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MVNOのあり方、SIMロック、周波数割当ルールなどで各社が主張

「2020-ICT基盤政策特別部会」ヒアリング第3回

 22日、総務省で「2020-ICT基盤政策特別部会」の基本政策委員会第5回会合が開催された。4月8日、15日に続いて実施された、事業者および業界団体へのヒアリングは今回で最後。地方自治体における通信の活用例として徳島県の事例が紹介されたほか、イー・アクセス、CATV、MVNO、そして通信機器メーカーが意見を述べる場となった。

MVNOに関する意見が多く

 各社からの意見によって、明らかになってきた論点は「MVNOのあり方とMNO(既存キャリア)への規制)」および「SIMロックの扱い」、「NTTへの規制」「ブロードバンドのユニバーサルサービス化」といったあたり。特に今回は、日本インターネットサービスプロバイダー協会(JAIPA)とテレコムサービス協会(テレサ協)のMVNO委員会と、MVNO側の意見を主張する事業者が2団体いたことで、MVNOに関する意見が多く出た。

 たとえばJAIPAは今回、全ての携帯各社(MNO)に対してMVNOへネットワークを開放するよう要望し、あわせて法制度の改正も求めている。さらにSIMロックフリーを推進するよう希望した。これはテレサ協側も同じ求めを出している。一方、通信機器メーカーの団体である情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は「既存の販売制度のままでいい」と主張。SIMロックについては各キャリアの取り組みが既にあり、ユーザーの選択に任せるべきと、現状維持の考えを示した。これに対してイー・アクセスのエリック・ガン社長が「キャリアショップを訪れてSIMロック解除手続きを行おうとしても、その際、店員からユーザーへ(SIMロックを行わないよう)セールストークが繰り広げられる。SIMロック解除に手数料がかかるという仕組みはおかしい。最初からSIMロックフリーであるべき」と指摘する場面もあった。

 また販売代理店の立場でありキャリアショップを展開するティーガイアは、ユーザーから返品された端末が現状、再販できないことを紹介した上で、SIMロックフリー端末が一般化するならば、リファービッシュ(中古品を新品同様の状態に仕上げること)した上で販売することはあり得る、としつつも「最大の懸念は個人情報保護。ROMから消去するなど最善を尽くしているが、再現が可能ではないか、という懸念がなくならない限り、喜び勇んで(中古品販売へ)参入とはならない」と一定の距離感を示した。

 各社の主張は、以下で紹介しよう。

「徳島は課題先進国」

開始前、準備中の飯泉知事

 全国知事会情報化推進プロジェクトチームリーダーでもある飯泉嘉門徳島県知事は、徳島県の状況について、「過疎化」「高齢化」が進み、日本全体で本格的に迎える課題へ、いち早く面している「課題先進国」であると説明。そうした課題に対して、過疎高齢化が進む一部自治体でタブレットなどを活用して特産品の売り上げを伸ばした事例や、東京に拠点を置くIT企業に対して災害時の事業継続性を担保するために徳島へ機能を分散するよう働きかけている事例などを紹介する。

 徳島県自身も、将来の発生が予測される南海トラフ地震に対する備えが必要であり、特に高齢者向けの施策として、テレビを活用することを紹介。たとえば24時間点灯し続けたテレビのある世帯には、訪問して安否確認を行うといった仕組みを普段から運用しておき、災害発生時には名前付きで避難を呼び掛けるメッセージをテレビに出すなど、減災の取り組みも進めているという。今後は、高精細化する次世代放送が徳島県において実証実験が行われるとのことで、たとえばブラジルで開催されるワールドカップの4K試験放送(CATV利用)などが実施され、こうした取り組みから飯泉知事は「徳島県は課題先進国から課題解決先進国へ」と説明し、地方の取り組みを全国へ反映できるスキームとしてアピールした。

地域密着をアピールするCATV陣営、NTTへの規制維持を求める

J:COMの牧社長

 KDDI傘下のジュピターテレコム(J:COM)は、代表取締役社長の牧俊夫氏が説明。地域に根差したメディア、プラットフォームであること、そして自ら技術面での進化に向けて活動を進めている一方で、今後はモバイル通信のバックホールなどが重要性を増すことが紹介され、固定通信事業との公正な競争環境を求めた。たとえば、2020年代に向けて、4K/8Kといった高精細放送の早期実現、あるいは行政サービスとの連携や行政のもつデータのオープン化(オープンデータ)、そしてクラウドでの利用(ビッグデータ)の利活用が必要と指摘した牧氏は、CATVがNTTに依存しない回線であり、複数の通信事業者の回線を用意する“キャリアダイバーシティ”の一翼を担えるほか、携帯電話基地局のバックホール回線(基地局とセンターを結ぶ回線)としての意義が増すとした。そしてNTTなど固定通信事業者との公正な競争環境の維持が必要で、家電量販店などで実施されている固定通信の高額な販売インセンティブなどが課題として「資本力ではなくサービスで競争すべき」(牧氏)と主張する。

 そしてモバイル事業者にも光ファイバー回線を8分岐一括で利用してもらうなど、応分の負担が必要ではないかとも提案する。このことについて委員に問われた牧氏は、「これまでは(J:COMでは)B2Cが主な事業だったが、(回線は)どんどん光化している。これをみなさんに使ってもらってもいいというのが基本であり、たとえばWi-Fiアクセスポイント、フェムトセル(小型基地局)のバックホール回線としての活用がある。もし1分岐で1回線分だけ借り受けて固定通信サービスが安く提供されれば、我々(J:COM)のインフラと競争となるが、(価格面で対抗できず)我々はたとえば自治体の防災インフラなどに限定されるなど、B2Bのビジネスだけになって収入が減り、競争力が落ちる。NTTの光回線を使う事業者は、ある程度の負担をお願いしたい」とした。

 続いて説明を行ったケーブルテレビ連盟も同様の説明を行う。500以上の事業者が日本各地でサービスを提供し、そのうち370事業者が日本ケーブルテレビ連盟に加盟していると説明。1億円以上の資本を持つ企業が約75%で、地方自治体も経営に参画していることが多く、地域との密着性をアピールしつつ、2020年代に向けて、地域の自立性や持続性のためにもCATVの継続的な発展が必要とする。そのためにも固定通信で圧倒的なシェアを持つNTTグループについては、規制維持を訴えた。もしNTTグループがモバイルやテレビなどをセットで提供すれば、ユーザーの囲い込み、全国画一的なサービスという形になり、設備競争や地域の公共・福祉に影響を与えると危惧を表明。CATV事業者による地域BWAの活用、MVNOの活用があるとも説明し、今後はNTTへの規制維持のほか携帯・固定両方における多額のキャッシュバックを規制するよう求めた。

「MVNOへのネットワーク開放」「SIMロック解除の推進を」

 ISP(インターネット接続事業者)が参画する日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)は、2020年代にはユーザーが固定通信・モバイル通信どちらも、シームレスに利用できる環境が必要と将来像を語る。モバイルが広まってきた今でも、固定ブロードバンドは安価で安定した、そして高速な通信を実現できる手段と説明する。FTTHではIPv6が2014年から本格的にに導入される一方、モバイルでのIPv6の普及が今後の課題であり、たとえばMVNOもIPv6の接続サービスを簡単に提供できる環境を求める。

 今後については、ネットではユーザーが自由に端末とサービスを選べることが原則として、全てのMNOがMVNOにネットワークを開放することを求め、現在の第二種指定設備制度は、MVNOを促進するようネットワークの開放を目的とした制度にするよう求め、MVNO自身がSIMカードを発行したり、MNOの機能をアンバンドルしてMVNOのサービスが多様化してMNOと競争できるようにしてほしいと要望した。あわせて端末のSIMロック解除の推進も求めており、たとえば割賦終了後の端末に対するSIMロックは合理的ではないこと、APNがロックされMVNOのサービスでテザリングが利用できないことが多いことを課題に挙げ、早急に解決することを求めている。

 またNTTドコモとNTT東西のセット割については、導入する場合、フレッツに接続するISP全てに開放されることを条件にすれば、現状の規制があっても実現できると提案。ただこの提言は、NTT東西がたとえばNTTドコモユーザーだけではなく、auユーザー、あるいはさまざまなISPのMVNOとのセット割も含む可能性があり、舟田正之委員(立教大学名誉教授)から「こういう話は初めて聞いた」といぶかしむ声が挙がった。

周波数の割当、接続料の方式変更を求めるイー・アクセス

イー・アクセスのガン氏

 6月にヤフー傘下のY!mobile(ワイモバイル)になるイー・アクセス。代表取締役社長のエリック・ガン氏は4番手の通信キャリアではなく、国内初のインターネットキャリアになるというコンセプトを紹介するなど、先の買収発表会と同じ内容の説明を行った。スマートデバイスを拡大させるためには、周波数の早期拡大、固定インフラ基盤の充実、健全な競争環境が必要と説く。

 周波数の拡大は、たとえば2014年に割当予定と見込まれている、1.7GHz帯の10MHz幅のこと。この帯域は、グローバルでもLTEに用いられている帯域であり、イー・アクセスの1.7GHz帯15MHz幅×2はその新しい帯域と隣り合っていること、そして周波数の割り当ての際には、英国の例を挙げて競争を促進する政策が必要と説く。ガン氏の説明によれば、英国では低い帯域や高い帯域の保有率、LTEの利用帯域、広帯域(高速通信が実現しやすい)かどうかといった観点で検証が進められ、電波の割当先が決められるという。米国も似た仕組みの導入が検討されており、「米国では600MHz帯の割当が予定され、さまざまな噂があるものの、AT&Tはローバンド(周波数が低い帯域)を既に持っているためオークションでも手を挙げられないと言われている」として、ユーザー1人あたりの周波数利用効率だけで判定すべきではない、とした。

 このほか、NTTドコモが導入する音声定額サービスは、イー・アクセスのような規模の企業にとって接続料が大きな負担になりかねないと懸念を示し、接続料が発生しない「ビル&キープ方式」の導入を検討することを提案する。これは互いにネットワークを使うということで接続料の支払いを行わないという方式。日本は現在、お互いにネットワーク利用料を定めて支払うエンドエンド方式だが、これを転換すべきという提案だ。

 このほか、イー・アクセスに対して、ソフトバンクのネットワークを利用していることから、一体運営されているのでは? と関口博正委員(神奈川大学経営学部教授)から質問されると、ガン氏は「ヤフーが親会社になることで、株式市場を通じた厳しい(経営)ガバナンス体制が継続されることになる。イー・アクセスは既に30社以上のISPと取引しているが、ヤフーと一緒になって安心できるのは上場企業ということ。当然、ソフトバンクへの取引も透明性を高くすべきではないかと思っている。つまり今よりもっと良くなる、と言うこと」と解説した。

販売店の役割拡大を語るティーガイア

 携帯電話販売代理店を営むティーガイア上席執行役員経営企画部長の俣野通宏氏は、販売店という立場はヒアリングに登場する他の事業者と比べて異色かも、と前置きしつつ、ユーザーとの接点になるショップならではの現状や懸念を語った。

 まずショップ事業については、トレンドとして併売店は急速に減少傾向にあり、キャリアショップは数の拡大から店舗の大型化など質的転換を求められている時代にあるとの認識を示す。一方で、スマートフォンやタブレットが普及したことで、たとえば法人向けにはWi-Fi対応機器を納入したり、店舗でウェアラブル端末などの取扱を行うなど、ビジネスの拡大が進んでいることを紹介した。

 そうした中、回線契約や携帯電話端末の販売では、説明に要する時間がさらに長くなる状況であり、別の有識者会合で議論されている通信サービスのクーリング・オフやそれに類する法律の導入に懸念を示して慎重な議論を要望している。

 アプリ提供事業者やMVNO事業者などさまざまなプレーヤーが登場するなかで、キャリアショップは大きな役割を担うとの自負を示した中野氏は、その具体例として、たとえば再開発が進み学校などの誘致が進んだ東京・中野にある、ティーガイア直営のドコモショップはマルチリンガルに対応したことに触れた。

 ティーガイアとしてはスタッフへの教育も強化し、質的転換を進める店舗とあわせてICTのコーディネーターを目指す方針を掲げ、2020年代におけるICT分野の顧客接点という立場を強みに活かす考えのようだ。

テレサ協とMVNO委員会

 情報通信産業に関わるさまざまな企業が参画するテレコムサービス協会は、同協会としての立場、そして同協会内に設けられているMVNO委員会としての主張を紹介した。まず現在のトレンドとして、インフラレイヤーから上位レイヤーでの競争になってきたものの、パーソナルデータの利活用については、プライバシー保護もあり、企業にとってはどういう形であれば適正と言えるか、判断しづらいと指摘。利活用が進まない状況にあり早急なガイドラインの策定を求めた。

 MVNO委員会として本稿冒頭で触れたように、MVNOとしての要望が語られた。現在、MVNOのシェアが携帯電話市場の4.4%に過ぎないことから、はたして競争が機能しているかと疑問を提示。また3月に発表した政策提言として、MNOに対する機能開放、電話番号のMVNOへの割り当て、通信サービスと端末の分離と選択の自由化など9つの項目を紹介した。

 今後の市場競争の促進のためには、MNOに対して新たな規制が必要であり、電気通信事業法第34条の第二種指定電気通信設備制度の見直しを希望する。これは、第二種指定電気通信設備という制度を、MVNOの促進のためという性格にするためのもの。現在は一定のシェアが基準となっているが、要望では全てのMNOを対象にするとした。また接続料のさらなる透明性確保を目的として接続約款を認可制にすることなどが挙げられ、2014年11月までに結論を得て来年度に法改正するよう求めている。

NTTとほぼ同じ主張のCIAJ

 通信機器メーカーが参画する情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、NTT持株の主張に似た内容のプレゼンテーションを行った。

 2020年代ではテレビでもスタジアムで観戦しているような感覚が味わえたり、ユーザーの行動を支援したりできるようになるとの未来像を描き、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは通信量の増加、ビッグデータの有効活用、訪日外国人への情報提供といった課題が予想されるとして、多言語システムや新たなサービス領域への進出など官民挙げたプロジェクトで課題解決を要望。さらに医療などでの通信の活用を進めるには事前規制を極力廃して異業種と協力しやすい環境が必要ではないかと提言した。またセキュリティ対策に向けた人材育成、災害対策なども求められるとする。

 通信端末のあり方についても触れており、ユーザーの利便性に配慮した仕組みが必要であり、SIMロックのあり方については、各キャリアによる取り組みが進んでおり、一律に強制するのではなく、ユーザーの選択に任せるべき、とした。委員からあらためてその考えを問われると、CIAJは「現状の仕組みは2年間使うという(期間が拘束されるデメリット)面があるものの、そのことで端末代が割賦で購入しやすいというメリットを享受できる面もある。一方で、SIMロックを解除した状態で購入できるようにする、という選択肢もあり得る。(キャリア販売とSIMロックフリーでの販売と)そういう多様性が必要だ」と説明した。また日本のICT関連産業が輸入超過に陥っている最大の要因はスマートフォンとも指摘したCIAJは、「単なるハードとしての単品ではなく、1つの大きなシステムとして考える必要がある」と述べつつ、将来的に成長が期待できる分野としてITS(高度道路交通システム)を挙げていた。

今後は論点整理へ

 4月中、3回に渡って事業者に対して行われたヒアリングでは、さまざまな意見が挙がった。NTTグループが事前規制の撤廃を求める一方で、一部報道のようなNTTのセット割が実現すると競争環境が破綻するとの危惧を、競合のKDDI、ソフトバンクらは表わした。

 MVNO側からは、MNO(携帯各社)に対してネットワークのさらなる開放を迫り、それに付随する法整備も求めている。また端末のSIMロック解除を促進して端末とサービスのアンバンドル化の促進も求めている。

 モバイルだけではなく、固定通信の重要性も今回のヒアリングでたびたびKDDIグループやソフトバンクグループから指摘された。2020年代の通信技術では、爆発的に増えるであろう通信量(トラフィック)や、用いる周波数が高いこともあって、より広いエリアをカバーするよりも、局所的な基地局が必要となり、そのバックホール回線として光ファイバーが重要になる、という考え方。これにあわせるかのように、地方の通信インフラとしてのブロードバンドの整備に関する意見も提出され、委員からはブロードバンドサービスをユニバーサルサービスの1つに加えるかどうか、今後議論することを前提として、事業者へ質問する場面もあった。

 総務省では他にも有識者会合が行われており、たとえば周波数の割当に関するところでは、現在開催中の電波政策ビジョン懇談会も連携して、ここまで「2020-ICT基盤政策特別部会」で挙がった意見を踏まえた議論が進められる。また今回のヒアリングでティーガイアが示した懸念は、ICTサービス安心・安全研究会という会合で進められているクーリング・オフ制度に関するもの。こうして、他の会合での議論もあわせて進められつつ。今後は論点に関する議論や整理が進められ、7月に中間整理、9月に報告書案、11月にとりまとめて総務大臣へ答申――という流れが想定されている。

(関口 聖)