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ドコモ、「グリーン基地局」のトライアル

ドコモ、「グリーン基地局」のトライアル

 NTTドコモは、太陽光発電を採用した基地局「グリーン基地局」のフィールドトライアルを4月より開始する。同社では22日、横須賀の研究施設で「グリーン基地局」の設備を公開した。

横須賀にあるドコモの施設内に設置されたグリーン基地局の試験(テストベッド)設備

 「グリーン基地局」は、太陽光発電での稼働を目指す基地局設備。2011年3月の東日本大震災を受けて、電力会社の設備が被災した場合でも、携帯電話サービスを継続して提供できることを目指して開発が進められてきた。基地局の稼働に必要な電力量の倍程度をソーラーパネルで発電し、太陽光だけで基地局を稼働させつつ、余った電力はバッテリーに蓄電。夜間はそのバッテリーで駆動する形となる。

グリーン基地局の内部
バッテリーのリチウムイオン電池はパソコン用と同じ物
発電量と基地局の消費電力が示されて居た
一般的なノートパソコンの能力で制御できる

 商用電力を利用することも可能。また「グリーン電力コントローラー」と呼ばれる制御装置が基地局に設置され、太陽光発電だけで駆動するモード、バッテリーだけで駆動するモードなどに切り替えられる。これにより、たとえば商用電力を利用している中で東京電力管内で必要とされる電力(需要電力)が高まった場合、そのピークの時間は、グリーン基地局で商用電力を使わない“ピークシフト”を行う、といった運用ができる。4月からのトライアルでは、遠隔操作でのモード切替にも取り組む。

バッテリーだけで駆動しているところを図示
東京に設置されたトライアル用のグリーン基地局
取材時にライブで現地の様子をチェック
発電量の約6割が基地局、残りが蓄電されていた

 トライアルでは、神奈川県、東京都、山梨県、計3カ所の基地局でソーラーパネルが設置され、グリーン基地局として稼働する。神奈川県の設備は、基地局設備の消費電力が2kWとなる一方、太陽光で4.2kWと、消費電力の倍程度を発電する。余った電力はリチウムイオン電池(容量32kWh)に蓄電され、約16時間、蓄電パワーで稼働できる。東京の設備は消費電力が600W、太陽光発電が1.7kW、蓄電容量(ニッケル水素)が9.8kWh、山梨の設備は消費電力が1.2kW、太陽光発電が1.4kW、蓄電容量(リチウムイオン)が16kWh。バッテリーとして利用されるリチウムイオン電池は、パソコン用の電池と同じ製品を、ニッケル水素電池は市販の電池と同じ製品を採用する。それらを何百個と集めて1つのユニットとし、計3つのユニットを用意する。市販品を採用したことで導入コストの低廉化を図っており、また同じ容量の鉛電池と比べて重さ・サイズともに1/5程度と軽量化にも成功した。

 太陽光発電のほか、風力発電や、あるいは一部基地局で導入が始まっている基地局用燃料電池(ノキアシーメンス製)との組み合わせも検討される。燃料電池については、すでに一部の発展途上国で商用化されている設備で、濃度60%のメタノール水溶液を用いており、取り扱う上で安全性が高く、200リットルの貯蔵で約40時間、基地局を稼働できるという。

 現時点での大きな課題は導入コスト。ただし、余剰電力を売電した場合、10年程度で導入コストを回収できるとも想定されており、ドコモの担当者は、これまでとは違った考え方での導入も可能、と説明する。

 将来的には余った電力を電力会社へ売電し、その分を他の基地局で商用電力を利用する、といった形で、ドコモ内での電力の自給自足も拡大させていく考え。ドコモでは全国9万カ所の基地局のうち、郊外のルーラルエリアでグリーン基地局の設備導入が想定されている。まずは2013年度上期までに関東甲信越で計10局で導入される。

関口 聖