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「おもてなしクラウド」で歓迎、2020年見据える総務省のアイデア

 総務省は28日、「2020年に向けた社会全体のICT化アクションプラン(第一版)」を発表した。2020年夏に開催される、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さまざまな“壁”をなくすことを目標とした同プランでは、次世代の通信技術、多言語翻訳、放送の4K/8K化などの推進が掲げられている。

 アクションプランでは、「都市サービスの高度化」「高度な映像配信サービス」を実現するため、世界最高水準のICTインフラを整備していく方針が示された。

アクションプランの概要

インフラを整備し、進化したサービスを

 インフラの具体的な内容として、1つは「5Gの実用化」が挙げられる。現在、4G(第4世代サービス)であるLTE-Advancedが広まりつつある日本だが、2020年には次世代の第5世代の通信サービスの実用化を目指す。具体的な技術は、グローバルでこれから詰めていく5Gだが、そこで実現する内容としては「通信容量は現在の1000倍」「通信速度は10Gbps」「接続機器数が100倍」と、大容量、さらなる高速化、IoT対応といった内容になる見通し。2017年度から実証実験が進められる。

 また公衆の無線LAN(Wi-Fi)サービスも無料のものを整備していく方針。主要な公共エリア約2万9000カ所に整備される方針。たとえば空港などで一度、ユーザー登録すると、観光地や宿泊施設、駅、カフェ、商業施設のアクセスポイントも簡単に利用できる、という“認証連携”を整備するイメージが示されており、2015年から認証連携の実験が進められる。

 こうした通信インフラの高度化にあわせて、大会を観戦するため日本を訪れる外国人との言葉の壁をなくすため、多言語翻訳システムも整備される。スマートフォンに話しかけると、外国語に翻訳して音声で出力する、といった仕組みが想定されており、病院や商業施設、公共交通などでの利用が想定される。また公共交通の情報をオープンデータとして利活用できる環境も整える。空港や観光案内所、駅などでは、目的地までの経路案内を、オープンな公共交通のデータを使ったワンストップサービスに仕立てて、スムーズに行えるようにする。

 街のいたるところにはデジタルサイネージが設置され、普段は観光情報、競技情報を提供し、いざというときには災害情報も多言語で配信する。Wi-Fiのアクセスポイントとしての機能も用意され、スマートフォンとも連携して、美術館や博物館、レストランなどのクーポンが配信される。

 このほか、4K/8Kといった高精細な映像配信の実用化も進められる。CSやBSでの実用化が見込まれている。

 アクションプランでは、オリンピック・パラリンピックという大規模なイベントに向けて、訪日客の利便性向上などをはかる一方、台風や地震などが発生してもスムーズに情報を配信できることも目指す。

スマホやICカードで便利に

 招致の際には、「おもてなし」がキーワードとなったことで、総務省のアクションプランで描かれるユースケースでは「おもてなしクラウド」「おもてなしポータルアプリ」「おもてなしICカード」といった言葉が並ぶ。

 ユースケースで示される「おもてなしICカード」の利用イメージとして、たとえば新幹線チケットや、どの言語を使うか、車椅子が必要かどうか、といった情報を交通系ICカードに登録しておけば、デジタルサイネージにかざすと、ビジュアルでわかりやすく道案内を行う。

 宗教上の理由、あるいはアレルギーなどで口にできない食べ物がある場合も、そうした情報をICカードに登録しておけば、レストランを利用する際にもかざすだけで店舗側に情報が伝わる、という仕組みも想定される。

関口 聖