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ミャンマーで通信サービス提供へ、KDDIと住友商事

 KDDIと住友商事は、ミャンマー連邦共和国の政府機関、ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と、ミャンマーにおける通信事業を行うことで合意し、16日付けで契約を締結したと発表した。

 両社ではシンガポールに合弁会社のKSGS(KDDI SUMMIT GLOBAL SINGAPORE)を設置。その合弁会社がミャンマーに子会社を設立している。KSGSはMPTと協力して、ミャンマーでモバイルおよび固定通信において“日本品質”の通信サービスを提供していく。

左からKDDI代表取締役専務の石川雄三氏、キン マウン ティン駐日大使、住友商事代表取締役副社長の佐々木新一氏
KSGMのトップにはKDDIの長島孝志氏

経済発展目指すミャンマー

 民主化や規制緩和が急速に進むミャンマーは、人口が約6500万人(タイと同規模)。携帯電話の普及率が10.5%、固定電話は0.8%、固定ブロードバンド回線は0.1%で、若年層が多く、携帯電話を持ちたい、というニーズが高まると期待されている。

 今回、KDDIと住友商事のパートナーとなるMPT(Myanma Posts And Telecommunications)は、国営企業であり、通信事業や郵便事業、電報事業を手がける。現在の日本で言えば、日本郵政とNTTが一体になったような組織だ。

最後のフロンティアとも呼ばれるミャンマー
若年層が多く、これからの経済規模の拡大が期待される

 ミャンマーでの通信サービスは、これまでMPTが独占していたものの、民主化を進め、さらなる経済発展を促進するため、ミャンマー政府は外資の力を得て環境を整備する方針とし、約1年前には、外国企業に対して通信免許の入札を募った。その結果、2014年第3四半期より、ノルウェーのテレノールと、カタールのOoredooがサービスを開始することになり、またミャンマーの半官半民企業であるYatanarpon Teleportも、時期は未定ながら、通信サービスを提供する方針だ。

 “通信自由化”を迎えることになり、外資2社と、ミャンマー企業1社という新たな競争相手との戦いにさらされる格好となったMPTは、競争に打ち勝つためのパートナー探しに着手。2013年の入札には失敗し、「がっくりきていた」(石川氏)というKDDIだが、昨年暮れ、住友商事ともにMPTとの独占交渉権を得て、交渉を続けてきた。

MPTはこれまで独占企業だった
通信自由化を迎える

KDDIの技術面を評価、日本への信頼感も

 KDDIと住友商事が協業にこぎつけることができたのはなぜか。そうした質問にKDDI石川専務はこう語る。

「(2013年の入札後、独占交渉権獲得までの中で)最初に19社が手を挙げ、2社に絞られたものの、その後、技術面が評価されて数社が残った。そうした中でKDDIは固定とモバイルの両方を手がけていること、そして国際経験の多さも重視されたのかなと思う。そして(現地で)お会いする人は、日本に対する信頼感が強い。リップサービスかもしれないが、皆さん口を揃えて、日本企業がそれまで手がけてきた道路整備、発電所などを高く評価している。日本の技術力や国民性といったところにシンパシーを持っていただいたかなと思う。最後の話は私の勝手な推測だが(笑)」

音声通話とSMSが中心

 ミャンマー政府としては、現在、約683万人(普及率10.5%)という携帯電話ユーザーを2016年には、普及率80%まで押し上げる方針。つまり、「約4750万契約ものマーケットが立ち上がることになる」(KDDI石川氏)ことになり、「ラストフロンティアとも呼ばれる」(住友商事佐々木氏)ミャンマーらしく、大規模な市場拡大が見込める。

 当面は4社体制での競争になる見通しのミャンマーでは、ユーザー層がまだ限られることで、音声通話とSMSが主な用途になっている。MPTの携帯電話サービスは、2Gと3Gが混在しているが、KDDI/住友商事では、今後10年かけて2000億円投資し、2G方式でルーラルを、3Gで都市部のデータ通信の需要をカバーする方針だ。

2000億円を投資

 今後のニーズの中心は音声通話とSMSと見られているが、現在は富裕層の利用が多いとのことで、スマートフォンも多く使われているという。今後、さらに市場が拡がり、ユーザーのニーズがデジタルコンテンツへとシフトしてくれば、日本とのシナジーも高まる、とKDDIの石川専務は語る。

将来的に上位レイヤーのサービスも

課題は社会インフラ

 これから大きな発展を控えるだけあって、ミャンマーでは、鉄道や電力など社会インフラの整備も待たれる。特に電力は、現在、水力発電ばかりとのことで、KDDIの石川専務は電力網の整備が課題とする。

市場拡大は期待されるものの、社会インフラの整備も課題

 これまでは「端末とSIMカードが分かれて提供されている」(石川氏)とのことで、MPTでは通信サービスのみ用意する形だった。今後、ユーザーの動向が変化していけば、端末とのセットといった形も志向したい、とした石川氏だが、その一方で現地の商慣習もあり、時間をかけて取り組む姿勢を示した。またミャンマーではSIMロックがない状態でサービスが提供されており、今後もSIMロックを実装するのは難しいのでは、と石川氏は語っていた。

 日本の通信キャリアの海外進出という面では、NTTドコモがインドに進出を図ったものの、大きな成果を出せなかった。KDDIの石川氏は「インドは人口が多いが、通信事業者の数も多い。実は参入者数を研究した」と吐露し、ミャンマーでの事業はリスクが少ないとも分析した。

ミャンマーの発展への寄与を目指す