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KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスが合同会見

NTTの規制緩和論に反対

 KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの3社を含む、65の事業者とCATV団体(約360社加盟)は2日、総務大臣に対して連名で要望書を提出した。

要望書の概要
65の事業者名を連ねた

 同日、3社は合同で記者会見を開催。テーマは、総務省で進められる競争政策の見直しに関するもの。約2カ月前、一部報道ではNTTグループのセット割が解禁される可能性が報じられ、各社ではそれに反発する姿勢をこれまでも示してきたが、今回は要望書を通じて公正な議論を求めている。2月下旬にスタートした総務省での有識者会合では、2020年代の日本が世界トップレベルのICT環境になるためには、何が必要か、というテーマが掲げられている。

 「具体的な議論が進む前に方向性が決まっているとすれば極めて問題。規制が緩和されればNTTグループの実質的な再統合、独占回帰が図られることになる」(リリースより)。

 本誌では既に各社の主張を紹介する記事を掲載(ドコモ編/KDDI編/ソフトバンク編/イー・アクセス編)。ドコモはセット割は本題ではないものの、電気通信事業法第30条第3項で定められた禁止行為規制の撤廃を求めている。一方、競合他社は撤廃は行きすぎと反論している。

 会見では、KDDI渉外・広報本部長の藤田元氏が、国内の通信市場はNTTグループの分離・分割が議論されてもなお実現してこなかったと指摘した上で、電気通信事業法第30条第3項で「市場支配力のある事業者は○○してはいけない」と定めた事前行為規制などのルールがあったからこそ、これまで公正な競争環境を維持してきたと説明。もし、NTTグループへの規制がなくなれば、排他的な連携サービスが実現できるようになり、再びNTTグループの力が強化され、競合他社は太刀打ちできなくなると語る。

日本の通信業界は、NTTの再編議論とともにあった、という側面も

 もしNTTグループのセット割が実現すると、短期的には、NTTのサービスを使うユーザーにとっては便利でおトクなサービスになるが、長期的に見ると、ユーザーはNTTのサービスから移行しづらくなり、競合他社が成長する余地がなくなる、あるいはNTTとの競争に勝てず、サービスを取り止めてしまうといった状況が想像でき、競争を促進するどころか、通信サービスの選択肢がなくなる、という主張だ。

ポジティブリストにも慎重な議論を

 電気通信事業法では、一定のシェアを持つ事業者に対して「やってはいけないこと」を定めている。これが事前規制、あるいは非対称規制と呼ばれるものだ。この規制は、「一定期間、継続して市場シェアが40%以上、なおかつ特段の事情がない場合」あるいは「一定期間、市場シェアが25%〜40%で、シェア1位で市場支配力が強い企業」あるいは「シェアは2位以下でも1位との差が小さく市場支配力があると見られる」場合、対象になる。

第30条第3項で定められた禁止行為

電気通信事業法第30条 第3項で定められている禁止行為

  • 他社設備との接続で知り得た他社の情報を(営業活動など)目的外に使ったり、提供すること。
  • 特定の電気通信事業者を不当に優先的な扱いをして利益を与えたり、逆に不当に不利な扱いをして不利益を与えないこと。
  • 販売代理店やメーカー、コンテンツプロバイダーなどに対して、不当に干渉したり、縛りをかけたりすること。
禁止行為を見直すとNTTグループの結びつきが強まる、と危惧

 ドコモでは、コンテンツプロバイダーやMVNOに対して、提携する事業者とは深い協力関係を構築して、柔軟なサービス提供をしたい、としており、そのために第30条第3項の撤廃を求めている。ただし、これが撤廃されると、NTT東西とのセット割も実現できる素地が整う。そこで「ここまでならやっていい」というポジティブリストの策定も今後の議論にのぼる可能性がある。ソフトバンクモバイル渉外本部本部長の徳永 順二氏は、「もしドコモと特定のWebサービスが提携して、そのサービスだけが優遇されるという形になった場合、PC向けサービスなどでNTT東西のネットワークを使いやすくなるという形も想定され、ドコモに対する規制緩和が結果的に東西にも及ぶ可能性がある。慎重に検討会で議論してほしい」とした。

NTTグループ外との連携についても慎重な議論を要望
今もNTTの支配力は強大と主張
NTTグループの現状

競合各社が揃って要望

 今回の要望書では、総務省に対して「NTTグループのセット割を強調した報道に引きずられず、公平な議論をして欲しい」と求めている。「NTTグループのセット割」に注目が集まり、まるで既成事実のように扱われることに対して異議を唱え、牽制した格好だ。

左からイー・アクセスの大橋氏、ソフトバンクモバイルの徳永氏、KDDIの藤田氏

 その一方で各社が求める競争の在り方や落としどころ、あるいは2020年代にどういったサービスが想定され、そのために何が必要なのか、といったところまでは踏み込んでいない。たとえばAmazonやグーグル、アップル、Facebookといった、いわゆるOTTと呼ばれる事業者との競争、協力関係についても触れていない。また携帯業界が競争の結果、ドコモ、au、ソフトバンクが大手として生き残り、料金も横並びという協調的寡占状態になったことについても論点としては今回、挙げられていない。

 これは、普段、それぞれ競い合っている各社が「対NTT」の旗印のもとに集えるよう大枠でのまとまりとしての発表となったため。個々の立場からすると、細部では合意できないところが多くあるものの、NTTの独占回帰に繋がりかねない動きに対して、ひとまず同調できる部分があれば力を合わせる、ということになったのだという。

 4月8日から3回に分けて、総務省の有識者会合「2020-ICT基盤政策特別部会」において、関係各社へのヒアリングが行われる予定となっており、そのヒアリングでそれぞれの主張が披露される見通し。

(関口 聖)