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KDDI上期決算は「好調」、営業収益は初の2兆円超に

 KDDIは28日、2013年度第2四半期および上期の業績を発表した。

 連結営業収益は昨年同期比18%増の2兆538億円で、2兆円超は同社初。連結営業利益は同50.3%増で過去最高となる3476億円に達し、大幅な増収増益となった。経常利益、当期純利益、EBITDAのいずれについても過去最高を記録し、同社代表取締役社長の田中 孝司氏は会見の中で「好調」という言葉を繰り返した。

モバイル通信料収入が大幅増、ARPUも回復基調

KDDI株式会社 代表取締役社長 田中 孝司氏

 今回の増収増益の背景には、2013年4月の株式公開買い付けによるJ:COMの子会社化で、連結決算上347億円の営業利益の上積みがあったことも影響しているが、それ以上にモバイル通信料収入の営業利益が、前年同期よりも443億円、増加したことが大きい。モバイル通信料収入は2011年度上期に営業収益8062億円を達成した後、2012年度上期には7793億円まで落ち込んだが、今回の2013年度上期は8237億円。まさにV字回復したことになる。

 また、固定通信料収入は営業収益3475億円で前年同期と比べほぼ倍増した。これは、J:COMの連結分1523億円の寄与するところが大きく、これを除いた伸びは10.6%と大幅に後退するものの、KDDIの固定通信(FTTH)もauひかりが黒字転換を果たすなどして前年同期比23.1%増の923億円となっており、「固定通信の収入を大きく牽引」(田中氏)している。

 「au通信ARPU」(データ、音声、割引を含めたARPU)については、2013年第2四半期時点で4180円。内訳はデータ通信ARPUが3180円、音声通信が1920円、割引適用額がマイナス920円となる。au通信ARPUは急速な回復傾向にあるとするが、通期は4060円の見込み。3180円となったデータARPUは「業界最高の伸びを継続中」で、2013年第1四半期時点のNTTドコモの0.8%やソフトバンクの5.5%をはるかに上回る14.0%を記録しているという。

 データARPUの伸びはスマートフォンの普及が大きく貢献しているとし、2012年9月時点で28%だった3Gスマートフォンは1年で42%へ、LTE対応スマートフォンもほぼゼロから22%へと躍進し、さらに2013年度第2四半期は販売しているスマートフォンの98%がLTE対応端末になっていることを報告。「スマートフォン、イコールLTEという状態まで来ている」と述べた。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへ機種変更した後のデータARPUの上昇額は、この2013年第2四半期、2600円に達した。2012年度第2四半期は1800円だったことから、「スマートフォン利用者の裾野拡大の効果と、販売に占めるLTE対応端末率の拡大」により、急激に上昇していることがうかがえる。また、au通信ARPUの改善には、割引額の減少の効果も少なくない。毎月割の設定単価は2013年度第2四半期で1400円で「着実にコントロール」できており、通期(予想)では20%減の1600円を目指す。

 解約率は2013年度第2四半期は0.67%。第1四半期から若干上昇したものの、NTTドコモの0.86%やソフトバンクの0.99%を下回る「業界最低水準」は維持した。純増数は年平均33.4%増のペースで拡大し、2013年度上期は134万台。通期では計230万台になる予想だ。MNPの純増数も24カ月連続でNTTドコモ、ソフトバンクの2社を上回っている。

 「auスマートバリュー」の契約拡大も順調。契約数は540万件、世帯数は286万件で、世帯あたりのau契約数は1.89件となった。将来的には「現実的に見て2.5件ほどまで拡大するのではないか」と同氏は予測している。さらに「auスマートパス」は2013年9月の段階で会員数が799万人に、現時点では800万人を突破。付加価値ARPUを見ると、全体では280円、スマートフォンユーザーに絞ると440円で、さらに「auスマートパス」会員に限定すると750円となることから、「auスマートパス会員数の着実な増加とスマートフォン市場の成長に伴い、さらなる付加価値ARPUの向上が見込まれる」と期待を寄せた。

ネットワーク、料金、サービスなどで強みを見せる

 KDDIでは今後、通期の目標達成や将来的な成長を目指し、「ネットワークの強みをベースに、端末、料金、サービス、サポートという5つの領域すべてにおいて拡充・強化を進めていきたい」とする。ネットワークでは、2014年3月末に実人口カバー率99%となる800MHzのプラチナバンド(最大75Mbps)と、同80%超を目指す2.1GHz帯を中心に競争優位性を打ち出す。

 端末においては、iPhone 5s/5cやiPad Air/mini Retinaディスプレイモデル、および秋冬モデルのAndroid 7機種というラインナップに加え、10月31日にスタートするWiMAX2+とWiMAX、au 4G LTEの3つの通信方式に対応した「トライブリッドモバイルルータ」である「Wi-Fi WALKER WiMAX2+」の販売を推進していく。

 料金面では、「auスマートバリュー」の強化を行う。世帯向けには2013年12月から順次提供事業者を拡大し、新たにCATV事業者5社5局を追加。単身世帯向けには、「Wi-Fi WALKER WiMAX2+」とauスマートフォンを組み合わせた場合にスマートフォン利用料金を割り引く「auスマートバリュー mine」を11月12日に開始することを改めて報告した。

 また、「auスマートパス」のサービス拡大により、従来のアプリ取り放題に限らず、iOS端末の修理補償、旅行会社や百貨店などとの協力によるO2Oビジネスの提携・拡充を実現する。その他、スマートフォンの使い方を学べる参加型イベントの開催、サポートチケットの販売といった形で、「auスマートサポート」のサービスも充実させていく。

 ユーザーに対してだけでなく、株主に対しても優待制度を導入して満足度の向上を図る。TOPIX Coreの30銘柄の平均と大きな差がある個人株主の割合の増加が喫緊の課題と捉え、保有株数と保有期間に応じて5000円から2万円のクーポンを配布し、回線契約の伴うau端末購入・機種変更時に使うことができるようにする。

 増収増益、au通信ARPUの急速な改善、au 4G LTE周辺サービスの拡充による競争力強化、この3つが中心となって「2015年度上期まで毎期連続営業利益2桁成長に向けて順調に進捗している」と語り、同社の業績の好調さを印象づけた。

日沼諭史