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エリクソン、ヘットネットと“キャリアグレード”のWi-Fiを解説

エリクソン・ジャパン チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡雅宣氏

 エリクソン・ジャパンは、さまざまなサイズの基地局を組み合わせる「ヘテロジニアスネットワーク」(通称:ヘットネット)への取り組みについて解説する説明会を開催した。キャリアのネットワークが直面している課題や今後の方向性、Wi-Fiネットワークに対する新たな取り組みなどが、エリクソン・ジャパン チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡雅宣氏から解説された。

 エリクソンは最新の報告書の中で、今後のモバイルネットワークのトラフィックについて、2018年までにデータトラフィックが12倍になると予測しており、キャリアにおいては、サービス品質(の維持)が課題になるとの見方を示している。そうした時代を控え、鍵になる要素は「ヘテロジニアスネットワーク」「第4世代IPネットワークや分散型クラウド」「キャリアのサービスを支援するOSS/BSS、ビッグデータの解析」の3つにあるとしており、今回の説明会では主にヘテロジニアスネットワークの動向が解説された。

 ヘテロジニアスネットワークが重要視される背景には、ユーザーが利用するトラフィックの増加やアプリの多様化などさまざまな要因が挙げられるが、宅内やビル内など、通信エリアとして必ずしも理想的な環境ではない“インドア”でのトラフィックが全体の8割を占めるなど、キャリアが展開するエリアとユーザーの利用動向のギャップが顕著になりつつあるという事実がある。こうしたことから、既存の基地局設備を強化、拡充しながら、不足する部分を新たな小型の基地局で補い、それらを統括・調整してまとめて制御する、というのが、エリクソンの描くヘテロジニアスネットワークの根幹になっている。想定されている技術的な要件にはいくつか次世代のLTEでの実現を待つものもあるが、既存のスマートフォンがなるべく対応できるような仕組みが重視されている。

 同社ではまず、ヘットネットの構築にあたっても、既存の広範囲をカバーする基地局(マクロセル)を強化する方針を掲げる。これは、高効率化の面では小型の基地局(小セル/ピコセルなど)を増設するよりも効率が良いためで、複数の帯域を束ねるマルチキャリアや、異なる周波数帯を束ねるキャリアアグリゲーションなどの技術面での高度化に加えて、無線装置をアンテナに組み込んで省スペース化を実現した「AIR」(Antenna-Integrated Radio)の実用化や、設置場所の増設・高密度化など、現在のマクロセルのネットワークを強化するのが最初の手段であるとする。

ヘテロジニアスネットワークについて
マクロセルの強化

 その上で、マクロセルの強化でも補えない、例えば都市部のビル陰などのうち、基地局エリアの端(セルエッジ)にはピコセルなど小型基地局を追加していくという考え。日本のキャリアにおいては、こうした小型基地局の導入が始まっているという。

 一方で、マクロセルとピコセルを同時に利用する場合、基地局同士の協調動作や、上り信号を複数の基地局で受信する動作、オフロードを優先してピコセルのエリアを拡大する方法など、さまざまな動作が想定されており、これらを統括して制御することも重要なポイントになっている。

小セルの運用方法のひとつ
小セルは都市部が対象になるという

3G/LTEと一体運用できるキャリアグレードのWi-Fi

 同社はWi-Fiに対応した製品もラインナップに加えており、たとえば街頭やビル内など身近なところに設置されるピコセルの装置にはWi-Fiも内蔵可能にするなど、Wi-Fiの統合的な制御も可能にしている。

 エリクソンでは、基地局を管理する装置でWi-Fiも一括して扱えることにより、「One Network」として、3G、LTE、Wi-Fiを一体化してコントロールできる仕組みを提供できるという。具体的には、Wi-FiとLTEなどで同じIPアドレスを払い出し、ネットワークサービスをシームレスに利用できるといった機能や、キャリアのサービスも利用できる機能などが紹介された。また、Wi-Fiと3G/LTEなどのトラフィック、バックボーンの状態をリアルタイムに監視し、どちらに接続するのが最も効率が良いのかをネットワーク側で判断し端末に指示を送るトラフィック誘導(ステアリング)も可能になるという。こうしたことから、キャリアのネットワークと統合された新たなWi-Fiネットワークは、“キャリアグレード”のサービスの提供を可能にするという。

 同社はこの「One Network」の取り組みがパフォーマンスに優れ、最終的に基地局の数を減らしたり、コストを削減したりといった効果も見込めるとしている。

リアルタイムのトラフィック誘導では、Wi-Fiに接続しても効果が見込めない場合などを判断できる
SIM認証などすでに対応している機能も
Wi-Fi、LTEなどで同じIPアドレスを払い出す仕組み
複数種類の方式をまとめて制御し、ネットワーク側が主導で最適化を行う

プレゼンテーション

太田 亮三