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総務省の方針案にKDDI、ソフトバンクなど260社が意見申し立て

 総務省で進められてきた検討を受けて、NTT東西による光回線のサービス卸が提供される際には徹底した透明性を確保して欲しい――KDDIやCATV事業者など236社が22日、総務大臣に向けて要望書を提出した。またソフトバンクグループなど27社も「NTTドコモとのセット割は禁止」「サービス卸の約款公表義務付け」などを求める要望書を提出した。

 22日には、要望書を提出したKDDI渉外・広報本部長の藤田元氏が囲み取材に応じて、要望の狙いを解説した。

NTT東西のサービス卸に総務省は……

 今年の2月から総務省では、2020年代を見据えて、日本のICTをどのような方向で発展させていくか、特別部会を開いて議論を進めてきた。そして10月20日、これまでの議論の総まとめとも言える「答申案」が発表。「さまざまな事業者が国内のICT基盤をフェアに利用できるようにする」「2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに訪日外国人にとってもストレスなくICTサービスを利用できるようにする」といった原則が掲げられた。

 一方、今年5月にはNTT東西が「光回線の卸売(サービス卸)」を2014年度第3四半期以降に提供する方針を示した。他社がNTTから光回線を調達して、他のサービスなどと組み合わせて提供できるようにする、というものだが、これは固定通信などを提供するNTTのライバルにとっては大きな脅威になり得る。これについて、特別部会の案では「サービス卸自体は、光回線の利用率向上に繋がる。また今後の日本の経済成長にも寄与できる」として評価する一方で、「料金や提供条件の適正性や公平性の十分な確保」「一定の透明性が確保される仕組みの検討」を挙げている。

KDDI側は透明性確保に焦点

 これだけ見ると、総務省側でもNTT東西の新サービスについて枠組を設けようとしている、とも見えるが、今回、KDDIでは「一定の」とされた“透明性”について、“十分に確保されないのでは?”と問いかける。囲み取材に応じた藤田氏も、もしNTT東西が事後的に導入事例を総務省へ報告したとしても、総務省が個別の相対契約の内容を検証できないのではないか、と厳しい評価。

 236社の気持ちは、透明性の確保ということで(サービス卸の条件の)公表をお願いしたい。NTT東西の設備は、(他社にとっても国民にとっても不可欠な)ボトルネック設備であり、それを相対契約で提供するというのはあり得ないのではないか。またサービス卸が実現すると、実はNTTドコモが一番のパートナーと言うことはあり得る。販売奨励金などをNTTグループ内で還流することも考えられる。公正にやるのであれば公表すれば良い。なんで非公表にこだわるか解せない。

KDDIの藤田氏

 こう述べた藤田氏は、今回CATV事業者として、KDDIグループのJ:COMだけではなく、独立系の事業者も数多く参画することの背景には、NTTの光回線で映像サービスも提供できることがあると説明。サービス卸がスタートし、通信サービスだけかと思っていたら実は映像を含めた総合サービスが提供できる――となれば、CATV事業者にとっては大きな脅威。だからこそKDDIと同じく透明性の確保を求めたのだという。これはたとえばNTTコミュニケーションズのようなポジションにある企業が、映像、固定通信、モバイルサービスを包括的に提供できる可能性もあり、今も大きなシェアを抱えるNTTグループがさらに市場でユーザーを獲得し、独占的な立場になることに繋がりかねない、という危惧もある。

 また、ソフトバンクとは別々のアクションになったのは、参加企業が多いなかでいくつか主張の内容に違いがあり、今回はスピードを優先したためと解説。ソフトバンク自身がサービス卸を使うという可能性を踏まえた要望書であることを示唆したものの、透明性の確保という方向は同じとした。なお、KDDIとしては、NTT東西のサービス卸を利用する予定はなく、KDDI自身の固定通信網を同じような形で提供するかどうか検討中とのこと。

ソフトバンク側は「ドコモのセット割禁止」

 ソフトバンク側27社(ソフトバンクグループを除くと19社)の要望では、サービス卸について、KDDIと同じく、約款の公表、相対取引の禁止などを求めつつ、さらに「NTTドコモとのセット割禁止」「NTTグループ内の優遇禁止」を求めている。

 これについて、ソフトバンクモバイルでは、固定通信・移動通信どちらも国内で最大手であり、なし崩しでサービス卸が提供されてしまうと、中長期的にはユーザーにとっても選択肢がなくなる(他社がいなくなる)ことに繋がる、と指摘。たとえばNTTドコモがグループ経営から離れるといったことがないのであれば、一定の規律が必要との認識を示す。たとえば約款が公表されるのであれば、適正か公平か、第三者にとってはっきりわかるようになる、と説明している。

関口 聖