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KDDI第3四半期決算は増収増益、スマホ浸透率は44%に

KDDI田中社長

 KDDIは、2013年度第3四半期決算を発表した。4~12月までの累計(連結ベース)で、営業収益が17%増、営業利益が35%増で、増収増益となった。

 会見では、“ドコモ版iPhone”の影響や、ソフトバンクが発表した新料金プランにも触れられており、別記事でご紹介する。

 増収増益の背景としては、通信料収入の貢献が全体の7割を占める。モバイル通信、固定通信、どちらも前年同期を上回った。春商戦に向けて、学生向けキャンペーンなどに注力する方針が示された。通期についても、営業収益・営業利益といった業績、ARPU、純増数で上方修正することが明らかにされた。

スマホ浸透率は44%、契約数も好調に推移

 オペレーションデータを見ると、通信ARPUのうちデータARPUは3230円(前期より50円増)、音声は1890円(前期の第2四半期より30円減)で、割引適用額は930円(前期より10円増)。第4四半期には前年度(2012年度)越えを目指すKDDIだが、ほぼ前年度と同水準(-0.7%)にまでARPUを向上させた。

 auユーザーにおけるスマートフォン浸透率は44%。また全体の27%がLTE対応機種だ。販売台数のうち99.5%がLTE対応機種となった。LTE端末の増加がARPU上昇に寄与している。

 MNP(携帯電話番号ポータビリティ)での純増(転入超過)数は27カ月連続で1位。また通常の契約数における純増件数で見るとソフトバンクが228万件、auが191万件、NTTドコモが65万件となるが、これらの件数から通信モジュールの契約件数を除くと、auは184万件、ソフトバンクは167万件、ドコモは51万件で、田中社長は「業界ナンバーワン」と説明した。このほか解約率は0.7%となった。

auスマートバリューの浸透率は18%

 固定回線とセットにすることで割引が適用される「auスマートバリュー」の浸透率(au契約数のうちの利用数)は18%になった。これは第2四半期と比べて2%の増加で、今年度は2%ずつの増加を維持している。家族(世帯)の中で、どの程度、auユーザーがいるかという指標である「世帯内au契約数」(au契約数/世帯数)は1.9件。

 新規契約のうち、auスマートバリューが占める割合について、田中氏は「手元に確かな数字はないが、3割程度ではないか」とコメント。なお、2013年8月に提携CATVが200局を突破した際には新規契約のうち36%がauスマートバリューを契約することが明らかにされていた。田中氏のコメントから、その割合に大きな変化はないようだ。

 またWiMAX 2+対応ルーターとスマートフォンのセットによる割引「auスマートバリュー mine」については、「徐々に(件数が)上がってきている。もともとは一人暮らしの女性向けだが、現在は男性ユーザーが多い」とのこと。春商戦での盛り上がりが期待されるところだが、「現実的にはそれなりの寄与ではないか」とした。

スマホの販売が鈍化?「8割目指す」

 質疑応答で、30日に調査会社のMM総研から発表されたレポートをもとに、スマートフォンの売れ行きが鈍化していると感じているのか、と問われた田中氏は「我々としてはスマホの浸透率を80%くらいまで持っていきたい。マーケットとしては、いわゆるアーリーマジョリティからレイトマジョリティがスマートフォンへの移行になってきたところだと思う。ここは一般的に(移行ペースの)スローダウンが起こるとみている」とした。

 囲み取材で、あらためて問われた田中氏は「スマホシフトの鈍化がもう少し後になるかなと思ったら、そうでもなかった。第4四半期は、第3四半期より出るかなと思う」と述べ、今年度末に向けて、回復するとの見方を示す。

今後の成長、対策はマルチデバイス

 少なくともこれまでのような急激なスマートフォンの伸びではない市場状況になる中で、今期以降、どのように成長を遂げていくのか。田中氏は「マルチデバイス」を挙げる。

 既にキャンペーンという形で2013年秋から、そして今春からは正式なサービスとして「データシェア」を提供するauだが、ユーザーが複数のデバイスを活用しやすい環境として「データシェア」を位置付ける。

 「スマートフォンを使いこなす人が新たなデバイスをさらに求めるのは事実。5インチ以下のスマートフォンを使っていても大画面なデバイスが欲しくなる。一部の層にはフィーチャーフォンとタブレットという組み合わせもある」と述べ、現在提供するデータシェアのキャンペーンも「結構使ってもらっている」と、手応えを感じている様子。

「そんなにたくさん売れるとは思っていません」

 タブレットについても「日本ではタブレットは売れないじゃないかと思っていたが、最近はそうでもないかと明るくなっている」と笑顔を見せた。ファブレット(スマートフォンとタブレットの中間にあたる端末)として投入した「Xperia Ultra Z」は「割と好評」と評価。ただ、「もともと、そんなにたくさん売れるとは、当然思っていませんから(笑)」とファブレット市場全体については大きなものではないとの見方を示しつつ、「Xperia Z Ultra」はそのなかでも好調なスタートを切ったとした。

適切なキャッシュバックで

 タブレットが売れてきた、あるいはファブレットが出足好調とした田中氏に対し、囲み取材では「スマートフォンとの抱き合わせ販売はないのか?」という問いも上がったが、「さすがにスマホとタブレットの抱き合わせはないです」と回答。

 さらに春商戦に向けてキャッシュバックを積みまして、販売数を増やすかどうか問われると、22日の春モデル発表会で触れた「適切なキャッシュバック」という言い回しと再び使い、「そこは適切なキャッシュバック。(どれくらいが適切? という問いに)わりと(今は)気持ちいいなと思っている。大盤振る舞いな店があるかもしれないが、平均すると“適切”だ」とコメントした。

4Gについて

 1月23日に総務省で開催された、次世代の通信規格、いわゆる4Gに関するヒアリングに出席した田中氏は、周波数の割当について「どういう割り当てになるか、まだ決まった話ではない」としつつ、3.5GHz帯の120MHz幅とされている割当用周波数について、「40MHz幅ずつ、3枠で、という話があった。すると(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイルの)4社いるのだから、そのような開設指針になると1社が漏れることになる。ヒアリングの場では、ソフトバンクの孫さん(孫正義氏)が、イー・モバイルのエリック・ガン氏に『ちょっと後(の順番)にしたらどうか』と言っていたので、そうなるのではないかと思う」とした。

 120MHz幅を30×4社という形で分け合う、というアイデアも出そうだが、田中氏は現在の4G用規格(LTE-Advanced)では、スペック上、20MHz幅の倍数が適している、と指摘。30MHz幅になると、キャリアアグリゲーション(複数の周波数をひとまとめに使う技術)を用いる形となるものの、40MHz幅と比べて非効率であり、40×3社が合理的であることから「(4社に割り当てるのは)なかなか難しい」(田中氏)ことになりそうだ。

VoLTEは「まだ」

 LTEネットワーク上でのIP電話、VoLTE(ボルテ)について田中氏は、「今後導入することになるが、現在は考えている状況」と回答した。

 春モデル発表会でも同様の回答で、囲み取材でも「(Skype auという)禁断のアプリが終わったが」という問いにも、VoLTEには触れず、「いろいろ考えたが、お時間をいただきたい」と述べるに留まった。

販売店での“強制オプション”、クレームはなくなった

 質疑応答で、auの携帯電話を購入する際、いくつかのサービスを契約することが必須であるかのように案内され、ユーザーにとっては“強制オプション”になっていることについて、最新状況を問われた田中氏は「そういった指摘もあって、KDDIとしては3つの対策を実施した」と回答。

 1つ目は、ワンクリックでサービスを解約(退会)できるようにしたこと。2つ目はユーザーからの相談に応対する専用窓口を設けたこと、3つ目は店頭に掲示する案内として「オプションがなくても端末購入(契約)ができる」という置物を用意したことという。

ウェアラブルデバイスはまだこれから

 1月に開催された米国の展示会「International CES 2014」では数多くのウェアラブルデバイスが出展される中、田中氏は先端ユーザーに利用が留まり、一般層にはまだリーチしない、との見方を示す。

 ただし、あれこれとチャレンジは進めるとして、発売済の「GALAXY Gear」もその一環と説明。「ああなればいい、こうすればいいとチャレンジしていきたい。“これが当たる”と確固たる信念のところまではきていない。いろんな信念で進めたい」とした。

関口 聖