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ソフトバンク孫氏、「時代はサービス、ネットワーク競争へ」

 ソフトバンクモバイルは、2013年の冬から2014年の春にかけて発売する新商品の発表会を開催した。スマートフォン3機種と、ディズニー・モバイルのスマートフォン1機種、フィーチャーフォン2機種、モバイルWi-Fiルーター1機種が発表されたほか、「子育てサポート」「スマート体組成計 301SI」など新サービスと関連した機器も披露された。

ソフトバンクモバイル代表取締役社長の孫正義氏

 発表会にはソフトバンクモバイル代表取締役社長の孫正義氏が登壇し、プレゼンテーションを行った。孫氏からはまず、ネットワークに対する取り組みが解説され、iPhoneを含めた自社網の強さを、さまざまな調査結果でアピール。続いて、Androidスマートフォンを中心とした新端末のラインナップと、新サービスが紹介された。その後は質疑応答に臨み、囲み取材にも応じた。質疑応答と囲み取材では、壇上では触れられていない北米のSprintへの取り組みも話題になった。

「キャリアをネットワークの優劣で決める時代になってきた」

 ステージに登壇した孫正義社長は冒頭、ドコモからiPhoneが発売され、3社が揃ったことに言及。さらにドコモの“ツートップ”戦略にも触れて、「数多くの端末を発表する時代から、重点的に絞って端末を出す時代になった。したがって、携帯電話事業者の選択は、ネットワークの優劣で決めるといっても過言ではない。さまざまなサービスが差別化のために重要になる、そんな時代になってきた」と、時代や戦略の移り変わりを指摘する。

“ナンバー1”満載のネットワーク

 一方で、同社の「電波改善宣言」から3年半が経過し、どのように進展したかの報告も行われた。さまざまな場面でアピールされている「スマートフォンパケット接続率」という指標では、同社がナンバー1であることが改めて示され、配信されているアプリを通じて3キャリアの調査を行っていることなどから「ドコモ、auより、彼ら以上に(ネットワークの状況を)知っているのではないか」と豪語してみせた。

 同氏は、プラチナバンドと呼ぶ900MHz帯の導入がこうした「接続率」の向上に寄与したと分析したほか、「スマートフォン通話接続率」でもナンバー1とし、「差が開いてきており、完全に我々が、よりつながるという状況を実現できた」と、スマートフォンにおいて実行環境では優位に立っていると主張する。

 「残存イメージとして、ドコモが1番で、ソフトバンクはつながらないと考えている人が、世の中にたくさんいるのではないか。これは、長い間つながりにく状況があったからで、我々の責任。しかし、実態としては、思いの外改善したのはまぎれもない事実」と孫氏は語り、つながらないというイメージが定着しているソフトバンクと実態は異なるとアピールする。

 同氏はまた、「iPhone 5 通話接続率 No.1」、「850日以上重大事故なし 継続中」などの指標で、ほかのキャリアよりも優れた状況になっている様子を語った。

 「そうはいっても、地方ではつながらないのではないか」と自問してみせる孫氏は、過去には「ソフトバンク、(ホークスの)打線はつながっても電波はつながらない」と揶揄されたこともあると振り返りながら、日本地図で全国のサービスエリアを紹介。3年前との比較でエリアが拡大している様子を示し、日経BPの調査で「スマートフォン総合満足度 No.1」に輝いたことを紹介。さらに高速通信でも先行し、「高速通信ネットワーク満足度 No.1」(インプレスビジネスメディア)という調査結果や、AXGP(同社はTD-LTEと表記)方式で「Android各社販売1位モデル パケット接続率 No.1」という結果などを紹介した。

FDD-LTE方式のLTE、帯域を倍にして「倍速ダブルLTE」

 同社は、iPhoneなどが対応する、FDD-LTE方式で2.1GHz帯の「SoftBank 4G LTE」については、イー・アクセスの買収で1.7GHz帯も加え、「ダブルLTE」と打ち出しているが、それぞれ5MHz幅で下り最大37.5Mbpsとなっているところを、それぞれ10MHz幅に拡大、2.1GHz帯、1.7GHz帯ともに下り最大75Mbpsになることから、これを「倍速ダブルLTE」と紹介。この施策は一部地域ですでに導入されており、実行速度が大幅に向上している様子を示した。

「iPhone 5s/5c」でもナンバー1

「iPhone 5c」を使い、乗降客数の多い順番で全国1000の駅を調査。黄色の837駅でソフトバンクが1番だったという

 孫氏はまた、発売されたばかりの「iPhone 5s」「iPhone 5c」のネットワークについても紹介する。「3社がiPhoneを扱うようになり、ネットワークの性質がフェアに分かるようになった」と語ると、「iPhone 5c」の発売後すぐにドコモ、auのiPhoneも用意し、ソフトバンクの社員を動員して、乗降客数の多い順に、北海道から九州まで全国1000の駅で調査を実施したことを明らかにし、このうち下り平均速度は837駅でソフトバンクが1位、その下り平均速度も12.7Mbpsで、auの7Mbps、ドコモの6Mbpsを大きく上回ったとした。

 孫氏は「嘘を言っている? ぜひ自らチェックしていただきたい。自信を持っている」と、社員を動員した調査結果に自信を見せる。一方で、孫氏はこうした疑問を払拭するかのように、クロス・マーケティングが実施した速度調査、カカクコムのJR山手線の速度調査、MMD研究所の主要ランドマークでの速度調査などの結果を立て続けに紹介。前述の“パケット接続率”の指標でも「iPhone 5s/5c」ではソフトバンクがNo.1だと示し、これらの結果をもって、BCNランキングの「iPhone 5s/5c」販売台数シェア(9月第三週)が44.7%で、3キャリア中で1位になったと結論づけた。

900MHz帯でもLTE、2014年春からFDD-LTE方式は「トリプルLTE」へ

 孫氏はネットワークについてさらに、これまでW-CDMA方式で利用してきた900MHz帯について、LTEでの利用も2014年春より順次開始することを発表、「プラチナバンドLTE」と打ち出すほか、現在はダブルLTEとしている、FDD-LTE方式のサービスである「SoftBank 4G LTE」においては、2.1GHz、1.7GHz(イー・モバイル)、900MHzの3つを利用する「トリプルLTE」として訴求していく方針を明らかにした。

 孫氏はこうしたネットワークや通信速度への取り組みをまとめ、「ネットワークは生きている。ユーザーがいない時にどれぐらいというような、カタログスペックでは意味が無い。我々は実行速度、実行接続率で1番になった」と自信を見せた。

FDD-LTEとTD-LTEの両対応のスマホ「Hybrid 4G LTE」対応端末を拡充

 ネットワークの実績や進化がひと通り紹介された後は、端末の新ラインナップが紹介された。AXGP方式(TD-LTE)の「SoftBank 4G」と、FDD-LTE方式の「SoftBank 4G LTE」の両方に対応する端末を「Hybrid 4G LTE」と呼称し、新モデルのスマホはすべて対応する。

 孫氏からはまた、今回発表のAndroidスマートフォンではフラッグシップモデルとなる「AQUOS PHONE Xx 302SH」について、前モデルよりも小さくなった上で画面サイズが大きくなったことが紹介され「三辺挟額縁で、世界初」とアピール。カメラをかざすだけで使えるリアルタイムの英日翻訳機能「翻訳ファインダー」なども紹介された。

 ステージではここで、ゲストとしてスギちゃん、水沢アリーが登場。アンテナを頭に2種類つけたスギちゃんは「ハイブリッド・スギちゃんだぜぇ〜」とアピールしたほか、水沢アリーは得意(?)という全力疾走を披露、ガニ股でステージ上を走り「ARROWS A 301F」の急速充電機能を(結果的に)アピール。帰国子女でも英語はダメ(フランス語は堪能)という水沢は、ハイブリッドを「種馬」と間違え、サラブレッドも「種馬」と答えるなど荒れ気味のステージとなったが、こちらも英日翻訳の「翻訳ファインダー」機能が宣伝される形となった。

 ステージに戻った孫氏は、「若干、スベっていた?」とスギちゃんにダメ出しするものの、「スベるぐらい、データがスッと流れる!」とフォローしていた。

新機軸のサービス「子育てサポート」「スマート体組成計」

 孫氏からはまた、フィーチャーフォン2機種、モバイルWi-Fiルーター1機種も紹介された。フィーチャーフォンは大幅なモデルチェンジではないものの、ラインナップとして今後も拡充していく方針を示している。

 新サービスについては、ソフトバンクのママ社員220名からなるサークルから企画されたという「子育てサポート」が紹介され、スマートフォンから見られるベビーモニターや、容量無制限の写真アップロード機能なども披露。健康増進サービスとして提供している「ソフトバンク ヘルスケア」では、新たに3G通信機能を備えた「スマート体組成計」を提供することを発表し、体組成計としても高機能な製品であることを解説。「単にハードを売るのではなく、より幸せ、より健康になるサービスとして提供していきたい」と語り、冒頭に示したように、ソフトバンクのネットワークやキャリア自体を差別化するものとして展開していく方針。

三宅宏実選手がスマート体組成計を体験

 ステージではここで2回目のゲストが登場。スギちゃんに加えて、ロンドンオリンピックの女子48kg級 重量挙げ銀メダリストの三宅宏実選手と、三宅義行氏が登場し、女医の友利新氏とともに、スマート体組成計を使った“公開健康診断”に臨んだ。測定を行ったのはスギちゃん、三宅宏実選手、三宅義行氏の3人で、測定後すぐにスマートフォンに結果が表示される仕組みに感心した様子。三宅選手は1日10回の体重測定を行うとのことで、「データを活用したい」と意欲を見せていた。スギちゃんの診断結果は、最近になってジムに通っていることなどが影響したのか、思いの外に良好で、(芸能活動の未来に反して)「明るい未来がありますね」と振られたものの、「芸人としては最悪の結果」と嘆く場面も。

 この後ステージ上では45kgの重量挙げにスギちゃんが挑戦するも、まったく上げられずに降参。代わった三宅宏実選手が鮮やかに引き上げて頭上で静止すると、隣でスギちゃんは垂れ幕が付けられたバーだけのバーベルを引き上げ、垂れ幕で「スマホで健康管理」とアピールしていた。

 ところが孫氏がステージに戻ると、「ちょっと触ってみたい」と言い出し、そのまま重量挙げに挑戦。腰の高さまで持ち上げてしまい、「全く動かない!」と苦しそうにしていたスギちゃんの演技力が図らずも披露される形になった。

世界最高のネットワークを構築、Sprintにも適用

 孫氏は、ひと通りのプレゼンテーションやゲストの登壇を終えて、「世界最高のネットワークができた」と語りだし、「一番つながる、一番スピードも良くなったことが、実証されてきた。ぜひ使ってみて、実感してもらいたい。Androidも続々と強化していく」と意気込みを示す。

 「時代はサービス、ネットワーク競争になる。つい先週もアメリカに行って、戻ってきたばかりだが、強く認識したのは都心でも郊外でも、電波がすぐに切れてしまうということで、速度も遅い。Sprintとしてはこれから1.9GHz、800MHz、2.5GHzのネットワークを構築していくが、我々が(日本で)提供しているFDD-LTEとTD-LTEのハイブリッドのLTEは間違いなく世界最高だと実感した。これをアメリカのSprintにも適用する。倍返し、“倍返しダブルLTE”だ。悔しい思いで作り上げたネットワークを、アメリカでも実現していく。競争によって作り上げたノウハウを世界に羽ばたかせる」と孫氏は語り、Sprint買収後の展開がいよいよ本格化することを示したほか、「シリコンバレーに新しいオフィスを作った。世界の最先端のイノベーションを続々と打ち出していく」とし、アメリカでの展開やその“輸入”も積極的に展開していく方針を明らかにした。

Sprint買収効果は半年〜1年後

 質疑応答の時間には、ドコモがiPhoneの取り扱いを開始したことによる顧客流出などの懸念が聞かれた。孫氏は、「先にiPhoneを独占させていただいた」とした上で、「スマホに適したネットワークがどうあるべきか、いち早く取り組んできた。だから無事故(重大事故)で、パケ詰まり解消、スピードも向上し、圧倒的なノウハウを持つことができた」と先行したメリットを説明。

 ドコモがiPhoneを取り扱うリスクを改めて問われると、「4年前なら壊滅的な打撃だった。3年前ならかなり大変だっただろう」とした上で、現在はつながりやすさや速度で優位にあるとし、「ネットワークが不満で(他社に)流れていくリスクは無くなった。むしろ我々が1番。我々から雪崩を打って逃げていくということは、発売されてみて、そんなにはなかったなぁと確認できたのが今の状況」と分析。

 また、価格面では他社がすぐに追随するような競争環境であるとし、「ネットワークの良さが勝負になる。日本では、3キャリアが拮抗するという状況がこれから考えられる。これからは端末の差ではなく、ネットワークのサービスとコンテンツに、戦いの主軸が移っていく」と改めて指摘した。

 一方、Sprintに傾注する姿勢については、「国内市場はある程度行き渡り、飽和している。日本のユーザーが倍増することはない。ソフトバンクのユーザーが倍増することも難しい。イー・モバイルを合わせて四千数百万人だが、これが倍増するのは難しい。しかし、アメリカのSprintは上位と距離のある3位。上昇の余地、伸びしろがSprintにはある。これを合算して、ソフトバンクとしての業績を伸ばしていくということ。経営的にはこういうことを考えている」と説明。「iPhone 5s/5c」の発売イベントに参加しなかった理由については、「Sprintの取締役会の第1回が開催され、参加できなかった。決して情熱を失ったわけではない」などとした。

 Sprint買収に関しては、その効果がいつ現れるのかについても聞かれた。孫氏は、直接的に経営支配下になってからまだ1カ月程度しか経過していないとした上で、「本格的にやれるのは、これから1〜2年たってからではないか。ネットワークについては、クリアワイアの2.5GHzを使うTD-LTEのネットワーク機器の発注が終わったばかり。アメリカの主要都市は1年、全国規模は2年ぐらいではないか」との見通しを明らかにし、端末や機器の調達で買収効果が出るのも半年〜1年後という見方を示した。

 一方で、端末や機器のメーカーに対しては、「特にAndroidは買っている数が少なかったが、買える台数が一気に日本のレベルを超えた。ドコモとauを合わせた数を超える台数を発注できる。これで交渉力が増した」などとし、現在日本では発売されていないメーカーの端末についても「可能性は十分にある」とした。

 近年のイー・モバイルの端末はSIMロックフリーだったが、ソフトバンクグループに参入してからはSIMロック有りの状態で販売されている。孫氏はこれに対し、「端末について、月月割のような値引きの方針上、続けていく。ドコモ、auのiPhoneはSIMロック。主力の製品はそうなるのでは」との見解を示している。

 なお、Windows PhoneやTizenなどのOSを搭載した、ほかのプラットフォームの端末については、「あまり興味無し」と一蹴した。

プレゼンテーションなど

(太田 亮三)