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KDDIとソフトバンクの独禁法違反疑惑、公取委は違反事実なし

 公正取引委員会は、林野庁発注の衛星携帯電話の入札を巡り、KDDIとソフトバンクテレコムが独占禁止法違反の疑いがあるとして審査した結果、違反の事実は認められなかったと結論付けた。

 林野庁地方森林管理局が発注した衛星携帯電話の一般競争入札において、KDDIとソフトバンクテレコムが1円で応札し、これを落札した。この入札において、両社が端末供給費用を著しく下回る価格を提示し、他の事業者のビジネスを困難にするとして、独占禁止法違反の疑いがかけられた。公正取引委員会の審査の結果、違反事実は認められず、審査が終了することが決まった。

 公正取引委員会は、審査の考え方を示しており、1円の値付けは仕入れ原価を下回り、外から見た場合に独占禁止法違反のおそれがあるとする。しかしその一方で、この入札は、林野庁の担当局が落札事業者から通信サービスの随意契約での調達が見込まれ、落札後に通信収入を得ることを考慮すると、不当に低い対価ではないとした。

 ただし、公正取引委員会は、入札後に落札事業者から随意契約で通信サービスの調達を行うために、通信サービス調達の競争が機能せず、不当廉売の疑いを生じさせる結果を招いたことを指摘している。さらに、地域によっては通信サービスの調達でも別途競争入札が可能ではないかとしている。

 端末調達後の通信収入を見越して端末価格を設定したKDDIやソフトバンクテレコムがいる一方で、通信収入を考慮せず、端末の仕入れ価格で根付けした事業者もいた。公正取引委員会では、入札の対象範囲が不明確であり、入札参加者間で公正な競争条件にならなかったとする。同委員会は、そもそもの林野庁の発注方法の改善を図り、入札対象範囲を明確にすることが適当と結んでいる。

津田 啓夢