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ドコモ2014年度決算は“新料金プラン”で減収減益、他社との協力深める「+d」も

 NTTドコモは、2014年度の業績を発表した。昨年6月に導入した通話定額など新料金プランの影響で営業利益が前年度から22%減少した。一方、純増数は前年度の2.2倍と順調な伸びを示した。また中期目標に向けた取り組みとして「+d(プラスディー)」と銘打ち、他社とのパートナーシップをさらに推進する方針も明らかにされた。

NTTドコモの加藤社長

2014年度の業績

 ドコモの2014年度の業績は、営業収益が4兆3834億円(前年度比-1.7%)、営業利益が6391億円(同-22%)になった。セグメント別に営業収益と営業利益を見ると、通信事業は3兆6546億円/6361億円、スマートライフ事業が4370億円/-39億円、その他が3198億円/69億円となった。スマートライフ事業が赤字になったのは、NOTTVを展開するmmbiの資産について減損処理(302億円)を行ったためで、一時的な損失である減損処理を除くと、スマートライフ事業も実質的には黒字と言える内容だ。

 1200億円の削減を実現したコスト効率化は、2015年度、さらに増えて2100億円の削減を目指す。これは設備投資や販促ツール、研究開発などを見直して実現していく構え。こうした取り組みにより、2015年度の業績予想は、営業収益が4兆5100億円(1266億円増)、営業利益が6800億円(409億円像)を目指す。

オペレーションデータ

 2014年度、NTTドコモの純増数は349万件(前年度比2.2倍)となった。MNPは38万件の転出超過となったが、2013年度の123万件のマイナスと比べ、約85万件の減少(70%減)と大きく改善。さらに解約率も0.71%(前年度は0.87%)と低下した。

 端末販売数は2375万台(新規898万台)で、そのうちスマートフォンは1460万台、タブレットは173万台。特にタブレットは前年度の99万台から大きく伸びた。

 スマートフォンの利用数(契約数)は2875万件。1年前の2435万件から18%、増加した。また、スマートフォン契約数のうちLTE対応の契約は92%を占める。

 ARPU(1契約あたりの収入)は5240円。このうち音声ARPUは1710円、パケットARPUは2890円、スマートARPUは640円となった。音声とパケットは第3四半期と同額で、ドコモでは減少傾向が底打ちしたと見る。

 利益減少の要因となった新料金プランは、4月5日付けで1800万契約となった。昨年10月に1000万契約となっており、約半年で800万件増加した。収支に対する新料金プランの影響は、2014年度、1070億円のマイナスとされているが、月単位では、昨年11月をピークに回復基調にあり、2015年度の業績への影響は数百億円になると見られている。

ドコモ光は23万件、対応に遅れ

 3月1日にサービスが開始された「ドコモ光」の申込数は、3月末時点で23万件に達した。ただ、ユーザーからの要望に対し、対応が遅いこともあったとのことで順調な立ち上がりだが、対応が遅れぎみになった。お詫び申し上げます。鋭意改善に努力している」と加藤社長はコメント。

 ドコモ光を申し込んだユーザーのうち2割は、新料金プランのパケットパックで上位プランを選択。また3割がモバイル回線を新規契約した。さらにドコモ光ユーザーの6割が、新料金プランのシェアパックを選択しており、家族で利用されている様子が見てとれる。

2015年度に300Mbpsへ

 2014年度の設備投資額は、6900億円という計画を下回り、6618億円となった(前年度は7031億円)。そうした中でも100Mbps対応基地局の数は想定を上回り、5万7700局に達した。

 2015年度の投資額はさらに下回り、6300億円になる計画。高速性能はさらに強化され、現在、下り最大225Mbpsとなっているところ、2015年度中に300Mbpsを実現する。

「d+」でパートナーシップを拡大、ポイントサービス、電力……

 ドコモでは2014年10月、利益の回復やコスト削減などを進め、競争軸の転換をはかる中期目標を発表。その取り組みとして、今回、他社とのパートナーシップをさらに拡大する方針や、ドコモのサービスの名称変更などを実施する。

 サービス名称については、ドコモポイント→dポイント、ドコモプレミアクラブ→dポイントクラブ、DCMX→dカード、docomo ID→dアカウントと、「d」を冠する名称にする。

 また他社とのパートナーシップで、「IoTの拡大による新ビジネスの協創」「社会的課題の解決」「地方創生」「2020年を見据えたビジネス」を展開する。あわせて同社のスローガンをこれまでの「手のひらに、明日をのせて。」というものから今後は「いつか、あたりまえになることを。」と変更。ユーザーの生活に対して付加価値の提供を目指す。

 ただし今回は方針の発表に留まり、サービスの詳細は明らかにされなかった。それでも、加藤社長が示したプレゼンテーションの資料では、ポイントサービスを中核に、新たな商流を作り上げることがうたわれている。加藤氏は「(これまでのドコモの商品向けポイントという立ち位置から)一歩踏み出そうと思っている」とコメントし、利用可能な場所、あるいはポイントを貯められるサービスを増やす考えを明らかにした。

 また電力系との協力については「その方向だと思う」と述べて、何らかの協力関係を構築する方針を示す。ただ、その内容は「いろいろなサービスを考えているが公表できない状況」と説明し、検討中とした。また生命保険、損害保険のようなサービスについても「ノウハウをお持ちのところとコラボするのが基本」と述べ、こちらも検討中であり、準備が整えば発表するとした。

 具体的なサービスは今回明らかにされなかったが、加藤氏は「組み方はいろいろある。私たちのブランドではなく、相手先のブランドで提供することもあるだろう。基盤、仕組みを提供させていただければという面もあり、ポイントサービスを中心とした商流の作り方、というコラボでは両社という形になる。いろんな形があるだろう」と柔軟な姿勢で、ドコモの顧客基盤をベースに、さまざまな分野で展開する姿勢を示した。

「フィーチャーフォンはなくならない」

 一部報道で従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)が今後なくなる、とされた件について加藤社長は「物理的に部品がなくなる時期が来る。ただし、テンキーで操作できる携帯電話はずっと提供する。フィーチャーフォンはなくならない」と断言した。

MVNO市場、注視の構え

 格安スマホなどで話題を集めるMVNO市場については、2015年度の業績への影響を盛り込んでいない、としつつ、「全く新しいアイデア出てくるかもしれない。影響を注意深く見守りたい」と述べる。ドコモ自身がMVNOのサブブランドを展開するかどうかは、「検討中だが、結論に至っていない。グループにもMVNO事業者がいる。MVNOの新しさ、新たな領域が出てくるだろう。検討を深めたい」と慎重な姿勢を示した。

関口 聖