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DTCP+でリモートアクセス、DiXiMのiOS版も開発中

 外出先から自宅にある機器にアクセス、手元のスマートフォンで、録画した番組を楽しむ――そんな使い方を実現する規格の1つ、「DTCP+」に対応した機器が登場しつつある。

 アイ・オー・データ機器、KDDI、デジオン、メルコホールディングス(バッファロー)らが参画する団体、デジタルライフ推進協会(DLPA)は、10日、都内で記者会見を開催し、DTCP+対応製品をアピールした。DLPAでは、DTCP+によって、宅内の録画番組を視聴できる使い方を「スマート視聴」と名付け、「2013年はスマート視聴元年になる」として、会場ではDTCP+対応のNAS(ネットワーク接続するストレージ)や、富士通製の最新スマートフォンが紹介された。

DTCP+対応の富士通製スマホ

今夏の富士通製のAndroidスマートフォンはDTCP+をサポート

 「DTCP+」は、東芝、日立製作所、米Intel、パナソニック、ソニーの5社が設立した団体、DTLAによって策定された規格「DTCP-IP 1.4」での新機能の総称。最も大きな特徴は、録画したテレビ番組を外出先のスマートフォンなどから視聴できる、という機能。実際にこの機能を体験するには、DTCP+対応のサーバーやNASとDTCP+対応プレーヤーとなるスマートフォンやパソコンなどが必要となる。

 今夏の富士通製Androidスマートフォンである「ARROWS NX F-06E」「Disney Mobile on docomo F-07E」「ARROWS A 202F」の3機種には、デジオン製アプリ「DiXiM for Android」が搭載されている。この3機種の「DiXiM for Android」はDTCP+がサポートされており、外出先での視聴する端末、として利用できる。

 またアイ・オーが6月に発売する予定の「HVL-ATシリーズ」は、DTCP+対応のNASで、なおかつ、MPEG-4 AVC/H.264へのリアルタイム変換機能(トランスコーダー)を備えており、「ARROWS NX」などからリモートアクセスで録画したコンテンツを視聴できる。

アイ・オーから発売されるHVL-ATシリーズ
こちらは既存製品のHVL-Aと、トランスコード機能を備えたアダプタ

バッファローの新製品、iOS向け「DiXiM」もDTCP+対応へ

 こうしたDTCP+対応NASとしては、6月10日、バッファローも今夏、対応製品「LS410DXシリーズ」を発売する。

 スマートフォン用の動画ファイルを生成するトランスコーダー機能を備えるほか、ソニーのレコーダー「nasne」で録画した番組を「LS410DXシリーズ」へムーブして外出先から観賞できる。また写真や動画、音楽などのコンテンツをリモートアクセスで楽しめるパーソナルクラウド「Web Access」機能も用意されている。

バッファローの「LS410DXシリーズ」
デジオンではiOSアプリでもDTCP+対応版を開発中

 一方、デジオンでは「DiXiM Digital TV for iOS」のDTCP+対応版を参考出品していた。「DiXiM Digital TV for iOS」自体は既にApp Storeで提供されているが、DTCP-IP対応で、リモートアクセスには非対応だった。今回披露されたアプリは、技術的にはほぼできあがっている状態とのことだが、提供の形態、値付けなどについて検討が進められており、提供時期は未定という。なお、10日の会見でDiXiMシリーズを紹介していたデジオンのコーナーではAndroid向けアプリ「DiXiM for Android」も紹介。Androi版はプリセット専用で提供されているが、Google Playなどで提供することについて、担当者は技術的には可能ながら、提供の是非を含めて検討中、とコメントしていた。

家電メーカーのレコーダー参入での普及見込む

アイ・オー社長の細野氏(左)と、デジオン代表取締役社長でDLPA理事の田浦寿敏氏(右)

 DLPAは2010年2月に設立された団体。DLPA代表理事でアイ・オー・データ機器代表取締役社長の細野昭雄氏は、「かつてテレビの録画関連機器は、(著作権保護をすり抜ける製品など)課題があった。ユーザーが健全に利用できるようにするためDLPAを設立してきたが、最も重要なのはユーザーの利便性」と語る。

 そうした利便性の1つとして、DLPAでは、21012年4月より録画データ救済サービスを提供している。これは、録画機能を有するテレビの場合、USB接続など外付けのHDDは、そのテレビでしか利用できないことを受けて用意された制度。もしテレビが故障してしまうと、録画コンテンツが収録されているHDDは、他の機器では利用できないが、そうした状況を救済可能とするものだ。また、そうした制度だけではなく、DTCP-IP対応のNASへ録画コンテンツをムーブしておけば、テレビが故障しても、他の端末から録画データを観賞できる、という利点もある。

 こうした利便性の1つとして、新たに提供されることになった「DTCP+」だが、細野氏は「NAS、つまりネットワーク上のストレージと言っても、幅広いユーザーにはなかなか認知されない」と指摘。そのため、DLPAでは規格に準拠する製品にロゴマークを付与していることを紹介した。

 会見後、囲み取材に応じた細野氏は、今後の展開として「DTCP+対応製品は、家電メーカーのレコーダーでサポートされれば、一気に拡がる」と説明。今回の説明会では、大手メーカーとしては他社との差別化としてDTCP+を採用する富士通だけが参加する形となったが、細野氏はDLPAにはKDDIが加盟しており、CATV向けセットトップボックスでの導入が期待できるとした。

“ロケフリ”産みの親である前田悟氏

 このほか、説明会では、ソニー在籍中に「エアボード」「ロケーションフリー」といった新基軸の製品を開発した前田悟氏も登壇。「少し遅い気もするが、ようやく“どこでもテレビ”が当たり前になってきたのかな」と感慨深く語る一方で、「本当に、外で、スマートフォンで観られるということが鍵になるのか。私は違うと思う」と警鐘を鳴らす。前田氏は、次なる新商品・新サービスのアイデアとして詳細な説明を避けつつも、「プラスアルファがあると良い。たとえばテレビ番組ではなくとも、(外出先で)観たいものがあるでしょう。NASがプラットフォームになると、大きくヒットするのではないか」と述べていた。

関口 聖