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早押しクイズができるAndroid対応周辺機器「FourBeat」

 クラウドサービスやスマートフォンアプリ、ハードウェアを組み合わせた製品を手がけるベンチャー企業のピグマルは6日、Android対応の周辺機器「FourBeat(フォービート)」を発表した。Androidに繋げる4つのボタンで構成された製品で、価格は8000円。

 製品の開発・生産にあたっての資金を、クラウドファンディング「Cerevo DASH」で調達しており、初期出荷分は支援者に向けて提供される。次期ロットでは一般販売される予定だが、現在、ピグマルのWebサイトで次期ロット関連の情報を知らせるメールへの登録フォームが用意されている。このお知らせメールへの登録状況によって、次期ロットの発売時期が正式に決まるという。

ケーブルで繋がる4つのボタン

 四角い筐体が4つ。緑、赤、黄、青とそれぞれ色が異なる丸いボタン。その4つがケーブルでAndroidに繋がり、クイズゲームや短距離走ゲームをプレイする。そんな遊び方を実現するのが「FourBeat」だ。タッチパネルでは体験できない操作感、リアルなアクションを手軽に楽しめるようにする機器で、Androidに繋げると、自動的に対応アプリが起動して、ゲームを選択できる。

 プリセットされているコンテンツは、早押しクイズゲーム、パーカッション、短距離走の3つ。早押しクイズゲームは、その名の通り、画面上にクイズが表示され、回答できる人はいち早く「FourBeat」のボタンを押す、というもの。パーカッションはゲームではなく楽器アプリで、「FourBeat」を使って音を奏でる。短距離走は、最大4人まで同時プレイできるゲームで、ボタンを連打すると画面上のランナーがひたすら駆けて、他のユーザーよりも早くゴールを目指すというもの。

短距離走ゲームをプレイ
シンプルなデザイン

 デモでは、サンフランシスコで開催されたイベント「Maker Faire」に出展した際に「FourBeat」で短距離走をプレイする来場者が、夢中になってボタンを連打する様が紹介された。サードパーティによるアプリ開発では、AndroidのAPI、JavaScriptが利用でき、UEI(ユビキタスエンターテインメント)のフレームワークであるenchant.jsもサポートする。たとえばHTML5、JavaScriptを利用して開発したゲームの投稿サイト「9leap」に投稿されているゲームも、タップ操作のコードを「FourBeat」のボタン操作用のコードに書き換えるだけで、すぐにプレイできるという。

サンフランシスコで出展したときの様子
セカンドロットに向けてお知らせメールの登録を受け付けている

 大きさは、ボタン1つあたり64×72×20mm、重さは全体で約170g。Android 3.1以上のスマートフォン/タブレットか、Android 2.3.4でUSBアクセサリー対応機種であれば利用できる。iOSへの対応は未定。ピグマルでは、6月16日に東京で、6月23日に大阪で「FourBeat」のアイデアソンおよびハッカソンを開催する予定で、参加者を募集している。

ベンチャーには難しいハード開発

ピグマルの伊藤氏

 「FourBeat」は、シンプルなハードウェアで、使い方も単純だ。また次期ロットの発売時期が、現時点では正式に決まっていないなど、提供状況は大規模とは言えない。

 ただ、その出自はちょっと面白い。開発したピグマルは、創業から2年も満たないベンチャー企業で、これまで燃料記録アプリ「ReCoCa」などを提供し、代表の伊藤元氏は、マイコンボード「Arduino」とAndroidを組み合わせた書籍を執筆したこともある。「技術によって人々が楽しめているか」という点を重視するという伊藤氏は、今回の「FourBeat」がリアルとバーチャルを繋ぐ存在であり、これまで存在しない製品と語る。

 一般的に、ベンチャー企業にとって、ハードウェアの開発・提供は乗り越えなければならない課題が多い分野だ。たとえばシンプルな外観とは言え「FourBeat」は筐体、基板、スイッチのバネ、ケーブルなど意外と多くのパーツが必要で、それらを組み合わせた後は落下テストや高温多湿ルームでの動作検証などが行われた。

 射出成型で筐体を生産しているとのことで、そのために必要な金型も一般的に費用がかかる部分。今回は、最近のハードウェアベンチャーのパイオニアと言えるCerevoの運営するクラウドファンディングで約82万円を調達して生産にこぎ着けた。

Cerevoの岩佐氏

 そのCerevo代表の岩佐琢磨氏も今回の説明会に登壇。同氏は「Cerevo DASHは、現実性のない、あるいは技術的に困難なプロジェクトはお断りしており、これまでわずか9件のみサイトで掲載し、これまで目標資金を達成したのは(FourBeatを含め)4件のみ。海外でも著名なクラウドファンディングサービスがあるが、資金調達後、半年、1年経っても製品が出てこず、批判されることもある。今回のFourBeatは12カ月かかっているが、これはハードを初めて提供する企業にとってはスタンダードなスケジュール」と述べ、その難しさを説明する。その難しさの中でもCerevo DASHを通じて資金調達するプロジェクトには、Cerevo自身のノウハウとして、たとえば強度の計算は大丈夫か、パッケージはどうするのか、生産はどこで行うのか、倉庫はどうするのか……など細かな部分までフォローして、製品化を支援するのだという。

9件中、4件が目標を達成
ハードウェアの生産時には、チェックすべき項目が多希に渡る

意外な用途も

 シンプルな使い方を提案する「FourBeat」は、早押しクイズゲームなどゲームの利用を想定したデバイスだ。

 その一方で、伊藤氏は、開発中の試作機を活用した支援者の中にはユニークなケースもあったと語る。

 これは、AndroidタブレットとFourBeatを繋げて、開発者の実家に設置。祖父母がボタンを押すとSkypeを起動できるようにしていたという。これによりワンタッチで孫とSkypeでビデオチャットできる仕組みで、ITリテラシーが高くないユーザーでも手軽にスマートフォン、タブレットを活用できる。形状からはゲームなど、エンターテイメントでの利用が主になると見られるが、子供向けの用途や街頭案内、業務用機器などへの応用も可能で、可能性を秘めたデバイスと言えそうだ。

関口 聖