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「日本人は、犠牲を強いる技術革新の受け入れを真剣に考えないといけない」

IIJ会長兼CEOが指摘する日本社会の深淵な課題

 「日本は遅れるのではないか。仕組みを変えるのが苦手なようだ」「日本人は、犠牲を強いる技術革新の受け入れを真剣に考えないといけない」

 記者懇親会で会場に集った記者や自社の役員を前に、登壇したインターネットイニシアティブ (IIJ)代表取締役会長兼CEOの鈴木幸一氏は、日本の社会や、日本人の意識に対し、変化を促す警鐘を鳴らした。以下は鈴木氏の発言の抜粋と要旨である。

インターネットイニシアティブ 代表取締役会長兼CEOの鈴木幸一氏

 鈴木氏が語ったところは、インターネットとそれがもたらす変化は、世界中で社会の多くの場面に影響しており、インターネットの浸透で起こる雇用と雇用構造の転換、雇用の流動性の向上、社会の仕組みの変化を、日本でも恐れず受け入れ、変化を推進させていく必要がある、というものだ。

 鈴木氏が警鐘鳴らす背景には、欧米、特にドイツで進展している「インダストリー 4.0」の流れに、工業国である日本が乗り遅れていることにある。

 第4次産業革命とも呼ばれるこの流れは、インターネットの普及やIoTの拡大など、さまざまな要素からなり、デジタル化とインターネット化された生産設備が、これまでにない超低コスト化をもたらすとされる。また、オートメーション化も進展するため、雇用構造の変化など社会への影響も小さくない。すでにドイツでは、自動車産業や大企業を含む産官学の連携で大規模なプロジェクトが始動しており、首相が展示会を視察するなど、国全体で推進していく方針を打ち出している。

 鈴木氏は、このような、産官学が連携し国全体で進めていくような取り組みは、産業構造や社会の仕組みにも大きな変化をもたらすとし、「(欧米には)技術革新が起こっている時、職を奪われることを受け入れる土壌がある」とも指摘する。

 「ドイツでは、新しい社会の仕組みが出てくるとき、標準化や規格化を進める。日本以上に一体となって、産業を超えて、同じ規格の上で、自ら新しいインダストリーシステムを作っていく。こうした方法論が、ドイツの産業力を圧倒的なものにしていく。社会の仕組みを変えるには標準を作っていなかければならない。そうしなければ変わっていかない。まだ時間はかかるだろうが、製造業でもインターネットをベースにし、標準化により、変わっていくだろう。日本が得意だった産官学の取り組みと同じ認識にたっている」。

 「しかし日本では、例えばメガバンクは数千人のシステムエンジニアの雇用を維持することを前提にしており、クラウドコンピューティングにコストメリットを見いだせていない。今では世界のCOBOLエンジニアの半数が日本にいると言われている。昔は“追いつけ追い越せ”で大胆なことをやって、発展していった。産官学一体で“護送船団”などと呼ばれながらも、技術革新に取り組んでいった。最近は、具体的な取り組みにならない。人口10万人に満たない地方自治体でもサーバーを独自に管理し、(雇用を含めた)無駄な仕組みを壊せない」。

 「今起こっていることは、(一時的な)犠牲を強いるような技術革新だ、それを受け入れられない社会で、どうやって社会の仕組みを変えていけるというのか。最近はそれが、日本では難しいのではないか、と悲観的な気持ちが強くなっている」。

 「豊かさを得て、日本では仕組みそのものを変えることに、ナーバスになっている。インターネットは昔はアナーキーだと言われ、役所は、コントロール下にないことに不信感を募らせていた。しかし今、インターネットは究極の監視下にあり、すべてが明らかになる世界であり、また嫌がられている。世の中がまったく変わってしまうこと、それを推進しない限り、グローバルな意味での技術を目指すのは難しいだろう。日本人は犠牲をもって変えていく勇気がない。世論もないし、仕組みもない。決断するトップもいない。これは政治もそうだ。社会の仕組みを、変化に対応させないと、これからのインターネットがもたらす新しい産業形態でリーダーシップはとれない。インターネットは電気の発明やコンピュータリゼーションよりも深刻な変化をもたらす。受け入れなければリーダーシップはとれない。日本人は、受け入れを真剣に考えないといけない」。

懇親会での展示
右は販売をはじめたファーウェイの「P8lite」
訪日外国人向けの「Japan Travel SIM」

(太田 亮三)