記事検索
最新ニュースIndex

他社には負けない――ドコモ技術陣が語るLTEの取り組み


 NTTドコモは16日、同社のLTEに関する取り組みを紹介する、報道関係者向け説明会を開催した。代表取締役副社長で技術部門担当の岩崎 文夫氏と、取締役常務執行役員でドコモのCTOでもある尾上 誠蔵氏から、同日発表された通信速度の高速化やLTE対応フェムトセルの導入のほか、同社が進める通信環境の改善策などが紹介された。

ドコモの岩崎氏 ドコモの尾上氏

 なお、会見中には、11月14日に発生したspモードの障害について、岩崎氏が陳謝するとともに、説明を行った。岩崎氏は、15日実施の防災訓練でも同様の説明を行っており、今回の会見の内容もそれに沿った形。

 同氏は、「spモードの運用・監視を行うネットワークにおいて、増強するための機器を導入する際、設定をミスして、ループを発生させてしまったことが原因。導入工事前に、その設定データのミスを発見していたが反映されるようにはなっていなかった。広い意味で、人為的なミス、運用上のミス、設計上のミス。人間のやることなのでミスはまったくゼロにはできないため、フェイルセーフ(何らかの故障が起こった際でも安全に動作する仕組み)の仕組みも検討している」と語った。

一部の都市で100Mbps導入

 2012年冬モデルでは、ドコモのLTEサービス「Xi」において、1.5GHz帯を活用し、下り最大100Mbpsでの通信が可能になった。ただし、100Mbps対応エリアは7県10都市に限られている。

 100Mbps対応エリアが限られるのは、ドコモに割り当てられている1.5GHz帯の利用できる時期が、場所によって異なるため。利用できる状況になり次第、エリアは拡大される予定となっている。ドコモが開示した資料によれば、2013年春には札幌、仙台、広島など、北海道、東北、信越、中国の50都市以上で下り最大100Mbpsのサービスが利用できるようになる。
ドコモが進めてきたXiの進化 100Mbpsを一部都市で導入
2012年冬モデルは100Mbps対応

 東名阪や九州は2014年春に導入される予定。ドコモでは、各地で1.5GHz帯によるサービスが利用できる時期になれば、速やかにエリア拡充が図れるよう、設備を先んじて整備していく方針とのこと。

 実際に100Mbpsエリアでの速度として、今回の会見では11月12日、新潟市で行った計測結果も示された。それによれば下りは平均78Mbps程度、最大で90Mbps程度で、上りは平均21Mbps程度、最大25Mbps程度になったとのこと。ユーザーが増えれば、こうした速度は低下する可能性はあるが、現状よりも高速な環境の実現に期待がかかる。
今後の100Mbpsエリアの展開計画 新潟での速度測定結果

都内でも下り75Mbpsに

 これまでドコモのXiは、屋外エリアのほとんどが下り最大37.5Mbpsとなり、空港など屋内エリアで下り最大75Mbpsとなっていた。これは2GHz帯による、Xi用の周波数の使い方が異なるためで、屋外のほとんどは5MHz幅、屋内は10MHz幅となっていた。

 しかしXi対応のスマートフォンが拡充してきたことで、通信量もFOMAからXiへ移りつつあると、岩崎氏は説明。東京23区におけるトラフィック(5MHz幅あたりのトラフィック比率)は、2012年5月時点と比べ、11月になるとXiは1.8倍に増えて、FOMAは0.9倍とやや減少した。こうした状況は今後も続くと見られ、今後、Xi用の2GHz帯の電波は5MHz幅から10MHz幅へ増やしていく方針だ。10MHz幅対応の基地局は、2012年度末には、全国4000局(23区内で700カ所、京阪神で300カ所)になるとのことで、来年度以降も、順次、下り最大75Mbpsのエリアを拡充していく。

 もっともXiへの電波の切り替えによってFOMAが繋がりにくくなっては本末転倒となるため、利用動向を見極めつつ、中期的な計画を検討しているとのこと。
XiとFOMAでトラフィックの傾向が変わってきた 今年度末まで4下り最大75Mbpsの基地局を4000局整備

 これにより、ドコモでは、1.5GHz帯で下り最大100Mbpsのサービスを、2GHz帯で下り最大75Mbps/37.5Mbpsのサービスを展開していくことになる。今回示された東京・山手線周辺のマップでは、東京駅や有楽町駅、品川駅、渋谷駅、新宿駅、池袋駅といった場所で集中的に基地局が配置される計画、ということがわかる。多くは屋外の局、一部は屋内の局とのことだが、繁華街に隣接するターミナル駅周辺の屋外はおおむね下り最大75Mbpsになっていくとのこと。ただ、75Mbpsにする基地局の展開はエリアカバーというよりも、通信量が多く混雑しているエリアにおいて、通信速度の向上を図ることを目指しているという。

生活シーンにあわせたエリアカバー

 岩崎氏は、エリア整備についても紹介し、たとえば首都圏25km圏内にある鉄道29路線486駅でXiのエリア状況をチェックしたところ、駅ホームでは81%、改札口周辺と駅周辺の店舗内ではそれぞれ79%と、おおむね8割程度の場所で繋がることを確認した。また商業施設や宿泊施設、イベント施設など人が集まる施設では、全国約2200カ所で基地局を整備。この基地局は、下り最大75Mbpsおよび下り最大37.5Mbpsの基地局が混在しているとのことだが、繋がりやすさの向上を図った取り組みとなっている。

 このほか、全国53の空港、新幹線全駅(8路線97駅)でもエリアが整備されていることがあらためて案内された。
駅での繋がりやすさを測定 空港、新幹線の駅で整備

他社との基地局数比較も

 今秋、iPhone 5の発売にあわせて、auやソフトバンクモバイルもLTEサービスを開始し、各社のLTEサービスがいよいよ出揃った。特にauとソフトバンクは、同じiPhoneを提供するため、互いにエリア整備の優位性を競い合い、報道や広告などを通じたアピールを盛んに行っている。

 2社の熾烈な競争の陰に隠れる形となってしまったが、ドコモは国内初のLTEサービスを2010年12月より提供してきた。他社より2年近く先んじてLTEを展開してきたことから、これまで同社幹部はたびたびエリア整備のノウハウなどが蓄積されていることを語ってきたが、その一方で、自社の取り組みを地道に伝える姿勢を保ち、他社との比較は避ける言動も少なからずあった。
他社との基地局数の比較 基地局のラインナップの豊富さも強調

 しかし今回の説明会では、他社との比較として、大手3社のLTE基地局数を示す。ドコモが示した資料は、昼間の人口が多い全国の都市を順に並べ、各社の基地局数を比較したもの。東京23区、大阪市、横浜市、名古屋市、札幌市、京都市、神戸市……などと各地の名前が並ぶなか、多くの場所でドコモの基地局数が多い、ということを示すデータになっている。

 さらに屋外をカバーする基地局、そして屋内用の基地局など、多種多様な基地局をラインナップしていることを紹介。特に1つの基地局の周囲を6つのエリアに分ける「6セクタ」型の基地局については、「ドコモだけの取り組みだと思っている」(ドコモ執行役員ネットワーク部長の入江恵氏)とアピールする。

 6セクタとは、基地局の周囲360度を6つのエリア(セル)に区分するタイプの基地局のこと。他社がオムニ型(1つの基地局で1つのエリア)、3セクタ型(1つの基地局で3つのエリア)を展開する中で、FOMA時代から6セクタ局を展開しているドコモだが、トラフィックの多いエリアを中心に、基地局全体の20%が6セクタになっているとのこと。
小型化したリモート局と、Xi対応のフェムトセル 新型のフェムトセル。三菱製だ
新型フェムトセル 新型フェムトセル

 また基地局から離れた郊外、あるいはトラフィックの多い場所には、リモート設置型基地局(光張り出し型基地局)を展開して、エリアを補完する。このタイプの基地局は、実際にアンテナや一部の処理を行う設備を備えた“子局”と、光ケーブルで繋がってその他の処理を行う“親局”に分かれて展開する。スピーディかつ低コストなエリア拡充の手段となる。会見会場には、従来よりも小型化した子局設備も展示された。

 さらに今回、家庭内など、ごく限られたエリアをカバーするための小型基地局で、新たにXiに対応したフェムトセルも発表されている。
左が従来、右が小型化したリモート局 重さが約半分になり、薄さも違う

「人口カバー率」か「実人口カバー率」か

 先述したように、他社間でLTEのエリア整備に対するアピール合戦が行われる中で、これまでエリア整備の進展具合を示す指標だった「人口カバー率」だけではなく、特にauが「実人口カバー率」という指標を用いている。

 旧来より使われている人口カバー率は、自治体の役所がカバーされているかどうかが基準で、auの実人口カバー率は、全国を500m四方単位に区切って、そのエリアに含まれる人口を基準にしている。

 基準が異なるため、「エリアカバー○%」と互いに言い合っても、ユーザーとしては冷静に比較しづらい。しかし岩崎氏は、ドコモが用いている人口カバー率という指標は、これまでの基準を踏襲するものであり、「(免許割当に先立ち)総務省に提出する計画でも用いられている」と語る。さらに昨今の市町村合併により、場所によっては市役所のほかに複数の支所を設けている自治体については、4つの支所のうち2カ所だけカバーされ、全ての支所がエリアにならなければ、その自治体の人口カバー率は0%と算定しているという。
支所がカバーされなければ0%とカウントしているとのこと

 主立った場所が整備されなければ0%となる仕組みを採用していることから、人口カバー率は低めの数字になりがち――岩崎氏は、そう説明する。それでは、実人口カバー率にあわせてドコモのエリアカバー率を算出してみるとどうなるのか、同氏は、具体的な数字を明らかにはしないものの、「他社より高い値になると思っている」と述べ、自信を見せる。

 「役所を基準とした人口カバー率」が、果たしてどの程度、ユーザーの生活にマッチしているのか。そこまで踏み込んだ説明は今回行われなかったが、ユーザーからすれば、どちらが優れているのか、わかりにくい状況が続いている。質疑で問われた岩崎氏は「(ユーザーにとって)不便な状況だと思っている。ただ、これまで使ってきた人口カバー率は、総務省へ提出する資料でも用いられており、これまで通りのほうがいいかと思っている」と、自社の姿勢を堅持する方針を示した。

「LTEは4G」について

 LTEとは、Long Term Evolution、直訳すると「長期的な進化」といった意味の言葉だ。これがなぜ、高速通信の技術を示す言葉になったのか。

 携帯電話の技術は、アナログだった第1世代、デジタル化された第2世代と、世代ごとに進化してきた。日本では世界に先駆けて、第3世代(3G)の技術を導入し、なかでもドコモは3Gの展開を積極的に行ってきた。当時から、さらに技術を発展させて、さらなる高速化を実現させるという方針は世界中で意識されていたが、ドコモでは2004年3月、「Super3G」という名称で、3Gの技術を発展させて、次の世代への橋渡しとなるような規格のコンセプトを提唱した。この「Super3G」が国際標準規格を定める団体の1つである3GPPで提案され、現在のLTEに整えられていったことになるが、もともとは「次の世代に向けた橋渡しの技術」ということから、“長期的な進化”であるLTEと呼ばれるようになった。
LTEの国際標準化の流れ ドコモが提唱したコンセプトをベースに策定されてきた

 この流れのなかで、ドコモは積極的に標準化へ参加しており、LTE関連の特許の中でも必須特許(LTEを実装・運用するために不可欠な機能のための特許)数を、クアルコムやノキア、ファーウェイに継いで、サムスンと同じく世界で4番目に多く持つ。他社は半導体メーカー、端末・基地局メーカーである中、ドコモは通信事業者として最も多くの必須特許を持つ。
通信事業者として最も多くの必須特許を持つドコモ

 先述したように“橋渡し”という位置付けだったため、日本では、次世代の第4世代の一歩前、つまり3.9G(第3.9世代)と長く呼ばれていた。しかし最近、ソフトバンクやauは、LTEやAXGPといった高速サービスを「4G」と呼ぶ。次世代を示す4Gという言葉を、それ以前の段階で使うようになったのは、国際機関のITU(国際電気通信連合)で認められたため、と理由がよく挙げられる。

 一方、ドコモではLTEサービスの「Xi」を4Gとは呼んでいない。この点について、尾上氏は「個人的にはこだわっているわけではない」とするが、そもそもLTEなどの規格が4Gと呼ばれるようになった由来について、「ITUでは、LTEなどを4Gを呼ぶよう勧告したわけではない。ただ、プレスリリースの1つで、『3Gから発展した技術は4Gと呼んでもいいかもしれない』とした。その後、米国では、(日本では3.5Gとされた)HSPA+方式まで4Gと呼び、日本より混乱しており、Verizonなどは、LTEについて、4Gだけでは通じなくなったため、わざわざ“4G LTE”と呼んでいる」と解説した。

ドコモが進めるLTEの最適化

 他社に先んじてLTEを導入したドコモでは、利便性向上のため、さまざまな取り組みを行っている。

 その1つとして紹介されたのは高速ハンドオーバー機能だ。ちなみに、尾上氏は「(KDDIが用いるCDMA2000方式陣営の)3GPP2ではOptimized Handoverと名称を付けているが、LTEは(ドコモが採用する3G方式の)W-CDMAから発展したもので、ハンドオーバーするのが当然で、特に名称はない」と説明しており、この高速ハンドオーバーに関しては、特別な名称はないとのこと。

 仕組みとしては、移動中に、基地局から隣の基地局へ切り替るハンドオーバーの際、より高速に切り替わる仕組みを導入されている。基地局切り替え時に、前の基地局から受け取れなかったデータの一部は、新たに繋がった基地局から受け取れるようになった。たとえばスマートフォンでストリーミング動画を観ている最中、基地局が切り替わると、データが途切れて静止状態になってしまうが、この機能によって、スムーズに通信し続けて、動画を途切れなく鑑賞できることになる。
高速ハンドオーバー機能 S-1 Flex
3Gエリアのサーチの最適化も

 なお、LTEから3Gへの高速ハンドオーバー機能はサービス開始時から提供されている。また、3GからLTEへの高速ハンドオーバーは今夏の一部機種、そして2012年冬モデルの全機種でサポートされている。

 また「S1-Flex」(エスワン フレックス)という仕組みで、ドコモのLTEネットワークでは、基地局が複数の交換機に繋がるようになっており、交換機の1つが故障してもサービスを継続して提供できるようになっている。

 このほか、3Gエリアとの切り替えについても、LTEエリアが広がってきたことから、3Gエリアをサーチするタイミングを少なくしていく。これにより通信速度の向上が見込めるとのことで、試験的に導入したケースでは、下り速度が30%、上り速度が20%向上したとのこと。

有望な技術は導入

 LTEの次の技術として、3GPPでは「LTE-Advanced」を策定している。ドコモでは2015年に導入すべく研究を進めているとのこと。中でも特徴的な機能は、キャリアアグリゲーション(CA)と呼ばれる技術だ。たとえば2GHz帯の10MHz幅と800MHz帯の10MHz幅をあわせて、仮想的に20MHz幅として扱い、通信速度の向上を図る。CAでは、合計100MHz幅まで利用でき、最大1〜3Gbpsという、現状よりも遙かに高速な速度を実現できる見込みだ。
ドコモでは2015年までにLTE-Advancedを実現 CAは有望な技術の1つという
さらに発展させた技術の導入も見据える

 また、KDDIが既に導入している技術で、基地局側のネットワークが自らエリアを調整する「SON」(Self Organizing Network)について尾上氏は、「フェムトセルのプラグアンドプレイも、パラメーターの自動設定といったところがあるが、(SONは)一部で始めている。やれるところからやっていくという方針。SONについては、機器ベンダーが避けたいと考えていた時期はあるが、現在はみんな取り組んでおり、ドコモとしてしっかり着実に取り組んでいる」とコメントし、一部で導入していることを明らかにした。

 会見後、あらためて、尾上氏に尋ねたところ、「良い技術はLTEの段階でも取り入れていいと思っている」とコメント。CAだけでは「単に受信機を複数載せただけの力業と言える技術で、インテリジェンスなものではない」としつつ、カバーするエリアが異なる大小の基地局が混在するHetNet(ヘットネット、ヘテロジニアスネットワーク)と組み合わせれば、効果が見込めると説明した。

山手線は10月に大幅改善

 さまざまな取り組みで、LTEのエリア整備をアピールするドコモだが、「都心ではまだ繋がりにくく感じるようだ」と指摘を受けると、岩崎氏は「確かに山手線周辺で繋がりにくかった状況はあった」と認める。

 ただし、こうした状況に手をこまねいているわけではなく、改善を図っていることも明らかにした。

 岩崎氏は、「最近のチューニング、パラメーターの最適化で、接続率は96%程度まで向上している。チューニングする場所を増やしていかなければ、XiからFOMAへ切り替るため、中央線など鉄道沿線でチューニングをして改善を図っている。まずは山手線に注力して、今秋(10月中)、集中的に対応した。1カ月前とだいぶ環境が異なる」と述べ、改善を図ったとした。




(関口 聖)

2012/11/16 20:58