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Googleが語る、これからの「アプリの品質」

アプリ開発者向けイベント「Google for モバイルアプリ」開催

 Googleは、日本のアプリ開発者を対象に「Google for モバイルアプリ Googleと切り開くアプリビジネスの未来」と題したイベントを開催した。基調講演ではAndroidやGoogle Playの現状、アプリ開発で今後求められる品質などについて語られたほか、アプリビジネスの推進を支援するGoogle Analyticsの新機能やクラウドプラットフォームでの取り組みについても担当者から語られた。本記事では、Androidの現状とアプリの品質について語られた、クリス・ヤーガ氏のプレゼンテーションについてレポートする。

Androidの現状

 基調講演に登壇したGoogle Play アジア太平洋地域統括副社長のクリス・ヤーガ氏はまず、アジア地域ではモバイルファーストの世界が当たり前になり、イノベーションがアジアで発生し世界に広がっていると語り、毎日150万台のAndroidデバイスが新規にアクティベーションされていると紹介。スマートフォンでもタブレットでも、多くのシェアをAndroidが占めているという数字を紹介した。

Google Play アジア太平洋地域統括副社長のクリス・ヤーガ氏

 また、Android端末の86%がAndroid 4.0以降で動作しているとし、パワフルな環境になっているとしたほか、マルチデバイス対応を前提としたAndroid 5.0(Lollipop)の提供などにより、テレビやウェアラブル端末にもプラットフォームが拡大していることを紹介した。これらの実績はGoogle単独の努力ではないともし、パートナー企業によるエコシステムが確立され、ユーザーに選択肢を提供できていることも示した。

Google Playの規模

 Googleが手がけるコンテンツプラットフォームである「Google Play」については、「1カ所にすべてがあり、グローバルに展開できる」と基本的な特徴を語った上で、「毎月、アプリが20億回以上ダウンロードされており、iOSを上回っている。累計ダウンロード数は500億回を超えた。日本市場は、収入ベースで世界のトップ5に入る市場になっている。2014年は、(グローバルで)2.5倍の成長になる50億ドルが開発者に支払われた」と、ダウンロードや収入の面でも大規模になっている様子を紹介する。

アプリの「品質」とは何か

 「日本の開発者には高品質なアプリを提供してもらっている。グローバル市場で成功を収めている開発者もいる」と、会場に集まったアプリ開発者に語りかけるヤーガ氏は、その品質に関する話題が今日の重要なテーマの1つだとする。

 「重要なテーマだ。ビジネスの成功で鍵を握るものだ。東京のレストランで食事をした際、出された料理の蓋が開けられるとすぐに、料理を取り替えると言われたことがある。この時出されたものが、(お店の品質基準を満たしておらず)形が悪いからだという。体験を良いものにしたいというのは、日本文化に根付いている。アプリでもその点に注目してほしい」と、品質へのこだわりを身近な例から示すヤーガ氏。

 「ではアプリの品質とは何か? 私の考えでは、それはユーザーの長期的な幸福(な体験)を願うことだ。そうすれば、成功し、高い評価を得ることができ、目立つ存在になり、さらにインストール数も増えていく」と、ヤーガ氏は長期間に渡ってユーザーを満足させる品質の重要性を語る。

 また、「アプリの品質は、Webサイトで求められるものとはちょっと違う。エンゲージメントが異なるからだ。ユーザーの時間は限られており、画面は小さく、すべてのインタラクションが大事になっている。スマートフォンの利用時間の72%はアプリの利用に割かれており、アプリの品質は重要になる」と、アプリはWebサイトとは異なる期待で利用され、それに応える品質が求められているともする。

 さらにヤーガ氏は、現代的な課題にも触れる。「もうひとつは、マルチデバイス展開だ。そこでは、体験の一貫性を保ちながら、各デバイスに最適化しないとけない」と、実際の開発ではハードルの高い項目も示し、それらを解決できるのがAndroid 5.0から大々的に導入されている「マテリアルデザイン」とする。

 「マテリアルデザインは、ホロと呼ばれるビジュアル言語、デザイン言語を拡大したもの。さまざまな大きさの画面に対応できるようにし、Googleだけでなくサードパーティにも使えるものにした。中核の概念はレイヤーやレイアウト、インタラクション、遷移などで構成され、利用した瞬間にそれが分かり、その瞬間が経過しても分かるようになっている」とマテリアルデザインについて語ると、具体的にマテリアルデザインを導入したアプリの例も示す。

 ひとつの例はマネーフォワードのアプリ。10月にマテリアルデザインを導入すると、その後2カ月でDAUの平均が20%増加したとのこと。もうひとつ例はフリマアプリのFrilで、マテリアルデザインを導入すると、ユーザーがアプリ内に滞在している時間が2倍になり、2週間後の維持率(Retention/Day)が20%向上したという。

 ヤーガ氏は、「アプリはどうやってインストールしてもらうかに集中しがちだが、素晴らしい体験により、長く使ってもらうことが良い結果になる」として、品質に、より注力していくことの重要性を語った。

 基調講演ではこのほか、フリーミアムモデルに関連した広告の活用や収益モデルの変革、Webサイトを横断する新しいインストール促進技術の開発表明、Google Analyticsで提供する、iOSアプリのトラッキング機能などの新たな取組についても、担当者から紹介された。

太田 亮三