス「SMART TV」なども紹介された。

 「SMART TV」について孫氏は、「テレビの大画面でHD画質の動画が観られる。スマホで操作する。TSUTAYAと提携してレンタルビデオ屋さんよりも多い4万本のコンテンツ、お店に並ぶと同時にコンテンツが配信される」などとアピールしていた。



発表会にELT、LTEをアピール。エイベックスの松浦氏も

ELT
エイベックスの松浦氏と孫氏

 なお発表会には、Every Little Thing(ELT)が登場し、白戸家のCMキャラクターらとともに登場し、“ELTがLTEになった”というテレビCMが披露された。持田香織は、「すごく出演がうれしい。今後LTEで活動していきたい」などと笑いを誘った。

 また、エイベックスとソフトバンクの合弁会社「UULA」(ウーラ)についても発表され、エイベックス・グループ・ホールディングスの代表取締役社長CEOの松浦勝人氏が登場した。

 同氏は、「音楽業界における環境の劇的な変化は、僕らのビジネスだけでなく音楽業界自体にすごい変化を与えている。人に喜んで楽しんで共感を得てもらうことが僕らの仕事で、それを届けるのも仕事。ただ、人々に届ける仕組みを僕ら自身で作らなければならない時期に来ている。創業当時、そのときはレコード会社でもなく輸入盤の卸会社だった。お客にどう届けるかはレコード会社になってからも常に最新の注意を払ってきた。今回の変化は大きなチャンス」とした。

 松浦氏はさらに続けて、「ちょっと手を伸ばせば、ネットでさまざまな映像が手に入るが、あまりにも多すぎる。たどり着いても違法なコンテンツな場合もある。大切なことは、最高に安全ですごく簡単にコンテンツを得られるシステムを提供すること。この20数年間に、たくさんのムーブメントを仕掛けてきた。UULAをブームにしていきたい」とした。



iPhone 5のau好調は「微々たる数」

 発表会の質疑応答では、iPhone 5の話題が出た。9月の契約数において、auのKDDIがMNPで9万件以上を獲得したのに対して、ソフトバンクは1200の転入超に留まった。孫氏はこの影響を問われると、「昨年もほぼ似たような数字で、読み通り。微々たる数で安心しているところ」と語った。

 また、アップルがコメントを出すに至った「iOS 6」の新しい地図アプリについては、iPhone 5対応の「Yahoo!ロコ 地図」などの代替手段がある点をアピールした。


フォトセッション下り最大76Mbpsを「速い→→→ぶっちぎり速い」とアピールしていた
900MHzの移行計画移行を促進
発表会ではWireless City Planningも展示していた。下り最大110Mbpsをスマートフォンでやれば、現状では消費電力が大きくなってしまうというNFCのデモ

 




(津田 啓夢)

2012/10/9 18:52