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NEC、スマホのカメラで本物か偽物かを識別できる技術を開発

1000本のネジの中から個体を識別

 NECは、工業製品や部品の表面の微細な紋様をスマートフォンやタブレットのカメラで読み取って個体識別する「物体指紋認証技術」を開発した。トレーサビリティ、真贋判定、品質管理などでの活用が期待される。

 同技術は、人間の目では判別できないレベルの表面にある固有の紋様(物体指紋)を読み取ることで、個体識別しようというもの。NECでは、1社あたり1.9億円、世界全体で約80兆円とされる模倣品被害への対策や、ネジのように大量生産され、なおかつコスト的に個別に識別タグを付けられないような部品の管理などに有効な技術と見ている。

 NECは、郵便番号の自動読み取り機のような文字認識技術や、警察庁での自動指紋認証システムで利用される指紋認証技術、空港などで使用されている顔認識技術など、さまざまな認識技術を研究・開発してきた。指紋認証や顔認識は生物の個人認証を行うものだったが、部品の製造時に表面に微細な紋様が自然発生し、同じ金型で作られた部品でも、その紋様が一個一個異なることが分かってきたという。

大量のネジの山

 そこで部品の表面の微細な紋様を製造時にデータベース登録し、その特徴を照合することで大量の部品の中から個体認識する技術を開発。より身近なところでの普及を目指し、市販のスマートフォンのカメラを用いて実際に1000本のボルトを1000回認識する実験を行った結果、100%の認識率を達成。1000本の中から1本を特定することに加え、少数のサンプルを登録することで製造ロットを特定することもできるという。

専用のアダプターで読み取りやすく工夫している
読み取り中の画面
ミシンなども模倣品に悩まされているという
バッグはファスナーで個体を識別する

 現状では金属やプラスチックなどの素材で高い認識率が確認されているが、皮革製品などでも同様に高い評価結果が得られているとのこと。ただし、後者については、経年劣化が予想されるため、長期的にどの程度の認識率を実現できるかが課題として残されている。また、表面が変形して元に戻らなくなるような素材や、表面のざらつきが分からないほど光沢があるような素材など、特徴点の識別が行えない素材も存在する。

 同社では今後、数社と先行的に実証実験を行い、2015年度上期中にソリューション化および販売を開始する計画。まずは製品・部品の真贋判定向けのサービスを提供する予定。

 なお、同技術は11月20日から21日にかけて開催されるNECグループのプライベートイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014」でもデモ展示される。

湯野 康隆