ニュース

シャープのスマホは「タイミングよく話しかけてくる」

2014年冬モデルから搭載の「emopa」(エモパー)を解説

 シャープは、音声や画面表示で「スマホがタイミングよく話しかけてくる」という新機能「emopa」(エモパー)を、2014年の冬モデル以降のスマートフォンに搭載する。

 シャープが2014年の冬以降に発売する新モデルのうち、現在発表されているものでハイスペックなモデルに位置付けられるのは、ソフトバンクモバイルが12月に発売する予定の「AQUOS CRYSTAL X」と、NTTドコモから11月中旬に発売される「AQUOS ZETA SH-01G」「Disney Mobile on docomo SH-02G」となっている。新機能「emopa」はこれらの機種に標準搭載されるほか、将来的にはすべてのシャープ製端末に搭載される見込み。

 10月1日には都内で記者向けに説明会が開催された。同社の家電に採用されていた人工知能「ココロエンジン」をベースにしたことや、スマートフォンが「愛着を感じられるパートナーへと進化する」といった触れ込みから、スマートフォンの新機能としてこれまでとは異なる取り組みに見え、実際にシャープの担当者からも「シャープとして挑戦的なもの」と語られた。説明会では開発に至った経緯や背景、技術的な取り組み、今後の可能性などについて解説された。

ユーザーの期待を超える、新しい価値を生み出す新機能

 冒頭に登壇したシャープ 常務執行役員 通信システム事業統轄 兼 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏は、液晶などの技術で進化させてきたこれまでの端末であっても「それだけではユーザーの期待を超えられない。もっと人に寄り添う関係へ」として、「新しい価値を生み出す新機能」と「emopa」を紹介した。

シャープ 常務執行役員 通信システム事業統轄 兼 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏

「スマホがタイミングよく話しかけてくる」機能

 シャープ 通信システム事業本部 マーケティングセンター 新規ビジネス戦略部 部長の小林繁氏は、「シャープとして挑戦的なもので、時間をかけて、本気で取り組んできた」と触れながら、「一言で言うと、スマートフォンがタイミングよく、話しかけてくる機能」と「emopa」を説明する。

 シャープが開発した経緯については、タイミングよくという部分や、話しかけてくるという部分が重要とのことで、ユーザーはこの新機能を能動的に使うのではなく、受動的に楽しめる機能になっていることを紹介した。

 例えば自宅にいる場合、起床や出勤時間といったタイミングで声で話しかけてくるほか、外出先では声を出さずに画面に表示する文字で話しかけてくる。予め設定した自宅以外では、基本的に声ではなく画面表示になる。

 ユーザーは受動的で情緒的に利用できるとし、レスポンスを求められないことから気楽に付き合えるという面もある。スマートフォンを使って能動的に、正確な情報を検索するといった用途の前段にある、曖昧な気付きを促すしたり、なんとなくといったりしたニュアンスで話しかけてくるという。

 例えば紅葉に行きたいと考えたユーザーはスマートフォンでさまざまな手段や場所を調べられるが、紅葉に見に行くという欲求自体は、多くの場合、ユーザーが別の手段や機会で得たものだ。「emopa」では「紅葉を見に行ってみては」といったような形で、“なんとなく”や“あいまいな”な情報を提供することもできる。こうした情報の発信は、ユーザーの行動とコンテンツとのマッチングとも捉えられており、今後はビジネス価値を拡大するような取り組みも検討されている。

最先端のセンシング技術を駆使、「喋らないスマホを持つと、寂しくなる」

 「emopa」の内部的な仕組みはどうなっているのだろうか。小林氏が説明したところによると、スマートセンシング、音声合成、プライバシー保護の大きく3つの要素からなるという。

 「スマートセンシング」は、低消費電流でセンサーを常時稼働させた上で、加速度センサーとGPSを利用して、ユーザーの行動や位置を推定するというもの。乗り物への乗車の有無や、日常生活圏の中か外かといった判別も行い、「emopa」が発信する情報を変化させる。センサーが常時稼働する点について、電池の待受時間に対しては「実使用上に大きな影響はない」とされている。

 「音声合成」は、これまでならサーバー上で処理していたような合成機能を端末上での処理で実現したとのことで、状況に応じてセリフを選ぶ技術も新たに開発された。

 「プライバシー保護」は、ほとんどのデータを端末上で処理するというもの。処理途中のデータはサーバーには残らず、なるべく端末上で処理するような仕組みになっており、サーバー上のデータも暗号化される。ほかのアプリから「emopa」のデータを利用することもできないとしている。機種変更時には(暗号化された)データを引き継ぐことは可能になっている。

 実際に「emopa」が利用する外部のデータはさまざまな企業が協力しており、インクリメントP、ウェザーニューズ、るるぶDATA、時事通信社、ナビタイム、Yahoo!などの情報を活用する。セリフやシナリオ制作は面白法人カヤックが担当している。

 「emopa」には3種類のキャラクターが予め用意され、端末の設定画面で変更できる。キャラクターそれぞれにセリフが用意され、いずれも合成音声だが、声質も異なる。セリフは合計すると1キャラあたり“数千”種類とのこと。ユーザーとの対話機能やそれによる学習機能は用意されておらず、状況をセンシング技術で判別してセリフを選ぶという形が中心になっている。

 小林氏は、「最初は好き嫌いはあるかもしれないが、最終的には、(emopaが搭載されていない)喋らないスマホを持つと、寂しくなる。開発チームの中でも実際にそういうことが起こった」というエピソードも紹介しながら、新機能が魅力的になっている様子を語った。

“端末を置く”とemopaがしゃべる

 実際の利用においては、スマートフォンが待受画面になっている状態や、画面がスリープしている状態で、「端末を平らな場所に置く」というアクションが起点になり、「emopa」が話しかけてくる。アラームを止めて端末を置くと、二度寝についてしゃべり出すといった具合。このため、一日中「emopa」がしゃべっているということにはならないようだ。

 アプリを利用している最中は端末を置いても「emopa」はしゃべりかけてこないほか、しゃべっている最中でも、端末を裏返す(液晶を画面を下にする)と音声は止まるようになっている。また、最初から裏返しにしておくと、そもそも「emopa」がしゃべりだすことはない。マナーモードの有無やセンシング技術で自宅とそれ以外を判別して、外出先では自動的に音声で喋りかけることはなくなり、画面での表示になる。なお、端末を振ると無理やり「emopa」を喋らせる、という機能も用意されている。

 シャープ製の既存のスマートフォンでは利用できないが、関係者からは「ユーザーからの要望次第」といった声も聞かれた。

「AQUOS CRYSTAL X」が展示

 説明会の会場ではこのほか、稼働する実機が披露されていなかった「AQUOS CRYSTAL X」が、「emopa」のデモ機として登場していた。ホーム画面などは「emopa」のデモ用のものだったが、表示や動く様子を確認できた。

「AQUOS CRYSTAL X」

(太田 亮三)