「医療現場のIT化を今度こそ実現」Dr.JOYなど、KDDI∞Labo7期チームが決定

　KDDIが取り組むスタートアップ企業の支援事業、KDDI∞Laboは、第7期プログラム参加チームの募集を7月より実施してきた。このたび第7期の参加チームが出揃ったとして、メディア向けに披露された。今後3カ月間にわたり、事業化へ向けた出資・事業提携などサポートが進められる。

第7期メンバー（参加チーム、メンタリング企業、サポート企業）

　KDDI∞Laboでは、採択されたスタートアップ企業をKDDIが支援するプログラムだが、第7期から新たに導入された支援プログラムとして、賛同する多種多様な企業がメンタリング・サポートとして参画する。決定されたチーム5組をメンターとして支援する企業は、三井物産、テレビ朝日、コクヨ、セブン＆アイ・ホールディングス、プラスの大手5社。共催イベントなどを通じて、全チームを幅広くサポートする企業は、大日本印刷、バンダイナムコゲームス、近畿日本ツーリスト、ソフトフロント、東京急行電鉄、凸版印刷、パルコ、三井不動産の8社だ。

　今回からは、参画企業がそれぞれの強みを生かして、各チームの事業化に向けこれまで以上に強力にサポートするという。今回第7期のチーム採択においては、KDDIと参加企業が共に議論を行い決定された。

現役の医師が「開かれた医療」を目指す、新たなプラットフォーム

　参加チームのひとつであるDr.JOY株式会社は、患者と医師、病院のスタッフを繋ぐ新たなプラットフォーム「Dr.JOY」の事業化を目指し、同プログラムに参加する。Dr.JOYの代表を務める石松宏章氏は、病院に勤める現役の医師。

Dr.JOY株式会社 代表 石松宏章氏

　石松氏は、現役の医師だからこそ感じ取る、医療現場での問題点を指摘する。たとえば、「医者の説明が専門用語だらけでよくわからない」、「診てもらったけれど、診断結果がわからなかった」、「カルテを開示してほしいが、医師に嫌な顔をされる」など、こうした患者の声を、Dr.JOYのプラットフォーム上で解決するというもの。

　Dr.JOYは、登録したアカウントごとにタイムラインが設けられクローズドな環境で、担当医師・患者・患者の家族が情報を共有できる、いわば“医療向けSNS”といったところ。入院中の患者のリハビリの様子を患者の家族が見られたり、医師と患者がカルテを共有、直接メッセージのやりとりをして、情報共有ができたりといったツールを提供することで、“開けた医療現場”の実現を目指す。

　また、病院スタッフ間の連絡ツールとして現状はPHSでの通話を利用することが多いと言うが、Dr.JOYではLINEのチャットのようなもので連絡を取り合うことができる機能も盛り込む。さらに、病院と製薬会社間の取引においても、Dr.JOYのプラットフォームを活用したサービスを提供することでマネタイズを図る。石松氏は「これまで実現できていなかった医療現場でのIT化を、今度こそ実現して見せます」と決意を述べた。

三井物産 次世代・機能推進本部の松井敏行氏

　このチームにメンターとして参加する三井物産は、国内外で展開するメディカルヘルスケア事業、KDDIの有するネットワークインフラとのシナジーに期待を持つ。三井物産の松井敏行氏は「患者と医師との開けた医療現場をゴールとしており、“世の中を変えたい”という熱い思いに感銘を受けた」と、選定理由を説明した。

ゲーム×テレビ朝日、Web出版×コクヨなど、パートナー連合

　このほか、ウェアラブルデバイスを利用して日常にバーチャルゲームを採り入れる「ポッサムゴッサム」や、ブログを書く感覚でWeb上で執筆～出版（オンデマンド印刷）と作者・読者間のコミュニケーションができる「BooksOnDemand」、画像解析とAI技術を応用したレコメンデーションシステム「Fem」、花屋と顧客を結ぶECプラットフォーム「sakaseru」など、個性に富んだサービスが紹介された。

　これらのサービスは、メンター・サポーター企業らと共にプログラムを開始し、3カ月後にはβ版などの完成を目指す。メンター・サポーターによる支援は3カ月間だが、その後も事業化に向けた支援をKDDIと、場合によっては参画企業も行っていくとしている。