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NVIDIA、国内で「Tegra K1」を披露

 エヌビディア ジャパン(NVIDIA)は、モバイル向けチップ「Tegra K1」に関する記者向けの説明会を開催した。開発された背景や概要が語られたほか、試作機でのデモンストレーションも披露された。

「Tegra K1」

 NVIDIAの「Tegra K1」は、1月初旬に米国で開催された「2014 International CES」で発表されたもの。複数の機能を1チップに搭載するSoC(System-On-a-Chip)として、同社の「Tegra 4」の後継にあたるもので、グラフィックス処理や物理演算処理などに効果を発揮するGPUを、消費電力を抑えながら大きく強化したのが特徴。「Tegra K1」を搭載するモバイル端末は2014年上半期に登場すると案内されている。

 「Tegra K1」にはGPU部分とCPU部分の大きく2つの要素がある。GPU部分は、デスクトップパソコン向けグラフィックスカードに搭載されるGPU(GK104)と同じ世代であるKeplerアーキテクチャを採用したことで、「Unreal Engine 4」やCUDA 6.0を含む、最新のグラフィックス処理の手法や機能に対応でき、簡単にモバイル端末向けゲームなどにも適用できるようになるとする。なお、名称が「Tegra 5」ではなく「Tegra K1」となったのは、Keplerアーキテクチャの採用に由来するという。

 パソコン向けや据置型ゲーム機向けのゲームタイトルでは、大規模な開発による大作を、グルーバルに、マルチプラットフォームで展開する流れが加速しており、パソコンと同じアーキテクチャを利用できる「Tegra K1」の環境は、こうしたゲーム業界の流れを支援するものと位置付けられている。また、AAAタイトルと呼ばれるようなビッグタイトルが、モバイル向けにも期間を置かずに移植されることも可能になるとしている。

パソコン向けGPUの進化とTegraの進化
パソコン向けGPUからは一世代遅れていたTegraのアーキテクチャを飛躍させた
エピックの「Unreal Engine 4」が対応できることも大きな特徴
「Unreal Engine 3」と比較すると短時間でモバイルに対応
最新のグラフィックス処理を実現できる
デスクトップパソコン用のトップエンドGPUと基本APIは同じ
据置型ゲーム機との比較
モバイルではAppleのA7と比較。「Unreal Engine 4」はTegra K1のみが対応できている状況
エヌビディア ジャパン マーケティング本部 テクニカルマーケティングエンジニアの矢戸知得氏
ゲストとして登壇したエピック・ゲームズ・ジャパン サポート・マネージャーの下田純也氏

64bit版の詳細は今後案内、オートモーティブ分野にも注力

 CPU部分では、32bit版と64bit版がラインナップされる予定。64bit版は32bit版とピン互換で、CPUにNVIDIAが独自に開発するDenverコアを2.5GHz駆動のデュアルコアとして搭載するなどの違いがある。利用目的や消費電力などの詳細は改めて案内される予定。グルーバル市場においては、64bit版は2014年の下半期に登場すると案内されている。

64bit版「Tegra K1」は、CPUにARMコアではなくNVIDIA独自開発のDenverコアを搭載する

 NVIDIAは、自動車関連のオートモーティブ分野にも注力しており、これまでNVIDIAがワークステーションなどで支援してきたデザインや設計、シミュレーションなどでの支援に加えて、車載コンピューターとしてTegraを提供し、車内にて情報処理や表示を行う取り組みも行われている。実際にいくつかの市販車には「Tegra」シリーズが搭載されているほか、今後活発化する自動運転分野では、カメラ処理を含めた、さらなる情報処理速度が求められるとしており、最新のTegraシリーズを投入していく方針。

開発段階での支援に加えて、車載機器としても取り組んでいる
自動運転(ADAS)ではさらなる処理性能も求められるという

 30日の説明会では、実機をイメージした端末上でデモンストレーションも行われた。端末は「Tegra Note 7」の筐体をベースに「Tegra K1」を搭載し、ディスプレイもフルHDに強化された仕様になっていた。

 デモは、さまざまな質感や光の効果を確認できるリビングルームを表示するデモ、リアルな男性の顔を表示し、リアルタイムに演算された効果を確認できるデモ、光の透過や反射と物理演算を組み合わせて表示するデモ、パソコン向けゲーム「Trine 2」を「Tegra K1」向けに移植したゲームのデモの、4種類が披露された。革の質感やカーペットの毛羽立ちなどがリアルに描かれているほか、透明な支柱で光が屈折する様子や破砕時に光の反射なども再現。人の顔を表示したデモでは、肌の表面や耳の薄い部分で光が透過するなどの処理により、リアルな質感を再現している様子が確認できた。

デモで用意された試作機。「Tegra Note 7」の筐体をベースに「Tegra K1」を搭載し、ディスプレイもフルHDに強化されている
従来のグラフィックス処理でリビングルームを描画したイメージ
「Unreal Engine 4」でリビングルームを描画
Faceworksデモ。肌表面の質感が非常にリアル
Faceworksデモのワイヤーフレーム
従来のグラフィックス処理で表示。瞳のほか、肌の質感や光の処理も後退する
肌表面や耳に透過の効果が適用されている
透過の効果をオフにしたところ。耳が透けなくなったほか、肌表面の質感に厚みや温かみが無くなった
透明な円柱で光が屈折する様子。影や反射もリアルタイムで演算されている
銃弾が当たり破砕した瞬間。物理演算で飛び散るほか、砕け散ったパーツによる光の反射(床や壁にも反映されている)や透過もリアルタイムで演算される

 「Tegra K1」はまた、モバイル向けとして最大5Wという徹底した省電力を実現したのも特徴で、アーキテクチャレベルでの電力削減、ASICレベルでの最適化、リーク電流が少ない製造プロセスの採用、フレームバッファの圧縮などでメモリなど「Tegra K1」の外にあるチップへのアクセスを低減し省電力を図る仕組み、ローレベルでの最適化といった仕組みを積み重ねて、最大5Wという低消費電力を実現したと説明された。

 このほか、ゲーム関連の取り組みでは、「Tegra 4」搭載のAndroid端末で、NVIDIAのGPUを搭載したパソコンのリモートプレイも行える「SHIELD」についても、最新のTegraを搭載していくとう当初の方針に変わりはないとしており、Tegra K1バージョンが登場する可能性があることを示唆している。

「Tegra K1」の概要。 ※図で「ビデオエンコーダ」が2つあるのは間違いで、ひとつは「ビデオデコーダ」とのこと
Tegra 4と比較して低消費電力で高性能
Tegra K1の構成はSMXが1基で、デスクトップGPUの最小構成を切り出したようなイメージ。図ではGK110が用いられているが、最も構成が近いのはGK104とのこと
外部にあるメモリへのアクセスを低減し電力削減を行う
フレームバッファの技術も適用
ローレベルでも最適化を実現し、最終的に5Wの駆動を可能にする。実際には5Wに達することは稀という

太田 亮三