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KDDI ∞ Labo、シューズフィッティングの「シンデレラシューズ」が最優秀賞

次期はハードウェアのスタートアップの支援部門も

 KDDIは、スタートアップ企業、エンジニアを支援するインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」の第8期の結果を発表した。最優秀賞には、女性が靴を選びやすくなるシューズフィッティングサービス「シンデレラシューズ」が選ばれた。14日に行われた「Demo Day」会場の来訪者に選ばれるオーディエンス賞も「シンデレラシューズ」が選ばれた。

KDDIの高橋氏(左)とシンデレラシューズの松本 久美氏

靴のデータベースから自分の足にあう靴を

 「シンデレラシューズ」は、スマートフォンで足を撮影、その画像を送ると、足の特徴を分析して、取り扱う靴のなかからフィットするものを選び出すサービス。側面や上面など、4枚の写真を撮影して送ると、KDDI研究所の画像認識技術、独自で構築した靴のデータベース、そしてオリジナルのアルゴリズムによって、足の特徴を踏まえてフィットする靴をリコメンドしてくれる。

 KDDI ∞ Laboでの支援を通じて、靴のデータベースの構築、ビジネスモデルの検証、アルゴリズムの開発が進められた。

 女性のユーザーに向けたサービスとなっており、「ハイヒール=痛い、という常識を覆す」というコンセプトを掲げる。価格やデザインに加えて、足へのフィットという評価軸を新たに生み出した点や、独自性、市場性などから最優秀チームに選ばれた。

第9期にはハードウェア企業も支援

 第8期の終了にともない、7月14日からは第9期の参加チームの募集がスタートした。新たに「ハードウェアプログラム」が用意され、モノ作りを手がけるスタートアップを支援する。プログラム終了後も、クラウドファンディング、KDDIの販路の活用などで支援していく体制を作り上げる。

 第8期の参加チームのうち、通信対応のセンサーモジュールで巣箱の様子を管理できる養蜂家向けの「Bee Sensing」、そして照明とプロジェクター、カメラを組み合わせて灯りがつくと離れた場所にいる家族とテレビ通話が楽しめる「LYNCUE」がハードウェア開発をともなったスタートアップ。KDDI新規ビジネス推進本部戦略推進部長で「KDDI ∞ Labo」長(ラボ長)の江幡智広氏は、Bee Sensingは開発メンバーがハードとソフト、両方の知見を備え、3カ月間のプログラム中に一定のレベルまで製品の開発が進み、実証実験までこぎつけた、と説明。もう一方のLYNCUEは、基板設計や制御するためのソフトウェアに関する知見が少なく、メンターである日立製作所の力を借りて、ある程度の開発を進めた。ただし、日立からは「コンセプト通りのものを日立側で全て作ることはできる。しかしそれではLYNCUE側の成長に繋がらない。3カ月という(従来のKDDI ∞ Laboの)期間では足りない」と指摘があったのだという。

Bee Sensing
巣箱の中にセンサー

 ハードウェア開発は、アプリやWebサービスの開発と異なり、プロトタイプにこぎ着けるまでの試行錯誤、製造ラインの整備、そしてリアル店舗という販売チャネルの開拓、という課題がある、とKDDI新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏。ネット販売という手もあるが、ある程度、ボリュームのある販売数を目指すためには、リアル店舗での販売が重要という。ハードウェア専用の支援プログラムを用意することにあわせ、KDDI ∞ Laboから卒業した後も、ビジネスとして成立していく際も支援を継続していく。

Bee Sensingのアプリ。巣箱を観察し、記録していく

パートナー企業にグーグルなど

 参加メンバーの相談に乗り、アドバイスしていく存在(メンター)として、KDDI以外の企業も参画する「パートナー連合プログラム」へ、新たにグーグル、住友不動産、三菱UFJニコスが加わった。雨宮氏は「世界的な企業であるグーグルには、起業に関するノウハウは、我々と違い、加入済のパートナー起業とも違うところがあるだろうと期待している」とコメント。

ラボ長の江幡氏(左)と新規ビジネス推進本部長の雨宮氏(右)

 また地方自治体でも、大阪市に加えて、石巻市、広島県、福岡市が加わることになった。これまで協力してきた大阪市は、もともと「Hack Osaka」といったイベントを開催していることもあり、KDDI側からアプローチ。他の地域については、一定の活動があるということでKDDI側から話を持ちかけて参加することになった。

高橋氏が語るスタートアップの今

 KDDI代表取締役専務でバリュー事業本部長の高橋誠氏は、「ハード開発は3カ月じゃできるはずがない、と日立さんから言われた」と第8期を振り返る。KDDI ∞ Laboを通じて、スタートアップとさまざまな大手企業との間でコミュニティが形成されつつあり、スタートアップ企業からはやりたいことを、パートナー企業からは提供可能な資産を挙げてもらい、KDDIとしてはそれらの間を取り持ち、これまでに70件のコラボ案が出てきたと説明する。

 一方、現在の市場は、IoTへの注目が高まり、モノ作りの機運が高まっているなかで、ただ製品を作るだけでは持続していかないと高橋氏は分析する。KDDI ∞ Laboにもハードウェア系の応募が増えており、トレンドとしては盛り上がりつつあるものの、国内での支援体制は不十分との認識を示す。

 ハードに限らず、起業への支援は、国内では政府や自治体が本腰を入れてきている。こうした動きにあわせる必要性も感じていると語る高橋氏は、スタートアップにおいては「ベンチャーキャピタルや支援者との接触」→「営業開拓やプロモーション」→「成長を加速するための提携パートナー」といくつかの局面があるとの分析を示しつつ、フェーズごとの支援がさらに必要とする。こうした課題を示しつつ、第9期からは、グーグルや三菱東京UFJニコスなどがメンタリング企業として参加することになり、さらに支援の体制を拡充することをアピールした。

 地方との連携に関して高橋氏は、たとえば第8期のメンバーであるBee Sensingと広島県という組み合わせ、広島県内の遊休地でBee Sensingを用いた養蜂を進めることで、地域振興に繋げる、といったアイデアを披露。こうした取り組みを進めたいと意気込んだ。

関口 聖