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出会い系アプリがヒント――若手の“スマホ転職”を支援する「キャリアトレック」

仕事レコメンド型転職アプリ「キャリアトレック」

 起業家と出資者、結婚したい男女、肉を食べたい者同士……。あらゆるニーズに合わせて人々を“マッチング”するサービスが増えてきている。転職サイトもそのひとつ。ビズリーチは、若い人材を求める企業と、キャリアを考え始めた20代のマッチングを支援する、提案型転職サイト「キャリアトレック」のスマートフォン向けアプリを公開した。対応環境はiOS 7.0以上のiPhone(Android版は来春リリース予定)。アプリの利用は無料。

 「キャリアトレック」アプリは、好みや、気になる企業を直感的に選ぶことでレコメンド機能のマッチング精度が向上し、ユーザーの志向に合った求人情報がレコメンドされる提案型の転職アプリ。企業数は約4000社、求人件数は約1万7000件が登録されている。

 アプリ内では、ユーザーが企業を選ぶうえで重視するポイントを選択する“キャリア診断”の結果と、登録プロフィールに基づいたおすすめの企業情報を毎日最大10社ほど自動的に提案する。企業情報といっても、画像と10~20文字程度の紹介文、キャッチコピーなどで構成された簡潔な内容。たとえば、「シェアハウスあります」、「退職しても復帰可能“再入社パスポート”あります」といった断片的な情報が、アプリを通じてユーザーへ届けられる。

「Yes」、「No」で振り分ける“キャリア診断”

 ユーザーはレコメンドされた企業情報を見て「気になる」か「気にならない」かを、直感的に左右のフリックで仕分けする。仕分けられた情報は次のレコメンドにも反映され、使えば使うほどマッチング精度が向上するというしくみだ。「気になる」を選択した企業は、求人情報や詳細な情報が閲覧でき、スマートフォンからの応募もスムーズに行える。パソコンを一切使わず、転職先を見つけるところから応募まで、転職活動を始めることができる。

企業を「気になる」、「気にならない」で仕分ける

 このほか企業情報として「社員のデスク」「社員の1日」といった25個の項目を、ユーザーが追加リクエストできる機能も備える。転職情報サービスでは、企業が一方的に発信するスタイルが一般的だが、キャリアトレックでは、ユーザーが求める情報を企業側が追加していき、ユーザーは、スマートフォンのアプリを通じて企業訪問をしているような感覚を体験できるのだという。

企業が期待する若手のポテンシャル

 ビズリーチといえば、ハイクラス人材向けの会員制転職サイト「BIZREACH」を運営していることで知られる。一方で、若手にフォーカスしたキャリアトレックのサイトをオープンしたのは今年4月のこと。“スマホ転職”と謳い、今回はネイティブアプリをリリースし、20代にリーチする。

 20代の若者は、「今すぐ転職したい」よりも「いい企業があれば転職したい」という声が多いと、キャリアトレックのプロデューサー関哲氏は言う。「一人前になるまで、仕事を覚えながらやっているのが20代。今の職場に満足しているわけではないけれど“まだまだ経験が足りないし、転職なんて”と考えている若者がほとんどです。我々は“潜在層”と呼んでいるのですが、その潜在層を欲しがる企業が多くいらっしゃいます」。

 潜在層について関氏は「20代の若手であれば、経験がなくても成長のポテンシャルが高く、企業も“育てるつもり”で採用を決める」と話す。そこで、「気になる」を選択したユーザーに対し、企業からアプローチすることもできるようになっているという。“いい企業があれば転職したいな”という、ふわっとした想いを抱いている若者と、若者を欲しがる企業がマッチングされるというわけだ。

検索機能を排除して、レコメンドに特化

応募もアプリ内でできる

 キャリアトレックでは、転職情報サービスによくある検索機能を備えておらず、独自のアルゴリズムによるレコメンドに特化している。レコメンドには、左右のフリックで仕分けされた情報に加え、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に似たエンジンを搭載する。

 転職に関する類似サービスは多いが、アプリのユーザーインターフェイスについては、意外にも(米国で人気の)出会い系アプリ「Tinder」を参考にしているのだという。これについて関氏は「転職も、人とのお付き合いも本質は似ている。好みか否かを“なんとなく”漠然としたイメージから、アプリを使い続けていくうちにパーソナライズされ、ユーザーの興味にフォーカスされていく」と語る。

 住所やメールアドレスなどの登録は、応募するまで不要。経歴の入力にもテンプレートが用意されている。「ユーザーの負担を極力減らし、選択肢と可能性をできるだけ広く持ってもらいたい。そのうえで、人生を左右するであろう職選びは慎重に選んでほしい」(関氏)。

川崎 絵美