ニュース

2.5GHz帯の追加割当、UQに認可

 総務大臣の諮問機関である電波監理審議会は、総務省からの諮問に答える形で、2.5GHz帯で新たに利用できる周波数帯をUQコミュニケーションズへの割り当てが適当と答申した。近日中に、総務大臣からUQへ認定書が渡され、正式に免許が割り当てられることになる。

 2.5GHz帯の追加帯域は、旧モバHO!が利用していた周波数帯。高速データ通信サービス(Broadband Wireless Access、BWA)用の帯域として利用されることになり、UQとソフトバンクグループのWCP(Wireless City Planning)が申請していた。UQは20MHz幅を、WCPは10MHz幅を求める形となったが、UQ側のほうが優位と判定され、追加帯域全てがUQへ割り当てられる。

 前日の25日には、一部報道で「UQへ割当へ」と報じられたことを受けて、ソフトバンク/WCPの孫正義氏と宮川潤一氏が総務省へ抗議。今回の電監審では、その申し入れについても検討した。なお、会見終了後、孫氏と宮川氏が2日連続で総務省へ姿を見せ、囲み取材に応じた。その模様も本稿後半でお伝えする。

判定結果は「3対1」

 2.5GHz帯の追加割当では、複数社で競い合う場合、基準A〜基準Gまで7つの項目を掲げて、比較することになっていた。

 今回、UQコミュニケーションズは3つの項目で優位、つまり3点を得ており。1つの項目で優位となって1点に留まったWCPに競り勝った形となった。UQが点を得たのは「屋内エリア化、高速化技術の導入などの具体的な計画がより充実している」「現在の周波数に対する契約数の割合が大きい」「現在の周波数における屋内エリア化、高速化技術の導入などへの具体的な計画がより充実している」という3つ。一方、WCPは「設備の安全・信頼性を確保する対策の具体的な計画がより充実している」という項目で優位と判断された。

 なお、認定にあたって、4つの条件が追加された。条件は「サービス普及に努める」「MVNOによる利用を促進すること」「停電や輻輳の対策、通信障害の防止など安全・信頼性の向上に努めること」「WiMAX 2.1導入時にはユーザーへ十分周知すること」となっている。

孫氏の主張への回答

 冒頭、電波監理審議会会長の前田忠昭氏(東京ガス顧問)からは、ソフトバンクから25日に寄せられた要望について説明が行われた。

 同氏によれば、「電監審へ直接説明する機会をいただきたい」「本日の開催を延期してもらいたい」の2点の要望があったという。1点目については、電監審に寄せられた資料が正しくまとめられているか、齟齬がないか、各社にもともと確認をしており、各社から資料に間違いがないとの回答があったため、資料で十分との認識に至ったとのこと。また2点目は、臨時開催であったこと、今までも臨時にやる場合は直前まで確定しないことがあり、とくにおかしいことではないと判断し、本日開催することにしたという。

 孫氏の主張への感想を求められた前田会長は、言い過ぎかもしれないがと前置きした上で、「『(総務省側が指導してWCPとUQで)10MHz幅ずつになっていた』ということだが、それって、癒着そのものではないかなと。それで決まることはありえない。事実は公明正大に行われている」と反論した。

 孫氏の行為をどう捉えているかという問いには「言っておられる中身が、ご自分のところ(WCP)が選ばれなかったことをベースにしているため、あまり論理的ではない。少し異常な事態だと思う」と回答。また天下りによる癒着を疑う孫氏の指摘に対しては「大企業のトップの発言としては、少し推測に基づいて、どこか非難するのは必ずしもよろしい行為ではない。審査にあたって、事務局側では大変な作業をこなしており、天下りが入り込む余地はないのではないか。(天下りした人材と総務省内の人材による癒着があるのではないかと)そう思っておられるのはむしろ問題だなと(思う)」と述べた。

 BWAが既存の携帯電話事業者の資本が1/3に制限されている、というルールになっているものの、事実上、UQはKDDIと、WCPはソフトバンクと一体化しているのでは? という質問に前田会長は「確かにおっしゃるように、実質的に狙いが担保されているか難しい。私見だが総務省の宿題だと思う」とした。

 このほか臨時の電監審となった理由について移動通信課は「これまでもそうだが、準備が整い次第、ということ。現在の通信状況からしても、早めに進めたほうがいいということはあった」と説明している。

事前の“密約”はあった?

 「10MHzの申請にする」と事前の取り決めがあったかどうか問われると、「誰と誰が話をしたか、(電監審会長の)私にはわからない。どういう雑談でそういう話を受け取ったかわからない。ただ両社とも10MHz幅で申請していたら、両社へ割り当てられることになったのではないか」と回答した。この点については総務省移動通信課の担当者が「申請以降には接触していない。申請以前は、審査基準について説明を求められ、説明したことはあるが、事前の取り決めはしていない。10MHz幅で申請するのか、20MHz幅で申請するのかは、その企業にとって必要な帯域幅として判断されるもの、と理解している」と否定した。

 なお、この内容については、後ほど現場に姿を見せたソフトバンクの宮川氏から「我々は密室で総務省側と話はしていない。総務省側のスタッフが『あなたたちはどこを要求しますか』と言った場合、こちらが「ここがいいです」と回答すると『そうですよね、あなた方がここに入るとイコールフッティングですね』と言ってくる。総務省のスタッフと話をしていると、『○○はこうですか?』と問うと総務省側からの回答を見て、UQ側の申請の方向性を推測する。現場はあうんの呼吸でやり合う」と説明。総務省側が言質をとられない、あるいは証拠を残さない形にしつつ、監督官庁とその下にある企業とのやり取りとして話が誘導された、と主張していた。

UQ、10月末からサービス開始

 なお、今回の割り当てによって、今年10月末からUQは、現在のWiMAXサービス30MHz(10MHz幅×3セクター)に加えて、今回割り当てられた20MHz幅で「WiMAX 2+」を提供する方針。これは2×2MIMOを用いたWiMAX 2.1 Additional Elements(AE)方式のサービスとのことで、来年3月には4×4MIMOへの進化も予定されている。当面は既存のWiMAXとTD-LTEの要素を取り入れたWiMAX 2.1が併存する形になる。

 UQでは、「本日、総務省の電波監理審議会において、弊社の特定基地局開設計画を認定することが『適当である』との答申を受けたことを、大変うれしく思います」とコメントしている。

透明性求める孫氏、怒りをあらわ、愚痴も続く

孫氏

 認定されなかったWCPは26日、総務大臣、電波監理審議会会長、総務省総合通信基盤局長に宛てて、不服の申し入れと情報公開を求める文書を提出。今回の答申を受けた総務大臣からの認定を延期するよう求めるほか、電監審での再審議も求めている。また天下りを含む関係者の携帯電話通話記録、面談の記録、メールの通信記録、申請関連書類の公開も請求している。ただ、仮処分申請は行わないとのことで、UQ側が進めるべき作業には影響しないとのこと。

 この文書は、26日の会長会見の後、急遽総務省を訪れた孫正義氏から直接、電監審会長の前田氏へ手渡された。

 その後、報道陣の囲み取材に応じた孫氏は「(情報公開を求めた面談記録などから)必ず何か出てくると思っている。潔白なら出してみて欲しい」と疑いをあらわにする。また海外投資家も多いソフトバンクにとっては、何らかのアクションをとらなければ、株主代表訴訟を起こされる可能性がある、とした。

 孫氏は「我々に割り当てられてきた電波はいつも制限付き。その制限がついている間に、どれだけ不利になってどれだけ追加投資が必要になるか」と憤慨。過去の事例では「同時に申請したとき、KDDIに勝ったことがあるか?」と孫氏が自ら問うと宮川氏が「ない」と即答。孫氏は「言いたくないけど全敗だ」と愚痴をこぼす。すかさず宮川氏は「900MHz帯のときはガス抜きしてもらったけど、700MHz帯は(900MHz帯を取得した事業者は優先度が下がるという条件になったため)すぐ他社へ割り当てられたからね」と述べる。

 孫氏の愚痴は続き「事実上、700MHz帯の割り当てには申請するなということだった。我々は900MHz帯を割り当てられたが制限付きで、最初使えるのは5MHz幅×2だけ。『900MHzを割り当てたばかりだからまさかすぐ700MHz帯を申請するわけはないですよね』と念を押されて、うーーーんと耐えに耐えてしょうがないと。もらった5MHz幅で爪に火をともしながら頑張るかと。それでもお客様には言い訳せずに頑張った。それだけ頑張っているのにまたも全敗か。どちらもKDDIですよ。(700MHz帯の割当のときの条件は最初から出ていたのでは? という問いに)誰がその条件を付けたのか。我々だって毎回逆らっていたら、いよいよ免許がもらえなくなる。決死の覚悟なんですよ。ここまで今回言うと次からいろんな面で不利になる。1回目の行政訴訟をしたら、僕は総務省へ事実上の立ち入り禁止となった。アポを一切申し込めなかった。でもこのままでいいのかということですよ」と述べた。

 ただ、今回の認定時ではなく、パブリックコメントの段階で、ヒアリングの機会を設けるよう要求するなど、透明性を確保するべく、あるいは今回の審査基準では戦えないと総務省へ要求すべきだったのでは? と報道陣から問われると、やや言葉に詰まるも、そこは宮川氏が言葉を継いで、前日での主張と同じく、総務省側の誘導で「10MHz幅ずつで申請すれば大丈夫」という流れに乗ったため、と釈明した。また詳細は裁判の過程で明らかにするとした。

 また今回のような流れになるのであれば、まだオークションのほうが正々堂々とやれる、と孫氏は回答。新規参入は不利になるが、今回よりも良い、オークションのほうがいいと思いが変わると語った。

技術では負けていない、と宮川氏

宮川氏

 AXGPはWiMAXに負けていない――今回、宮川氏はそう熱く語った。

 2007年12月、最初の2.5GHz帯の割当では、当時立候補していた4社によるプレゼンが行われた、と当時を振り返った宮川氏は、今回、プレゼンなしで資料だけで審査となったことは、総務省なりのルールではあるものの、あまりにも横着ではないか、とあらためて非難した。そして、世界中の専門家から技術面をきちんと評価してもらえる仕組みを取り入れて欲しいと訴えた。

 UQは以前より20MHz幅での取得に意欲を示しており、追加割当の審査基準が判明した段階でパブリックコメントで意見を出すべきだったのでは? と問われた宮川氏は「それは、我々だってマスコミ向けの言葉と、社内で持っている数字と全部違う」と述べ、公にする情報と真の狙いは違いがある、として、今回は同点での評価の可能性が最後まであったため、一部報道が出てUQへの割当の疑いが強くなるまで、雌伏していた、という。

 同氏は「ウィルコムの再建時、ソフトバンクがXGPを分離したという人もいるが、それは違う。債権者がXGPへの投資には乗れないということで、分離し、ソフトバンクがXGPに投資することになった。ただXGPそのままでは先がないということでAXGPにしてもいいよねと私が総務省と交渉した」とかつてを振り返る。

 ただ、形を変えるなという指導があったため、2007年に30MHz幅は割り当てられたにも関わらず、制限付きのため、AXGPで利用できたのは20MHz幅に限られ、残り10MHzは2015年まで利用できない。「それでもその分、(XGPから継承したのだから)電波利用料は支払ってきた。(総務省関連では)いろんな恨み辛みはあるんですから」とまで宮川氏は率直に述べた。

AXGPへの想い

 WCPのネットワークにもここ数年、かなり注力してきた、育ててきたという宮川氏は「手を抜いたつもりはない。本気でやってきた。良い物ができている。世界で見ても自信がある。だから他社に負けているとは思っていない。技術者としてそう思っている。今回の割当でも既存設備と新規設備の組み合わせでどんなサービスが作れるか、という項目があった。そこで負けているとは思っていない」とする。

 AXGPはまた面でのエリアカバーが足らず、MVNOへの提供をためらっていたと説明。今は3Gとのデュアル端末でなければ、と説明。ただPHSとAXGPの組み合わせは、本来、ウィルコムが目指していた姿であり、PHSのエリアをもう少し広げた上で実現したいと語る。「ウィルコムのユーザーは、Twitterで遊んでいると濃い人たちばかり。一般のユーザーと求めるものと違う。超ハイスピードでPHSの音質で、というものを作ってあげたい。でも今は価格が高いため、チップセットを自分たちで開発したりしている。PHS/AXGPの組み合わせがウィルコム向けの価格で提供できるかな、という光が見えてきたところで、今回、UQに免許が行くことになって、針のむしろ。ウィルコムのメンバーが作るからこそAXGP。だからCTOが(元ウィルコムの)近(義起)さん。ウィルコム=WCPなので我々が切っちゃだめ。ただし今は食わなきゃいけないからソフトバンクで利用しているということ」とした。

「auは横着」

 孫氏が透明性を求める一方、宮川氏は技術力での比較を求めているという。900MHz帯割当のときには「オークション導入や何らかのバトルになると割当が遅くなる。しかしソフトバンクとしてはトラフィックが逼迫しており、どうしても欲しい」ということで、トラブルを避けたい総務省側の作戦に乗って、静かに900MHz帯の割当に取り組んだと吐露する。

 また今後の見方として、総務官僚は、電波の割当という事業者を従わせられる強大な権限を手放したくない、という観点から周波数オークションの導入はかなり厳しいのではないか、との解釈を開陳した。

 「途中でなぜ声を上げなかったと言われても、やれない。現場ならではの呼吸があるわけですよここは。孫社長には全て話していないから、ああやって言いますけど、現場だと『おまえ分かってるよな』と言われることがいっぱいある。今回、ここまで僕が牙を剥いたら、今後、僕が担当している限り、電波はもうとれない。だから僕じゃない人間と交代することになるだろうが、今回だけは無傷で済まないと分かっていても、最後まで(抗議を)やる」とした。なお、今後は行政訴訟と不服申し立てが同時に進められる見込み。

 やっぱり総務省にソフトバンクは嫌われている? という問いには「そうです」と宮川氏は断言。現場のスタッフでは半分程度、話を聞いてもらえるようになってきたが、総務省の上層部には嫌われているとコメント。イー・アクセス買収の件は実はあまり響いておらず、過去の訴訟などの積み重ねが影響しているとのことで、ウィルコムの救済もとくに感謝されていないと語る。ただしウィルコムそのものについては「救済ではなく、ラッキーショット。今となっては利益も出ている。ありがたい」とした。

 auのエリア構築も横着だ、と宮川氏は指摘する。これは3G時代初期に2GHz帯を割当てられてもなかなか基地局を増やさなかった、と捉えていることから発せられた言葉だ。「あと1年待てば我々のネットワークもLTE化できるという状況でも、3Gのトラフィックが逼迫して、手持ちの周波数を3Gに振り分けた。しかしauはずっと寝かせていた帯域でLTEネットワークを構築している。そんな横着ができる(総務省への)パイプがあるということだろう」とも語っていた。

(関口 聖)