ニュース

「ゲオスマホ」開始、「ゲオの新たな事業の柱に」

MNP即日開通も提供、通信サービスは「OCN モバイル ONE」

 4月2日、ゲオホールディングスとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)による、モバイル事業の業務提携に関する発表会が開催された。業務提携の具体的な内容については別記事で掲載している。以下では発表会の模様をお伝えする。

ゲオホールディングス代表取締役社長の遠藤結蔵氏(左)、NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長の庄司哲也氏(右)

「市場の変化はチャンス」

 発表会で最初に登壇した、ゲオホールディングス代表取締役社長の遠藤結蔵氏は、新品にこだわらずレンタルやリユースといったビジネスを手がけてきたのが同社店舗の特徴と振り返った上で、スマートフォンの買い取りや中古販売を強化している様子を紹介し、「まだまだ伸びしろのある領域だ」とする。

 NTT Comとの業務提携については、レンタルなどを中心とした同社の約2000万人の会員数からすると、中古端末の利用は前述のように伸びしろがあり、新たなサービスを提供する上で、NTT Comと方向性や考えが一致したという。遠藤氏は「変化はチャンスと捉えている」と同社の理念と意気込みが示された。

 NTTコミュニケーションズからは、代表取締役副社長の庄司哲也氏が登壇した。庄司氏は、モバイル事業として「OCN モバイル ONE」に力を入れている様子を語る。

 ゲオとの業務提携の狙いについては、1000店を超える実店舗や、店舗が生活圏内に多いこと、会員の来店頻度が高いことなどを挙げ、「まだ『OCN モバイル ONE』を知らない人にも提供できる」と狙いを語る。「レンタルのついでにSIMカードを買っていくような、買いやすい、新しいスタイルも追求していく。変革のときこそチャンスという理念におおいに共感した。ユーザーや店舗の声をききながらきっちりとやっていきたい」とし、NTT Comとしても、実店舗を中心にした新たな取り組みに位置づけている様子が語られた。

ゲオホールディングス代表取締役社長の遠藤結蔵氏
NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長の庄司哲也氏

「OCN モバイル ONE」責任者がMVNO事業を説明

 NTTコミュニケーションズ 取締役 ネットワークサービス部長の大井貴氏からは、「OCN モバイル ONE」について説明された。

 大井氏は、MVNO市場が予想よりも早く拡大しているとするデータを示しながら、「揺籃期(幼年期)から、新しい成長の段階に入っていると認識している」と、新たな拡大の時期にきていると指摘する。

 大井氏は、MVNO市場が拡大した最初のトリガーは料金とし、その次の理由として「ひとことで言うと、多様化」と分析し、SIMロックフリー端末の拡大や、中古端末市場の拡大といった“選択肢の広がり”を挙げる。

 さらに5月のSIMロック解除の義務化や、総合スーパーでも販売されるといった市場の多様化も追い風になっているとする。

 調査機関のデータでは、独立してMVNOサービスを提供する事業者の中で、NTT Comの「OCN モバイル ONE」のシェアが1位と報告されている。大井氏はこの結果について、料金スタイルの柔軟性、サービスの利用に便利なアプリの提供、容量繰り越しや複数SIMの施策、音声通話SIMでも最低利用期間を半年と短く設定しているなどの特徴が支持されているとする。

 また、「今までは30~40代の、高リテラシーのユーザー向けに、Webサイトで販売してきた。ITリテラシーに関わらず、選択肢としてもらえるようにしたい。(実店舗で展開することで)20代やシニア層にも販売できる。揺籃期から成長することに大きな期待をしたい」と、さらなる拡大に期待している様子を語った。

NTTコミュニケーションズ 取締役 ネットワークサービス部長の大井貴氏

ゲオ森田氏「モバイル事業を新たな柱に」

 ゲオ モバイル運営部 ゼネラルマネージャーの森田広史氏からは、今回の取り組みが具体的に説明された。

 ゲオとして、これまでも中古端末の買い取りや販売は行ってきたが、森田氏は今回の業務提携を「モバイル事業拡大の新たなスタート」と位置付ける。

 ゲオの特徴を「圧倒的な直営店舗の数とスピード、マネジメント力に尽きる」と自己分析した森田氏は、中古端末の市場は、事業者が増えているものの、通信販売が中心で、安さのアピールだけが先行しているとし、「品質や使い勝手はどうなのか。まだまだ一般消費者には分かりづらい。(今回の展開では)経済的メリットだけでなく、店頭接客で応えられる」とモバイル専門店を中心に拡大させていく強みをアピールする。

 同社は2014年度から、中古端末に加えてSIMカードの販売も実施するなど、モバイル事業を本格的に展開している。森田氏によれば、これまでの実績として、SIMカードの購入者は30代が多く、そのうち4割は中古端末も同時に購入しているという。「これはSIMと中古端末の相性がいいという裏付けで、拡大が望める。しかし、まだまだ知らない人は多い。SIMや中古端末のことを聞いたことがあっても、利用には至っていないのがほとんど」と課題も挙げる。

 森田氏は、シニア層やライトユーザーに拡大していく上で、音声通話への対応は欠かせないとし、ゲオモバイルアキバ店で試験的に導入した、MNPの即日開通の実証テストの結果も明らかにされた。

 MNP即日開通に対応した販売テストでは、「OCN モバイル ONE」について、トライアル期間(2014年12月7日~26日)の初週で70枚(実施の前週は13枚)、20日間で合計176枚を販売したとのこと。また、好評だったため、2015年1月13日から販売を再開し、2月は326枚を販売したという。森田氏は「予想通りの反響」と手応えも語っている。

 「NTT Comとの事業提携で、ゲオのモバイル事業が格段に飛躍できる。我々のコンテンツ事業にも相乗効果があるだろう」と、提携が重要な取り組みになっている様子を語ったほか、専門店「ゲオモバイル」では対面販売が市場拡大に繋がるという姿勢で、「スマホ相談員」を常駐させることも紹介。「スマホやケータイで困ったらまずはゲオへ」(森田氏)とアピールした。

 森田氏は「SIM未体験のユーザーに向けて、我々のマネジメント力を発揮していく。モバイル事業を新たな事業の柱にしていく。端末の販売は(中古を含めて)100万台を目指す」と具体的な目標も掲げられ、モバイル事業を大々的に展開していく姿勢が示された。

ゲオ モバイル運営部 ゼネラルマネージャーの森田広史氏

「ゲオモバイル」3年以内に100店舗へ

 質疑応答の時間には、100万台の販売目標について聞かれた。ゲオでは直接、新品のスマートフォンを販売するのは今回が初めてで、100万台のうち、10%程度を新品にしたいという目標がゲオの森田氏から示された。

 また、2014年度の中古端末の販売は約30万台だったとした上で、販売数の伸びなどから、100万台という数値が設定されたとした。SIMカードの販売については、NTT Comの庄司氏は「(100万台のうち)2割程度にSIMが入れば」との見方が明らかにされた。

 モバイル専門店「ゲオモバイル」の店舗展開については、政令指定都市や大都市を中心に、「3年度以内に100店舗を目指す」(ゲオの森田氏)と目標が示された。また、ゲオの店舗も半数が通信サービスを販売する店舗を目指すという。

 訪日外国人向けの対応を聞かれると、森田氏は、すでに免税販売を行っていること、店舗によっては3割程度が訪日外国人で、円安などで販売が拡大していること、外国人スタッフの拡充や、スタッフに対して外国人向けの接客指導を行っていることなどが説明された。

 実店舗を展開するほかの企業との取り組みの可能性について聞かれると、NTT Comの庄司氏は、「リアル店舗はこれが初めて。実証する必要があるだろう。ほかの販売チャネルは、今は考えていない」とする。一方、「訪日外国人向けサービスもやっているが、ゲオで扱ってもらえるかどうかなど、これからもいろいろやっていきたい」と、今後も検討を行っていく姿勢が示されている。

 NTT Comに対しては、ドコモが3月末に総務省に届け出た“接続料”が、過去の低減率よりも下がらなかったことで、MVNOとして影響が出ているかどうかも聞かれた。NTT Comの庄司氏は、「ドコモとの関係があるのでコメントできない」と具体的な内容は避けたものの、「まだ市場として、成長性、収益性が確立していない。多様化する中で、価格や供給のバランスをとりながら利益を出していきたい。模索中だということ」と語った。同社は、2014年度の接続料の低減率を“比較的低め”に見積もっており、実際の影響は大きくなかったとみられる。

太田 亮三