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シャープ、MEMSディスプレイの試作品を公開

 シャープは、クアルコムの100%出資子会社であるPixtronix(ピクストロニクス)と共同で開発を進めているIGZOを利用したMEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電子機械システム)ディスプレイの試作品を、6月10日に奈良県天理市のシャープ総合開発センターで、報道関係者を対象に実施した新事業分野戦略説明会において公開した。

 公開したIGZOを用いたMEMSディスプレイは、7型のもので、1280×800ドットの解像度を実現。タブレットやスマートフォンなどへの応用が見込まれている。

 Pixtronixが保有するMEMSディスプレイ技術は、シャッターとLEDを高速で動作させて、色を表示。シャッターが開いた部分だけLEDバックライトの光が通り、これにより、RGBのLEDが表示されるという仕組みを持つ。既存の生産インフラを活用して生産が可能であるほか、液晶生産現状の液晶ディスプレイや有機ELと比べて、省電力性や色再現性、広視野角や高速応答などが実現できる次世代ディスプレイとして注目されており、Pixtronixが保有するMEMSディスプレイ技術と、シャープが保有するIGZO-TFT技術の統合によって、両社は、次世代MEMSディスプレイの実用化技術の共同開発を行い、将来における実用化に向け取り組むことを目的とする共同開発契約を結んでいる。また、共同開発契約による提携を確実に推進するため、クアルコムと出資契約を締結していた。

 共同開発では、第一段階として、シャープは次世代MEMSディスプレイの開発に関する研究開発および設備投資を行う。第一段階における実用化技術の開発において、ディスプレイモジュールの製品仕様の確立、設備の導入に関する計画作成およびその他研究開発に必要な資源や体制の確保といった一定条件を完了。第二段階としては、これらをもとに実用化技術開発に移行することになるとしている。生産は、鳥取県米子市のシャープ米子の液晶パネル生産ラインを活用する予定だ。

シャープ 代表取締役副社長 水嶋繁光氏

 今回、試作品を公開したことで、実用化に向けて開発が順調に進んでいることを示した格好となる。シャープは6月7日、米クアルコムから2回目の第三者割当増資の払い込みが6月24日に完了することを発表している。クアルコムによる出資は、2012年12月4日に決定し、第1回の払い込みが12月27日に完了していたが、3月29日を期限とした第2回の払い込みは、「共同開発による新型パネルの量産化技術の確立で目途が立っていない」(シャープ)という理由により延期。このほど、課題の解決とともに、第2回目の払い込みが完了することになる。

 次世代MEMSディスプレイの試作品を見せられる段階にまで至ったことは、同社の財務戦略上にも大きな意味を持ったものだといえよう。第1回目に払い込みは約49億円、第2回目の払い込みは約59億円となり、合計で108億円を出資。これにより、シャープに対するクアルコムの持ち株比率は3.53%となり、韓国サムスン電子の103億円を上回り、第3位となる。

 なお、シャープの代表取締役副社長 水嶋繁光氏は、次世代MEMSディスプレイをはじめとする新規事業分野において、2015年度に800億円の売上高を目指すことを明らかにした。

(大河原 克行)