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スマホのクーリング・オフはどうなる? 各社、慎重な議論求める

 スマートフォンやFTTH(個人宅向け光ファイバー回線)など通信サービスでも、契約から一定期間内であれば無条件で解約できる、いわゆるクーリング・オフを導入すべきかどうか――総務省でそんな議論が進んでいる。

 4月17日、総務省で「ICTサービス安心・安全研究会」の作業部会である、「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」第3回が開催された。同部会では、クーリング・オフのほか、店頭での販売手法や各社の料金体系について検討される見通しで、17日には通信各社に対するヒアリングが行われた。本稿では同会合の資料をもとに、クーリング・オフに関する意見など通信各社の主張を紹介しよう。

クーリング・オフ規制化に慎重な議論求める

 今回、ヒアリングで意見を述べた事業者は、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセス。またMVNO委員会(テレコムサービス協会)や携帯電話の販売代理店業を営むティーガイアも参加している。

 まず通信各社では、ユーザーから寄せられるクレームや相談、意見に触れる。たとえば固定回線のNTT東日本は、苦情などの約9割が申込前・申込から1週間の間に集中すると説明。またソフトバンクモバイルでは、消費生活センターといった機関の斡旋を受けた苦情件数は減少傾向にあり、過去4年間(2010年〜2013年)で1/4になったとする。NTTドコモのユーザーサポート窓口(お客様相談室)への苦情・相談の件数は2013年度第2四半期から徐々に減少する傾向にあるという。

 各社は、ユーザーサポートの窓口を通じて、自主的な取り組みを実施していることを紹介している。そして俎上に上るクーリング・オフ制度を通信サービスにも適用するかどうか、という論点については慎重な議論を求める声が多い。各社では自主的な取り組みとしてユーザーからの苦情・相談に応じており、画一的で無制限なクーリング・オフ制度の導入には配慮を求める点を挙げている。またイー・アクセスは各社がお試しサービスを導入するなど、民間での取り組みもまだ実施できる余地があるとしている。

NTT東日本

 開通工事コストや現状復帰コスト等負担のあり方や、家電量販店などの販売(インバウンド販売)を対象とした場合に悪用を助長させない仕組み作りを考慮して欲しい。

NTT西日本

 クーリング・オフの起算点・期間が8日間になった場合、クーリング・オフ期間内の開通工事を控えることになって早期に使いたい要望に沿えなくなる可能性がある。

 光ファイバー工事の費用・原状復帰費用などが回収できなくなる。

 店頭販売は「不意打ち性」が高いとは言いがたいと考える。

 法人ユーザーは情報システムの一部で比較検討して導入するため十分、検討・熟慮した上での取引と考える。

NTTドコモ

 苦情や相談があれば個別に問題解決を図っている。契約後の不満を減らせるよう事前にサービスエリアを確認できる仕組みも検討している。クーリング・オフ導入の影響などを慎重に検討して欲しい。

KDDI

 電気通信事業法にクーリング・オフ制度を導入する場合、特定商取引法とのバランスを考慮した慎重な検討を求める。特に起算日は書面受領日として欲しい。もし役務提供開始日が起算日になると無条件で契約解除が可能になり、FTTHでの工事費用・原状復帰費用など影響が大きい。

 店舗販売・通信販売は十分、サービスや契約内容を理解していただく時間がある。特商法でもそれらの販売形態でクーリング・オフは適用されない。通信サービスも同じ扱いにして欲しい。

ソフトバンクモバイル

 クーリング・オフ相当の検討を行う場合は、問題の性質に対応した最適解を採用すべき(店頭販売と電話・訪問販売の違い)。

 一般消費者と法人は区分することが適当。

 全てのユーザーへの一律的なルール化は大多数のユーザーに副作用をおよぼす懸念がある。たとえば受付・処理の長時間、商品引き渡しや工事時期遅れなどサービスのグレードダウン、ルールの悪用。ルール設計には十分は配慮が必要。

イー・アクセス

 過度なクーリング・オフの適用は利便性・コストの観点から全ユーザーに影響がおよぶ可能性がある。不意打ち性の高い訪問販売、電話勧誘、あるいはユーザーの種別(個人/法人)などを考慮し、特商法との整合性を図りつつ慎重な検討が適当ではないか。対面販売では、各社が創意工夫したお試しサービスを導入することが効果的ではないか。

 販売店のティーガイアも説明事項が増えて店頭での説明時間が長くなるほか、書面に同意のサインをもらっても「説明を受けていない」と苦情が発生して店舗の説明方法に責任が集中する可能性を懸念。また仮に携帯電話が返品されても再販できず、代理店としては経営に影響するとの見方も示している。

 MVNO委員会も、特商法におけるクーリング・オフは訪問販売や電話勧誘など不意打ちでユーザーに契約させた場合はキャンセルを受け付けるべき、としつつ、通信販売や店頭販売などユーザーが自ら購入するケースについては、試用期間としてクーリング・オフが利用されると、ルーターなどの端末を再利用できずにコスト面から事業へ影響するほか、悪用して不正利用が繰り返される可能性もリスクに挙げている。

消費者保護の制度拡充を求める声も

 全国消費生活相談員協会は、通信サービスでも電話での勧誘、訪問販売で契約した場合は、特商法と同等の消費者保護が必要と指摘する。

 また用語がわかりづらいこと、回線利用料のみ説明を受けたが帰宅後に確認すると端末の割賦代金が含まれていることに気付いて解約したいなど、消費者から寄せられた相談を紹介しつつ、帰宅してからエリア外であることに気付くといったトラブルを避けるために試用できる機会が必要とする。

 通信各社に対しては、代理店任せの対応にせず本社で対応すること、軽度の知的障害者や発達障害者が騙されて名義貸しを行っているケースがあり複数の契約を背負わされて支払えなくなることから必要と思われる数だけ販売することなどを要望。また、販売代理店が奨励金を獲得するためにオプションを付けるといった行為は不透明でやめるよう求めている。

(関口 聖)