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KDDIが景表法違反、iPhoneのLTEサービスに不当表示

 消費者庁は、KDDIがiPhone 5について記載したLTE関連の広告について、景品表示法違反による措置命令を下した。KDDI側はこれを受けて再発防止策などを発表している。

不当表示

 景品表示法では、商品やサービスについて、消費者に実際よりも良く紹介したり、事実と異なる形で他社よりも良く見せたりすることを、「優良誤認表示」として禁じている。

 今回、消費者庁が誤りの周知徹底と再発防止を求めたのは、KDDIがauの総合カタログと同社のWebサイトで案内した内容について。不当表示の掲載期間は、カタログが昨年の11月1日~12月31日で、Webサイトが同年9月14日~11月30日。

 不当表示の内容は、以下の通り。いずれもiPhone 5のLTEサービスを紹介する際のものだ。

  • 受信時最大75Mbps、送信時最大25Mbpsの光ファイバーなみのスピードで快適データ通信!!
  • サービス開始時より全国主要都市をカバー。2012年度末には実人口カバー率約96%に一気にエリア拡大。広いエリアで使える
  • 4G LTEエリアは政令指定都市を中心に全国主要都市部をカバー。一気にエリア拡大していきます
  • 4G LTE(iPhone 5含む)対応機種なら4G LTE
  • 受信最大75Mbpsの超高速ネットワークを実人口カバー率96%に急速拡大(2013年3月末予定)

 こうした記載が事実と異なるものとされた。記載内容はいずれもAndroidスマートフォンに限られたもので、iPhone 5については該当しなかった。これらの不当表示についてKDDI側も誤記載だったとを認めている。

auのLTEサービス、AndroidとiPhoneの違い

 auのLTEサービス「4G LTE」は現在、AndroidスマートフォンとiPhone 5でその内容が異なる。Androidの「4G LTE」は800MHz帯と1.5GHz帯を採用しており、iPhone 5については2.1GHz帯を採用している。

 2013年3月末までのLTEの通信エリアにおいて、800MHz帯と1.5GHz帯を使うAndroidスマートフォンはカタログやWebに記載された通りだった。しかし、2013年3月末時点において、2.1GHz帯のiPhone 5で下り最大75Mbpsに対応したエリアの実人口カバー率はわずか14%しかなかった。

 誤解を招かないよう付け加えると、2.1GHz帯を利用するauのiPhone 5において、37.5Mbps対応エリアは広く普及しており、LTEサービスが14%のエリアでしか使えなかったというわけではない。

 しかし、auではiPhone 5で使える75Mbps対応エリアの実人口カバー率を現在も非公表として開示していない。37.5Mbpsエリアについても実人口カバー率は非公表で、その代わりにエリア一覧で使えるエリアを紹介、75Mbps対応エリアは市区町村地域レベルでの情報開示(3月末時点)に留めている。

再発防止措置など

 不当表示の周知徹底と再発防止を求められたKDDIは、社内で広告を点検し、3月中旬までに訴求内容にわかりにくい記載があった部分を修正した。さらに、3月15日付けで新聞二紙に謹告文を掲載するとともに、auのWebサイトとauの販売店店頭でお詫び文を掲載した。

 再発防止策としては、3月15日より、広告のチェック態勢を強化し、承認フローを徹底。今年度上期中にも内部監査を実施するほか、広告の制作部門や管理部門などを対象に研修も実施した。

 また、措置命令を受け、KDDIの関係役員の月例報酬が一部返上となる。KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏はを筆頭に、報酬の10~20%を3カ月返上する。

解約する場合は通常通り

 一連の不当表示によって措置命令を受けたKDDI。今回の内容を受けて、仮に利用者が解約を申し出た場合も通常通りの解約処理となる。通信サービスとしては提供されており、前述した通り、下り37.5MbpsのLTEエリアが使えているためだという。

 消費者庁の措置命令は5月21日に提出され、同日、KDDIからも再発防止策が発表された。多くは3月中に自主的な取り組みとして対処されていた格好だ。KDDIは5月20日に夏モデルの発表会を開催したが、不当表示への言及はなかった。

 なお、iPhone 5の販売は好調に推移しているという。iPhone 5の販売台数やAndroidスマートフォンとの比率など、好調を裏付ける数値はいずれも非開示となっている。

津田 啓夢