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ドコモ、ユーザー作品を扱う新サービス「dクリエイターズ」

ドコモ、ユーザー作品を扱う新サービス「dクリエイターズ」

 NTTドコモは、アマチュアの一般クリエイターが製作したハンドメイド作品、あるいは小説などのデジタルコンテンツを出品・購入できる場として、新サービス「dクリエイターズ」を2013年5月より提供する。

dクリエイターズの概要

 「dクリエイターズ」は、一般クリエイターの作品を出品、購入できる新サービス。ドコモ以外のユーザーも利用できる、一般的なWebサービスの1つとして提供される。これまでドコモでは、ディー・エヌ・エー(DeNA)と合弁会社を設立し、小説やコミック、エッセイなど、プロではなくアマチュアの一般ユーザーが作りだしたコンテンツ(UGC、User Generated Contents)を扱う「E★エブリスタ」を展開している。今回の「dクリエイターズ」は、その「E★エブリスタ」の扱うデジタルコンテンツだけではなく、そしてアクセサリーやインテリア、アート作品などのハンドメイド作品を取り扱う“場”として提供される。

 作品を制作したユーザーは、「dクリエイターズ」に投稿、販売できる。それを見た他のユーザーは、ドコモが用意した決済システムを利用して購入するか、クリエイターにメッセージやコメントを送ることもできる。出品物に対しては、全件、目視でチェックされ、著作権違反の品などは排除される。

5つの特色をアピール
今後はコンテストなども

 決済方法は、ドコモの利用料と合算できる「ドコモ ケータイ払い」、クレジットカード、コンビニ決済などで、ドコモが買い手と売り手の間に立つ形となる。また、配送時には、住所などの個人情報を相手のユーザーへ明らかにしない、匿名配送サービス(オプション)も利用できる。

 クリエイター(出品者)となるユーザーは、事前の会員登録(無料)および「販売クリエイター登録」といいう手続きが必要で、販売登録料として月額315円かかる。ただし2014年3月末まで、販売登録料は無料となる。また売買成立時には、クリエイター側に販売手数料や決済手数料がかかる。この売買成立時の手数料の合計は、決済額の25%になるとのこと。クリエイターの事前登録は2月18日から受け付け、4月上旬から出品登録を受け付ける。

 クリエイターの作品に対して、閲覧のみであれば会員登録なしで利用できる。購入する場合は事前の会員登録(無料)が必要となる。

 なお、会員登録できるのは、18歳以上(要本人確認書類)で、各携帯電話会社のメールアドレスを持っていることが条件となっている。

ドコモでは、E★エブリスタで培われたノウハウでクリエイターを支援
5月にオープンする予定

「誰もが作り手になる」時代を見据えて

ドコモ ポータルサービス担当部長の田中慎二氏

 ドコモは18日、記者説明会を開催。同社スマートコミュニケーションサービス部 ポータルサービス担当部長の田中慎二氏からは、「E★エブリスタ」でのこれまでの実績、そして3Dプリンタなど新技術の登場による新たなムーブメントをキャッチアップすることなどが語られた。

 新サービスの前身とも言える、現在のサービス「E★エブリスタ」は、2010年5月にスタートした、ユーザー投稿型サイト。一度でも同サイトへ投稿した人を含め、これまでの“クリエイター”は100万人に達し、たとえば小説は累計200タイトルが10社以上から書籍化され、800万冊以上の発行部数となっている。ドコモとDeNAとの合弁会社であるエブリスタの2012年度の収益は20億円になる見込みで、これまでの約2年9カ月の取り組みで、4000人以上のクリエイターに約4億円の還元があった。この還元額は、印税やコンテストの賞金などで、そのうち1人が映画化やソーシャルゲーム化などもあって、約2億円を手にしたという。

 こうしたことから、デジタルコンテンツ分野については、ユーザー発のコンテンツが一定の規模に達したと見ることができる。

E★エブリスタは一定規模まで成長
ハンドメイド分野も希望が持てる分野という

 一方、「dクリエイターズ」で新たに手がけるハンドメイド分野については、日本国内でハンドメイドクラフトに親しむ人口が約1000万人、ホビー・クラフト分野の潜在的な市場規模は約4000億円という調査データが示されたほか、東京で開催されたデザイン関連イベントは開催期間中、10万人の人出を数え、百貨店で開催されたビーズ関連のイベントも人気で、ドコモ側が百貨店側へヒアリングしたところ1週間で2000万円の売上があったという。

 こうしたハンドメイド分野は、多くの人が長く楽しんでいるものだけではなく、最近では、より手軽に立体物を造形できる3Dプリンタの登場で、新たな局面を迎えている分野でもある。プレゼン中、田中氏は、米国人ジャーナリストで、ロングテールなどを提唱し、昨年には「MAKERS」という書籍を上梓したクリス・アンダーソン氏の言葉を幾度か引用し「アンダーソン氏が新たな産業革命が来ると言っているように3Dプリンタなどによって、物作り全盛の時代になるのではないか。そういった時代に向けて、手芸だけではなく、(3Dプリンタなどで制作する)こういったものに広げてやっていきたい」と意気込みを見せる。

 今後はコンテストや展示会の開催など、積極的に取り組み、より良い作品が登場する土壌を育む方針を示した田中氏は、多品種少量生産の極限をサポートする一方で、良い作品があれば大量生産にも繋げたいと語る。

 「『MAKERS』にもあったように、大量生産品とこういった(ハンドメイド)製品は補完関係、というのは私どももそう思っている。情熱と時間をかけて、場合によって場プロをもしのぐ技術力で作品が生み出される。それは大量生産にはな逸品だ。買う側にとっても、自分の感性にぴったりなものを見つけ出せるはず」

 こう述べた田中氏は、これまで消費されていなかったニーズを掘り起こしていくことで、2015年時点には、「dクリエイターズ」の流通額は200億円~300億円、に達するとの見通しを示す。この流通額は、日本国内のハンドメイド/UGC市場の30~50%程度のシェアになるとのことで、今回の「dクリエイターズ」が、“ユーザー自身が作り手”になる時代に向けたプラットフォームと位置付けた。

関口 聖