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KDDIの2014年度上期決算、営業利益は11%増の3848億円

SIMロック解除、ドコモ光にもコメント

 KDDIは、2014年度第2四半期の業績を明らかにし、2014年度上期(4~9月)の連結業績として発表した。営業収益は前年同期比4%増の2兆1319億円、営業利益は前年同期比11%増の3848億円、EBITDAは前年同期比8%増の6502億円となった。上期を終えて営業利益の進捗率は53%となり、「通期での2期連続の2桁成長に向けて順調な進捗」としている。

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 31日に開催された記者向けの決算説明会では、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇した。田中氏はモバイル通信料の収入が着実に伸びていることなどが好調な業績の背景にあるとしたほか、「上期で100万件突破」が3期連続という純増数も寄与しているとした。

 iPhone 6/6 Plusの発売については、発売当初の9月の初期動向に言及。“2年明け”のユーザーがドコモに流れるのでは? との事前の観測が聞かれたとした上で、auのiPhone 4sとiPhone 5のユーザーが機種変更してもauに留まる「ステイ率」が約90%にもなり、なおかつ9月はMNPの純増も拡大したことを明らかにした。

 au通信ARPUは、第2四半期で前年同期比1.4%増の4280円。

 auのスマートフォンの販売台数は、2013年度第4四半期がキャッシュバックなどで263万台と大きく伸ばす一方、反動で2014年度第1四半期は138万台と前年同期比でも大きく減少していた。2014年度第2四半期の販売台数は193万台となり、「前年同期なみに回復」とした。2014年度上期に販売された端末のうち、スマートフォンは52%にあたり、LTE対応モデルは全体の42%になっている。

 新料金プラン「カケホとデジラ」については、データの利用が伸びていると指摘し、データ定額の内訳として「2GBまたは3GB」が56%、「5GB以上」が44%という内訳を明らかにした。また、LTEスマートフォン1台あたりの月間のデータ通信量は、2013年度上期で3GB未満だったことろが、2014年度上期では3GBを超えており、「このトレンドは今後も続く」と予想している。

 バリューセグメントとするサービスなどの「付加価値売上」は「通信料収入に続いて重要なもの」と位置付けており、上期で前年同期比16%増の599億円となった。

 この付加価値のARPUについてはauスマートパスが牽引する形で拡大し、2014年度第2四半期で前年同期比7%増の310円。スマートフォンユーザーに限定すると、前年同期比11%増の490円になった。

モバイル事業の取り組みなど

 田中社長からは、これまでに発表されているネットワークやデバイス、サービス、MVNO向けの取り組みであるKDDIバリューイネイブラーの活動などについて触れられた。「オープン領域への事業展開」という「Syn.構想」も紹介され、「auの垂直統合型に加えて、オープン領域が両輪となるように進めていく」と期待の高さを語った。

SIMロック解除「ガイドラインに沿って対応」

 31日には総務省から「SIMロック解除に関するガイドライン」の改正案が発表され、パブリックコメントの募集が開始されている。これを受けて影響や対応方針が聞かれると、田中氏は「これから内容を検討し、必要に応じてパブリックコメントを提出していく。契約への影響は、細かく分析していないのが本音。今後いろんな動きがでてくるだろう。それらを含めて考えいく」と基本的な方針を説明した。

 一方で、従来から主張している端末の通信方式の違いについても改めて説明し、「iPhoneなど世界共通の端末もあるが、スマートフォン全体からみると、(キャリア間の)差を吸収できている端末はまだあまり無い」などとして、SIMロックを解除した後の対応やサポートにも課題が多いことを窺わせた。

 会見後に報道陣からの質問に答える中で、iPhoneのSIMロック解除を問われると、「iPhoneは、(中略)なんかよくわからんと。ハッキリ言うと。なんともコメントのしようがないというのが本音」と、キャリアのコントロール下にはない様子を改めて示唆した。iPhoneのVoLTE対応についても同様で、「他社さんのことなのでなんとも分からない。自社は自社で当然テストはしますが、向こうさんの味付けのところが違っていたら……ちょっとよく分からないですね」。

VoLTEは徐々に浸透を狙う

 VoLTEのキャリア間の相互接続については、「それこそまだ目処が立っていない。グローバルでも韓国内で相互接続について動き出したところ。細かい話だが、VoLTEはデータなのか、音声なのか、という定義すらグローバルの各地域で違う。テクニカルな話以外にも詰めなければいけないことはある。回線交換に戻してつなぐというのが現状」と説明している。

 「VoLTE」の対応端末の内容から、「本格的にアクセルを踏むのはいつか?」と聞かれると「徐々に。新たなことをやると、なんかトラブルが起こると怖い。けっこう頑張ってきたが、あともう少し時間があるので、考えないといけないこともある」と、やや慎重な姿勢をみせている。

MVNOは「ドコモばかりだと健全じゃない」

 「KDDIバリューイネイブラー」(KVE)の展開や進捗については、「いま(希望している企業に)説明をしているという段階」とした。その狙いについては、「そもそも論として、MVNOのSIMカードはドコモの回線がほとんど。ドコモばかりだと健全じゃないよね、という思いから、遅ればせながら頑張ろうという意思表示。低価格市場というのがMVNOの市場。そこがぜんぶドコモ(回線)になるとよくない。我々のユーザーもそれなりに流出していると思う。我々も頑張らないといけない」とし、「ところがMVNOはひとりではどうにもできない。だからバックオフィス機能はKVEで提供し、大きな負荷なく始められるようにしていこうという狙い」と背景を説明している。

ドコモ光は「脱法的行為」

 31日の午後にNTTドコモは、NTT東西からの光回線の卸売を受けて、光回線と携帯電話をセットで提供する「ドコモ光」を2015年2月に開始すると発表している。田中氏はこの施策について問われ、会見では、やや言葉を選びながら以下のように語った。

 「そもそも論として、NTTの固定系の設備は“ボトルネック設備”と言われ、電話の設置から出てきた設備。これまでは接続という形で他事業者が使うことができたが、2020年に向けて新たなイノベーションを起こすために開放しようというのがNTTの考え方。

 (いわゆる)セット割は脱法的行為だと思っている。“これは一体何なんだろう?”と。最低限、透明性を確保しないといけないのに、議論の最中に発表するのは“いかがなものか”というのが本音。こういったことが起こらないように、10月20日に(KDDIなど)236社で総務省に要望書を提出した。それも関係なく我が道を行かれる。

 (NTT東西の卸売の)元の目的はイノベーションを起こそうと始まった議論だったが、ドコモを中心にセット割をやるためだけの戦略ではないかと疑っていた。案の定そうなり、“なんとも言えない気持ち”。いろんな場を通してコメントしていきたい」

 会見後に質問に応じる中で、「ドコモ光」への具体的な対抗策を聞かれると、「どうしようかな(笑)。スマートバリューで我々は先行しており、それなりのユーザー数が加入している。とはいえ、先方にはフレッツ切り替えという奥の手がある。こうなったら大変だな、というのが本音」と警戒感を隠さない。固定回線のキャッシュバック競争の可能性についても「向こうがやられるならそうなるかも。ほんと勘弁してほしいですが」とした。

太田 亮三