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ソフトバンク「iPhone 5」緊急速報メール誤配信の原因

ソフトバンク「iPhone 5」緊急速報メール誤配信の原因

 緊急地震速報かと思いきやスポーツニュース――ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」で、緊急地震速報などを伝える仕組みによって、芸能やスポーツのニュースなどが誤って配信される事象が発生した。

 今回、騒動となっているのは、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」の一部で受信した緊急速報メールの内容。緊急速報メールは、緊急地震速報や津波警報、災害・避難情報を配信する仕組みだが、ソフトバンクによれば、KDDIが配信したコンテンツを、ソフトバンクの「iPhone 5」で受信してしまったのだという。

 両社の説明によれば、今回の事例は、ソフトバンクのエリア外ながらauのエリア内にいたソフトバンク版「iPhone 5」で、auが配信したオススメ情報を受信したと見られている。

 ソフトバンクでは今後、こうした事象が発生しないよう対応する予定と説明。ただし、具体的な対処方法、スケジュールは未定としている。

緊急速報を送る仕組み

 いったいなぜ「auが配信したコンテンツをソフトバンクのiPhone 5が受信する」ことが発生したのか。緊急速報で配信される情報は、いずれもユーザーの生命に関わるもので、同様のことが続けば、緊急速報が“狼少年”になりかねない。

 国内の携帯電話事業者のうち、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルの3社では、緊急地震速報や津波警報、災害・避難情報(国や自治体が発表)を携帯電話宛に配信できる仕組みを整えている。サービス名はドコモがエリアメール、他の2社が緊急速報メールとなっており、通常のパケット通信ではなく、一斉同報専用の仕組みを使っている。もし、災害発生時に制御などによって通信しづらくなるパケット通信で、緊急地震速報や津波警報を送ると遅延する可能性があるが、一斉同報専用の仕組みであれば、対象エリアにいる全てのユーザーに対して、時間差がないまま送信できる。

 今秋になって各社のサービスが出揃ったLTE方式では、一斉同報の仕組みとしてETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)方式を用いている。このETWSは、標準的なLTEの仕様の1つで、その名称から大規模な地震や津波など緊急時に用いる仕組みのように思えるが、実はauでは、ETWSを使って、緊急速報メール以外にもニュースやオススメコンテンツなどの情報を配信している。

 そのままでは、そうしたコンテンツ情報が緊急速報として処理されてしまうが、送信データに「これはニュース、コンテンツ情報」という符号を含めておけば、緊急速報メールアプリではなく、コンテンツ表示用のアプリで処理されることになる。auはこうした仕組みで、一斉同報による情報配信を行っている。このため、今回、ソフトバンクの「iPhone 5」が緊急速報として受信した内容も、au側のLTE端末では通常のコンテンツとして受信している。

 ところが、このETWSは、その仕様上、A社が配信した情報を、同一周波数を使うB社の端末でも受け取れるようになっている。つまりキャリアに関わりなく受信できることになる。ドコモによれば、今夏、auがETWSで配信したコンテンツを、ドコモのXi端末で受信したことがあり、ごく一部のユーザーから申告があった。この申告を受け、3社では協議を実施。互いに対策を行うことになり、ドコモのXi端末では既に対応済で、auからのコンテンツ配信は受信しない形になっている。

 ソフトバンクの「iPhone 5」は、発売当初、LTEネットワークに繋がっていると緊急速報メールを受信できない状態になっていた。11月末までにネットワークが整備され、最近になってLTE内でも緊急速報メールが受信できることになったが、これは、つまり「iPhone 5」のETWSがONになったと言える状況。しかし、この段階で3社間の合意による対策がソフトバンクの「iPhone 5」では施されておらず、auが配信したコンテンツを緊急速報メールとして受信してしまった。

 auでは、ソフトバンク側の対応が済むまでETWSによるコンテンツ配信を行うかどうかは未定としている。一方、ソフトバンクでは、3社協議の後、対策を実施しなかった理由について「確認中」としている。

【追記 2012/12/11 22:30】
 ソフトバンクモバイルは、今回の事象について同社Webサイトで案内するとともに、来春までに対策を実施して、今回の事象を解消できるよう取り組むことを明らかにした。

関口 聖