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東京湾の無人島でミッションをクリアせよ! “横須賀×Ingress”体験レポート

 グーグル社内のスタートアップ、Niantic Labs(ナイアンテックラボ)が開発、運営する、リアルを舞台にした陣取りゲーム「Ingress」を観光に活かす――横須賀市が独自の取り組みをスタートした。

 Ingressでは、プレイヤーがレジスタンス(青)か、エンライテンド(緑)のどちらかの陣営に分かれて楽しむ陣取りゲーム。街中にあるアートや、史跡、ユニークな看板などが、攻防を繰り広げる“ポータル”として登録されており、そのポータルをリンクしてフィールドを拡げていく。

 横須賀市による“観光×Ingress”はどのような内容なのか。今回、体験ツアーに参加、その様子をレポートしたい。

「三笠」を味わい尽くすミッション

 去る12月18日、横須賀市では、Ingressを用いた集客事業を展開すると発表。市役所内のスタッフがIngressにハマり、その魅力を集客に活かせないか、ということで9月下旬から本格的に準備を進めてきた。横須賀市長の吉田雄人氏が、「Ingress」を提供するNiantic Labs所属の川島優志氏と大学時代の同級生で懇意にしていた、ということも後押ししたのか、横須賀周辺のポータルはこの1~2週間で急増した。

三笠公園に続く遊歩道の中には、童謡「めだかの学校」の記念碑。作詞した茶木滋が横須賀出身。もちろんポータルになっており、期せずして横須賀の歴史に触れることができた

 横須賀市が作成したミッション(ゲーム中で特定の場所を訪れる、ユーザーが作成する)が用意されている。この“横須賀市公式ミッション”は現在3種類あり、申請中のものを含めると、5種類まで用意される予定だ。

日本海海戦などで活躍した「三笠」。日露戦争の後、爆発事故に見舞われるなど、波乱の歴史を歩んだ

 “横須賀市公式ミッション”の1つは、かつて日露戦争で活躍した戦艦「三笠」が保存されている、三笠公園で楽しめる。横須賀中央駅から向かう途中でプレイし始める形で、15分~30分程度でクリア可能。歩き回るうちに、さまざまな角度から「三笠」を楽しめる。公園の中には浅い人工池もあり、“歩きスマホ”をしてしまうと足を踏み外す。人が集まる場所でもあり、きちんと立ち止まってプレイしたいところだ。なお「三笠」は記念艦として一般公開されており、東郷平八郎元帥の肉筆など、歴史的な展示もある。今回、訪れたときには、旧日本海軍の艦艇を1/500サイズで再現した模型が数多く展示されていた。こちらは個人が製作した精緻なものだという。

海からの「三笠」は、猿島へのフェリーから
三笠から見た猿島
精緻な模型にも目を奪われる。

コロッケシールドも見逃すな

 また、横須賀名物の“海軍カレー”を提供する店の1つ「横須賀海軍カレー本舗」では、Ingressエージェントを対象にした特典を用意。ゲーム中のアイテムを模して「コロッケシールド」と呼ばれ、ゲームのエージェント画面(プロフィール画面)を店員に見せると、コロッケが1つ、カレーにトッピングされる。

これが横須賀海軍カレー本舗のビーフカレー
コロッケシールドは見逃せないアイテム。市からの呼びかけではなく、店舗側が自発的に取り組む。Power Cube(体力回復アイテム)ではないか、いや寒さで堪えた身を守るという意味ではシールドか、という逡巡はひとまず置いて、熱々のうちに味わいたい

 ちなみにこの店では、人気Webゲーム「艦これ」をテーマにしたカレーを提供。さらに、現在はIngressをテーマにしたカレーを開発中とのことで、今回、カットされたソーセージが8本、ライスに突き刺さっている、という盛りつけの試作品が披露された。どうやらポータルを再現したものらしく、具材からして味に不安はないが、そのビジュアルは食欲への刺激よりも先に驚きを届けるもの。商品化される際にはどういうネーミングになるのかという点も注目したい。

目にした瞬間は「お、おう」と言うしかない試作中の“Ingressカレー”(仮)。

無人島“猿島”を訪れる

 もう1つ、今回の目玉施策が猿島での体験。猿島は、東京湾に浮かぶ無人島で、旧日本軍の要塞の遺構が一部に残る。夏は多くの観光客が訪れるものの、冬場は人出が減る。最近では、島内にある旧日本軍関連の施設跡が話題となってはいるものの「この時期、週末は200人程度の渡航」(担当者)に留まる。Ingressを楽しむ人(レベル2以上)に対しては、猿島への渡航運賃を2015年2月28日まで半額(Ingress割)とすることで、Ingressを呼び水の1つとして集客増に繋げたいという。島の名前は鎌倉時代の日蓮上人にまつわる伝説によるもので、漁師など一部では今もかつての名前である“豊島(十島)”と呼ぶ人もいるのだとか。

猿島
今回は1時間ほどで踏破できた

 島内にはポータルが15カ所ある。多くは要塞跡だが、中には、かつて「仮面ライダー」に登場した場所も。場所によっては勾配が急な階段もあるが、7年前より横須賀市が歩きやすいルートを整備しており、そのルート沿いにポータルが並ぶ。ところどころで立ち止まってIngressをプレイしても、1時間ほどで一周でき、なおかつちょっとしたハイキング気分を味わえる。なお、一部のポータルは、実際の場所とは異なるところにあって、安全にアクセスできないとのこと。なにかの拍子でアクセスできることがあるかもしれないが、現地を訪れる際には基本的に遊歩道に沿って安全な場所で行動したい。

中には、それなりに急な勾配の坂道も

 25日の体験ツアー中は、島全体がレジスタンス(青)陣営のフィールドで覆われる、といったこともあったが、その中でも横須賀市が用意したミッションを楽しみつつ、猿島ならではの風景を楽しむことができた。

島全体がレジスタンスのフィールドで囲まれた

 このほか横須賀市内には、“どぶ板通り”と呼ばれる商店街にもポータルが立ち並ぶ。昼よりも夜のほうが賑わう街並みで、「三笠」のある公園から徒歩10分程度。昼間は猿島や三笠周辺、そして日が暮れたあとはどぶ板通り、という楽しみ方もできそう。横須賀市では今後もIngressを通じた集客増を図るため、検討を進めていく。

明日26日から4日間、京急電鉄の中吊り広告で今回の取り組みが紹介される

関口 聖