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「3.5GHz帯はダイヤモンドバンド」、KDDIが取り組む新技術

 スマートフォンの拡がりで、通信量(トラフィック)が増え続ける中、快適に通信できるよう品質をいかに維持、向上させるのか。携帯各社が取り組みを続けるなか、KDDIは次世代の通信技術、および、次世代技術向けの周波数帯である3.5GHz帯を活用するための技術を報道関係者向けに公開した。

 説明を行ったKDDI常勤顧問の渡辺文夫氏は、“電波が飛ばない”とされる3.5GHz帯の特性を活かして、都市部の繁華街など通信量がごく限られたエリアのトラフィックを処理するために活かすという方針を示し、「3.5GHz帯は小粒で輝くダイヤモンド。800MHz帯のプラチナバンドに組み合わせる。プラチナリングに小さなダイヤをつける、というのが我々の理想。」と紹介した。

増え続けるトラフィック

KDDIの渡辺氏

 スマートフォン普及期と言われる昨今、実際にはどの程度スマートフォンが増えたのか。auの場合、2010年9月にはほとんどいなかったスマートフォンユーザーが1年後には9%、2年後には28%、そして3年後の2013年9月には全体の42%に達し、1500万契約に迫る勢いだ。

 フィーチャーフォンよりも通信量が10倍以上多いとされるスマートフォンだが、すでにauの場合、全トラフィックのうち98%がスマートフォン。今後も伸び続け、KDDIの予測では、2016年度には、2011年度の16倍に増加すると予測されている。

 KDDIが示した資料によれば、東京都の池袋周辺では、深夜帯になるとかなり通信量が減るものの、日中は膨大な通信が行われ、駅前などごく限られたエリアの通信量が飛び抜けて多くなる。こうした状況に対して、携帯電話事業者は一般的に、より細かな間隔、あるいはごくわずかなエリアしかカバーしない形で基地局を設置したり、新しい周波数を用いたりする。また新たな通信技術を導入して高速にすることで、トラフィックをどんどんさばく。

16年度には11年度の16倍に
夜間の池袋素湯編
昼過ぎにはトラフィックが急増
局所への対策が必要

 KDDIでは近日、次世代の通信技術である「LTE-Advanced(LTE-A)」を導入する方針。また、年内にも3.5GHz帯が割り当てられる見通しで、「割り当てから1年半程度で商用サービスを開始したい」(渡辺氏)とするKDDIでは、3.5GHz帯をいかに活用するか、という観点で技術開発を進めてきた。

3.5GHz帯は使いにくい?

 これまでの携帯電話は、プラチナバンドとも称される700〜900MHz帯、1.5GHz帯や2GHz帯、事業者によっては1.7GHz帯を使っている。この数字が大きくなるほど、一般的に「直進性が高まる」「建物内に届きにくくなる」といった性質があるとされる。今後割り当てられる3.5GHz帯は、エリアを広く構築したい場合、これまでよりデメリットが多い周波数帯と言える。

次世代向けに割り当てられる予定の3.5GHz帯
高い周波数の特性
マンハッタンモデルと呼ばれるシミュレーション。3.5GHz帯の基地局を設置すると、そこに面する通り(ストリート)に電波は届くが、角を曲がると電波が届きにくい
直進性が高い3.5GHz帯

 だが、こうした性質を活かして、「ごく限られたエリア」で3.5GHz帯を使おう、というのがKDDIの狙い。先述したように、莫大な通信量となる場所は、繁華街のごく一部となり、そうした場所を3.5GHz帯の小型基地局でカバーすればいい、という考え。周波数が高いほど、アンテナは小さくできるため、基地局装置の小型化も期待できる。

 こうした考えについて渡辺氏は「プラチナバンドとダイヤモンドバンドの組み合わせは、シャープにスポットを使える」と述べて、有効な手段と自信を見せる。しかし、
「3.5GHz帯で小さなエリア(小セル)を展開する」というのは、実際やろうとすると、そう簡単ではないのだという。

C/U分離技術とは

 ユーザーの手にする携帯電話は、移動すると、接続する基地局が切り替わる。これはハンドオーバーと呼ばれる仕組みで、移動しながらWebブラウジングしたり、通話したりできるのは、こうした仕組みがあるからこそ。

C/U分離技術のデモ

 通常、携帯電話と基地局では、ユーザーデータ(User plane)と制御信号(Control plane)と呼ばれるデータをやり取りしている。ユーザーデータがWebサイトや動画といった、ユーザーが使うデータのこと。ハンドオーバーを行うと、ユーザーデータ(U)と制御信号(C)がそれまで繋がっていた基地局から、次の基地局へと切り替えられる。

 ただ、3.5GHz帯を使った小さなエリアがどんどん増えると、ハンドオーバーを行う回数も劇的に増える。つまりユーザーデータ(U)と制御信号(C)を切り替える回数がどんどん増えてしまい、切り換えのたびに瞬断してスループット(通信速度)が落ちてしまう。

C/U分離技術のシステム構成
2種類の基地局を用いる
敷地内に設置された3.5GHz帯の基地局

 そこで今回、KDDIでは「C/U分離技術」と呼ばれる技術を検証し、その有効性を確認したという。この技術は、3GPPの標準になる予定(Release12)で、ほぼその仕様に沿った形で実験が行われた。この技術では、ユーザーが広いエリアの基地局(マクロセル)から3.5GHz帯の小さなエリア(小セル)に入った場合、通常はユーザーデータと制御信号の両方が切り替わるところ、ユーザーデータのみ切り替えて、制御信号はマクロセルとのやり取りを続ける、というもの。制御信号の切り換えがなくなり、瞬断する回数を減らして通信品質の劣化を防ぐ。この技術は「制御信号はこの周波数を使う」というようにあらかじめ決めておくことで、小セルに入っても切り替えないようにしているとのこと。複数の周波数帯をまとめて使うLTE-Aの技術の1つ「キャリアアグリゲーション(CA)と直観的には同等の考え方で、もう一工夫している」(渡辺氏)という考え方だという。

 会場で披露されたデモンストレーションでは、実験が行われている場所を自動車で走行しつつ、C/U分離技術をONにして映像を受信する端末、OFFにして映像を受信する端末を並べて、その有効度を確認できるようにしていた。走行した場所の一部は、ごく短い距離で基地局が切り替わる形となっており、KDDIが「ピンポンハンドオーバー」と呼ぶ状況にして、C/U分離技術の効果がわかるようになっていた。この技術は2014年9月に標準化される見込み。

デモの概要
C/U分離技術が適用されているほうのグラフ。青はユーザーデータ、黄色が制御信号。両方をあわせたものが緑
こちらは適用されていないほうのグラフ
適用されていないほうでの映像。うまく受信できていればクリアな品質
劣化すると映像にも影響する。今回は劣化をわかりやすく示すため、映像の乱れが強調されている

3.5GHz帯の基地局を配置するための新技術

 C/U分離技術は、基地局がどんどん増えることを受けて、通信品質を劣化させないようにする技術だ。KDDIでは3.5GHz帯の基地局をスピーディに配置できるよう、シミュレーションツールも開発した。ただし実際に街中で3.5GHz帯の電波を発射してみなければ、その特性が掴めないこともある。

電波の見える化ツール
電波の見える化ツール
計測装置のアンテナユニット
全方向からの電波をキャッチ
計測装置。手押しできる
タブレットで状況を確認
タブレットで表示される情報の一例

 今回は、特性を把握して今後のシステム開発に活かすための装置も披露された。この装置は、筒の中に複数のアンテナを装備し、あわせてGPSで位置情報を記録する機能、複数のカメラで風景を残す機能を備える。

 実験局から3.5GHz帯の電波が発射されると、この装置を使うことで、ビルなどに反射して電波が強くなったり弱くなったりする様子を把握できる。いわば「電波の見える化」をする装置とのことで、ここで電波の状況、特性がわかれば、今後、反射する電波を複数のアンテナでやり取りして、データ通信速度を向上させる「MIMO(Multi Input Mutlt Output)」の進化版の実現に繋がるという。

MIMOの効果を検証する
周波数が高いとアンテナが小型になり、搭載しやすくなる
今回は8本のアンテナを用意した基地局装置

高精細動画の圧縮技術も

4K映像を映し出す4Kモニター

 このほか、いわゆる4Kサイズの動画(3840×2160ピクセル)の動画をやり取りしやすくする、新たな伝送システムも披露された。

 コーデックにH.265/HEVCを採用し、ソフトウェアベースのリアルタイムデコーダーとKDDI独自の高画質技術を用いて、高精細ながら12Mbpsというビットレートに抑えている。現在の地上デジタル放送(MPEG-2)のビットレートは20Mbps、そしてARIBで示された4K放送のビットレートは30Mbpsとのことで、KDDI側の技術では品質を維持しつつ、ビットレートを抑えたものとなっている。

概要
映像を受信していた端末装置

(関口 聖)