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シャープ、「フリーフォームディスプレイ」で液晶産業を革新

 シャープは、「IGZO」を用いた次世代の「MEMS」技術や、先日発表された「フリーフォームディスプレイ」の取り組みについて、メディア向けに説明会を開催した。

 同社はこれまで、スマートフォンやタブレットのタッチパネルにおいて、独自の液晶ディスプレイ「IGZO」を用いた高精細かつ省電力なディスプレイを創出、さまざまな機器に活用され液晶産業を牽引してきた。現在注目を集めているのは、クアルコム社と協同で開発を進めている次世代の「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」技術を搭載した「MEMSディスプレイ」。加えて、形状を自由にデザインする「フリーフォームディスプレイ」など、革新的なアイデアと技術で開発に取り組んでいる。

 これらの技術は、今後のスマートデバイス、ウェアラブル端末、車載機器などに活用されていくことが期待される。

エンジニアによる“発想の転換”が生んだ「フリーフォームディスプレイ」

 6月18日に発表した、シャープの「フリーフォームディスプレイ(FFD)」は、文字通り自由な形状でデザインできるディスプレイのこと。従来の液晶は、四角形状が一般的であったが、円形であったり自由に切り抜いたような形状のものを実現する技術で、これまでの常識を打ち破る技術として注目される。今後は車載機器などへの採用が期待できる。

 フリーフォームディスプレイはIGZO技術とシャープ独自の設計手法により実現している。シャープのスマートフォンなどに見られる、狭額縁ディスプレイは、駆動回路をパネルの外周部に配置することで実現したが、さらに“超狭額縁”と位置づけるディスプレイの技術においては、パネルの画素内にゲートドライバをちりばめて配置することで、さらなる狭額縁を実現するという。これにより、パネル3辺に駆動回路を配置する必要がなくなり、自由な形状に設計することが可能になったという。

 ディスプレイデバイス開発本部表示モード開発センターの伊藤康尚氏は開発秘話について語った。「将来のディスプレイの価値を社内で議論している中、コントラストや鮮やかさなどの基本性能の技術競争よりも、デザイン性が競争軸になりうるのではないかといった議論が行われた」と数年前を振り返る。「当社のエンジニアのアイデアで駆動回路を“ちりばめる”という発想の転換があった。当初は不可能と思われたが、作ってみたらできた」という。それにより額縁を細くできたのだと説明した。

 ドライバをちりばめて配置すると、配線が表示領域に入ってしまい、光の利用効率が下がることにもなるが、バックライトを工夫したりIGZOの省電力技術にも助けられ、電力のムダは最小限に抑えることができると説明する。「トレードオフであっても形を変えられるほうが価値が高いと考える」(伊藤氏)。

省電力と耐環境性能が特長の「MEMSディスプレイ」

 このほか、IGZO技術を応用した次世代の「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」技術を搭載した「MEMSディスプレイ」の展示も行われた。

 MEMSは、半導体プロセス技術を用いて基板上に電子とメカニカル機構を融合させた微細な立体構造からなるシステム。「MEMSディスプレイ」は、ひとつひとつのセルに機械的なシャッターがついていて、バックライトの光を通したり、遮断したりという動作を繰り返すことで、RGBのLEDが順番に点灯する。このとき、電力のオン/オフを制御することで、大幅な省電力を可能にする。また色鮮やかで、低温でも高温でも動作に影響しない高い耐環境性能も備わっている。

 シャープが提供する中小型液晶の生産拠点は、三重県の亀山工場・三重工場、奈良県の天理工場、鳥取県の米子工場の4拠点となる。各工場では、車載用、高精細スマホ用、MEMSなど、それぞれ担当の生産品目が存在する。

 中小型液晶の需要動向をみると2013年以降、スマホ・タブレット向けには毎年15%ほど伸張で推移している。また、車載機器向けのものは毎年9%ほど伸張している。スマートデバイスの高精細化の流れは今後も続くとみられる。同社では、三重・第3工場で生産する超高精細なWQHDパネル(500ppiクラス)や、亀山第2工場で生産する高精細FHDパネル(400ppiクラス)のものが、今後のボリュームゾーンと位置づけている。

(川崎 絵美)