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「データギフトで差別化図る」、KDDI田中社長が料金で目指したこと

 KDDIは25日、新料金プラン「カケホとデジラ」を発表した。通話定額と、バリエーションのあるデータ定額という組み合わせ、そして家族間での利便性を高めようとする通信量の贈答機能で、他社との違いを打ち出そうとしているが、通話定額の料金といった面で他社と横並びになっている部分もある。

 プレゼンテーションを行ったKDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、5月の夏モデル発表会で新しいステージに行く、6つの要素で差別化を追求すると紹介していたものの、1つ残っていた料金を今回発表する、と述べて、料金面においてもauらしい提案を提供する考えを示した。

 一方、通話定額についてはあまり語られず、データ通信関連の料金で同社の特徴がアピールされた。

 なお、au WALLETについては一言だけ触れられ、現在、250万契約に達したことが明らかにされた。

KDDIの田中社長

現在のスマホ市場を踏まえて「それぞれに合った料金を」

 2013年度末、つまり3月31日時点で、auのスマホ浸透率は49%。ちょうど半分に差し掛かってきたところで、田中氏はこれからスマホへ移行するユーザーは、マーケティング用語で「レイトマジョリティ」「ラガード」と呼ばれる層だと指摘する。

 そうした、なかなか新しい機能には手を出さず、保守的とされるユーザー層と、既にスマートフォンへ移行した層では、データ通信量に違いがある、と説明。早々にスマートフォンを利用しはじめたイノベーター層、その後に続いたアーリーアダプター層では月間の通信量が4〜5GBが中心で、7GB以上の人も多くなってきた。それに続くアーリーマジョリティ層は2〜4GBが中心であり、まだスマホへ移行していない人が多いレイトマジョリティ層は3GB以下が中心だという。つまり「人によって違う」と田中氏は語る。

 そこで今回、KDDIが新料金のコンセプトに掲げたのが「お客さまそれぞれのデータライフに合ったスーパーおトクな料金を」というもの。ここで紹介されたのが2GB〜13GBまで6種類用意されたデータ通信の料金プラン。他社も同様の考えを採り入れているように見えるが、3GB、8GB、13GBというプランはauだけであり、他社よりも細かくニーズに応えているとアピールする。さらに1GBあたりの単価で見ると、5GB以上は他社よりも安価なプランとして、料金面での優位性も紹介する。

「他社のプランには課題がある」

 たとえばドコモの新プランの場合、家族で使う際には主回線で大容量のデータ通信量を契約し、それを家族間でシェアする形。一方、今回のauのプランでは「データギフト」という機能が用意され、余った通信量を家族間で贈りあえる。

 ここでも田中氏は、先述した“人によって違う”データ通信の利用量を挙げて、他社のようなシェア型では、たとえば子供がどんどん通信してしまい、他の家族で使える分がなくなるなど課題があるのではないか、と指摘する。そこでauでは「データギフト」を採り入れることにした、として、たとえば祖父母がちょっと高めのプランを契約し、余る分を孫に贈る、といった例を紹介した。

単なる横並びではない

 通信量に応じて異なる値付けになった今回の料金は「ティアード(段階別)料金」の一種とした田中氏は、シェア型かギフト型にするのか議論の余地がある、としつつ、auは個人のライフスタイルにあわせる形で今回のプランを策定したものであり、単なる横並びではなく、新たな価値を提案するものだ、と定義した。

 全く異なる土俵にしなかったのはなぜか? という質問には、今回3社が提供しはじめたプランは「王道的な料金の選び方」と語り、これまでの流れを踏まえると当然の帰結とする。これは、かつての音声通話では多様なニーズにあわせて複雑な料金体系になり、その後、LTEではシンプルでフラットな料金体系になった、という流れから、振り子のようにニーズが変化してきたことを踏まえたコメント。

 ただ単に多様性にあわせた料金にするだけではなく、「次は家族をどう捉えるのか」と田中氏は指摘して、ドコモやソフトバンクはシェア側、auはギフト型になった、と説明する。

 またMVNOに対抗して、さらに細かく通信量を刻む形にしなかったのは「やり過ぎるとわけわからんようになる」(田中氏)ためだという。

本当は12月だった?

 質疑で料金発表を前倒ししたのか、と問われた田中氏は「もう少しゆっくりしようと思っていたが、他社から出たので、営業から早く、と言われて前倒しした、というのが本音」と語る。

 他社との大きな違いとした「データギフト」の正式版が12月からとなっている理由を問われた田中氏は「12月くらいでいいかなと思っていたが、競争が激しくなって前倒しした」と吐露。今回の料金プランは当初の予定よりも半年近く前倒しされたことをうかがわせた。

 なお、今後導入すると見られるVoLTEでも、基本的に料金はあまりかわらない、という。

通話定額、本音は「高い」

 通話しない人にとっては値上げではないか、という質問に田中氏は「少し高いという気がしないでもない、本音のところでは」と述べて、会場の取材陣は思わず笑う。

 ただ従来型のプランが引き続き提供されること、そして電話をしていないような人でも通話定額となると通話量が4割増えるというデータがあるとして「非常に微妙なところ」とする。利用スタイルの変化を招く可能性から一概には言えないというニュアンスのようだ。

 新プランの基本料は、通話定額のみとなった。これについて田中氏は「トータルの収入を考えながらどうやっていくのか」とコメント。既存プランを当面残すことから、大きなインパクトはない、としつつも、データ通信が中心になっていく中で調整した結果と語る。

 ただ、後述の囲み取材で語ったように、短期的に通話定額は減収要因になると見ている。

思わず言い間違え

 通話料については本音が飛び出た格好となったが、続く質問でネーミングと問われた際には「カケホとデジラ」を、「カケホとモジラ」と言い間違えて、再び会場を笑いに誘う。

 モジラとはMozilla、つまりFirefox OSの開発を進める団体のことで、田中氏は「何回か後の発表会のやつですね」と述べて、もう少し先の発表になることを示唆した。

囲み取材

 囲み質問での主なやり取りは以下の通り。質疑の内容はテーマごとに分類しており、会見時の順番とは異なる。

【通話定額について】

――以前、ソフトバンクが料金プランを発表したときには「高い」とコメントがあった。今回プランをいろいろ工夫したとのことだが、音声に関しては何も……。

田中氏
 いや、音声ね、こんなもんかなと思ってたんですけども、やっぱりお客さんはデータのほうを見ているのは事実。一方、音声定額が出て、本当に音声通話を使っていらっしゃる、屋号付きの法人さん、ガラケー(従来型の携帯電話、フィーチャーフォン)を使ってる方が動いてらっしゃると思っていて。少し思ったことと違ったことがあった。そういう方たちにとって(通話定額の)2700円は本当にとんでもなくメリットがあるということ。

――通話定額にあたって、アクセスチャージ(接続料)はどうなる?

田中氏
 変わりない。アクセスチャージは向こうから電話があった分、当社からかけた分の差分をやり取りするものだが、当社からかける人だけが多くなれば支払いは多くなる。当社だけ通話定額であれば多額の流出が発生するのは事実だが、それぞれの事業者間のユーザーの分布といったところになる。あまり大きな影響が出てこないと思ってはいるが、実際はフタを開けてみないと分からないでしょう。

――既存プランを残すようだが、新規プランが提供されて、ユーザーはどの程度動くと見ているのか。

田中氏
 はっきり言ってノーアイデア(笑)。というのも、初速とか他社さんを見ていると一気に行くかなと思っていたところ、そうでもないかなと何となく感じられてきて……というのが本音ですよ(笑)。でも実際どうなるかわからないので、既存プランを残しているのが本音。

――今回のプランは増収に繋がるのか。

田中氏
 増収になるというのはどういうことかというと、(ユーザーの)皆さんがデータをもっともっと使って、高いプランに行くと増収になりますね。短期的には若干、減収になりますね。

――音声ARPUは上がるのでは?

田中氏
 MoU(利用時間)は上がりますが、ARPUは短期的には下がります。ヘビーユーザーが先に定額へ移行するが、あまり電話しない方は移らない、ということです。短期的には減収に向かう。電話して便利だよね、となれば、だんだん(音声収入は)戻ってくると良いなと。僕らは、今回、3キャリアの中で一番遅い時期を選び、既存プランを残した、ということです。

――ドコモのカケホーダイは365万契約に達したとのことだが、どう評価するのか。

田中氏
 電話をたくさん使う方がどっと移行している。データを使う人がどれだけ動いているのかは、まだハッキリしていない。でも電話を使う人がいっぱいいるということは、auからの流出に繋がっているので早く(対応を)しなければならない。

――ドコモが音声定額を開始した6月になってMNPの動きは?

田中氏
 市場の同質性が進む中で全体の動きは少なくなっている。負けているか、というと、そこまではいっていないというところ。

――ドコモの音声定額で一気に、という感じではないと。

田中氏
 そういうものではないですね。3社横並びの中で、同質化のほうがより強い。お客さんはあまり動かなくなった。

――基本的な考えとして、通話料金で差別化する時代は終わったということ?

田中氏
 そうですね。電話は、どちらかというと、OTTさん(Web上でサービスを提供する事業者、LINEなど)などいろいろ出てきている。音声が今後差別化できるのは、VoLTEの時代。ようするに音声とデータがコラボレーションするような時代になると、音声の付加価値が出てくるだろう。今は端境期で、僕らはLTEエリアを早く頑張って、綺麗に作っていかないかんということです。

【既存プランと新プランについて】

――他社と横並びにしない、という考えはなかったのか?

田中氏
 結構、横並びじゃないと思っているんですけれど(笑)。音声は一緒。でもデータは確実に下げた。auスマートバリューも従来、ガラケーは適用外だったが対応した。料金は相当、踏み込んだつもりでいます。

――既存プランは残すということだが。

田中氏
 今日出した、電話カケ放題プランキャンペーンはしばらく契約できます。(ユーザーが)興味がなければ辞めようかなと思う。今のデータ通信料金に音声定額が入ったプランをしばらく受け付ける。これがイマイチなら辞めようと。

――家族であわせて10GBではなく、1人1人で2GB、3GBになると家族全員の合計が高くなるのではないか。

田中氏
 計算してみると、そんなことがないよう、個人の上(より通信量が多い)のほうは(単価を)下げてある。家族で(まとめて)ドカンと契約するというのは、全体の契約からするとそんなに多くない。家族を集めて一緒にauショップを訪れるというのはなかなかない。今の社会は個人中心のライフスタイルで回っていて、それでいて家族でおトクをエンジョイできる、という方向を確信して(今回のプランを)選びました。

【総務省での議論、NTTの動きについて】

――総務省で競争政策の見直しが進められ、大手3キャリアの協調的寡占が指摘されている。今回のプランはそれに対する答えか?

田中氏
 それは関係ない。前々から準備してきたこと。

――ドコモがNTTの光回線とのセットに意欲を見せている。あらためてそれに対する考えは?

田中氏
 今回、NTT東西が手がけようとしている卸スキーム(光コラボレーションモデル)は法律に明記されていない。書かれていないからやっていいのか、ということに対して、日本てスゴイな、と。法律に書いてなければ法律の趣旨に戻っておかしいと思わず、あそこまで(ドコモの加藤社長が)発言されるというのはよっぽど確信的な何かがあるのかなと思う。確かに総務省での議論はそれ(NTT側の動き)を容認する方向に行っているが、それって本当にいいのかなと思っています、私自身としましては。

【auスマートバリュー、データプランについて】

――フィーチャーフォンをauスマートバリューの対象にしたのは、対ドコモといった思惑があるのか?

田中氏
 今、レイトマジョリティになると、ガラケーにする、スマートフォンに絶対行かないという人がいらっしゃる。そういう方にもauスマートバリューを、という声があった。あまり(スマホと)差分があってもよくないかなということで広げた。

――ドコモを意識したわけではないと?

田中氏
 はい、今、ドコモさんはauスマートバリュー(のような割引)を提供されていませんから(笑)。

――データギフト以外では、他キャリアにすぐキャッチアップされるのでは?

田中氏
 そうかもしれんね……データの多いところは行く方向が違うのでキャッチアップできないんじゃないですかね。たとえばドコモさんが10GBプランとかもっと上のプランを値下げされると、そのまま減収要因となる。ドコモさんがデータシェアを選び、僕らがデータギフトを選んだということはそれぞれ行く道が違う、ということです。

(関口 聖)