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「ポケモン」新プロジェクト、Ingressのナイアンティックとコラボ

新ゲーム「Pokemon GO」、2016年提供へ

 株式会社ポケモンがIngressを開発するナイアンティックとコラボして、スマートフォン向けゲーム「Pokemon GO(ポケモンゴー)」を2016年に提供する。iOS、Android向けに基本プレイ無料、ゲーム内課金で提供される予定。

 ポケモン代表取締役社長の石原恒和氏は「これまで大がかりな発表会をしたことはなかったが、直接伝えたいと思った。実は2年にわたり、任天堂の岩田(聡氏、2015年7月逝去)さんと取り組んできた。本来ならば一緒に発表したいと考えていた。そんな想いもあって、発表の場を設けることを決断した」と語り、発表会が始まった。

左からゲームフリークの増田氏、ポケモンの石原氏、ナイアンティックのハンケ氏、任天堂の宮本氏

 開発は、Ingressを提供するナイアンティック。グーグル社内のスタートアップだったが、先日独立した。これまでIngressでは、他企業とコラボする場合、Ingressのゲーム内に影響を与える形だったが、今回はIngressの仕組みをもとにした別のゲームとして提供される。

 10日の発表会には、石原氏のほか、ナイアンティック創設者で、CEOのジョン・ハンケ氏、ポケモンの開発に携わってきたゲームフリーク社の増田順一氏、そしてビジネスパートナーとなる任天堂からは、代表取締役専務の宮本茂氏が登壇した。

Pokemon GOはどんなゲーム?

 スマートフォン向けに提供される「Pokemon GO」は、日本だけではなくグローバル向けに提供され、できる限り複数の言語に対応していくという。

 2016年提供予定とあって、今回発表された情報は限られている。だが鍵となる要素は「現実世界が舞台」「スマホの位置情報を使う」「ポケモンを捕獲、交換、バトルができる」といった点だ。

 ポケモン社では、モニターのなかだけで完結せず、実際に外出してポケモンを探したり、他のプレイヤーと出会って楽しめる、と説明する。発表会で披露された映像では、自分のポケモンが攻撃されていたり、他のユーザーと交換したりする様子が示され、質疑でも「Ingressとポケモンの両方を遊んでいる方がどれくらいいるかわからないが、(両方遊んでいれば)かなりイメージできるだろう。スマホを持って街に出て、マップ上でポケモンを見つける。見つければ捕獲しようとする。捕まるか捕まらないか、それを繰り返して、そしてバトルしていく。それに近いゲームができるだろうと思っている」と石原氏は解説する。

 またどのようなバトルになるのか問われると、石原氏は「Ingressではポータルがあり、そこに対して攻撃を仕掛ける。それがポケモンだとどうなるのか。あまり言えないが、たとえば秘密基地のようなものがあるとか、そういったものに対してどうアクセスするのか、というのがバトルのヒントになると思います」と、明言を避けつつコメント。

 ポケモンの交換については「非常に魅力的なコア要素。サーバーを経由したゲームなので、ユーザーがどうしたいのかだいたい想像できる。そこから考えていきたいし、そこは重要な、現在検討中の大事なポイント」と慎重に回答した。

「冒険をもたらす」ナイアンティック

 ナイアンティックCEOのハンケ氏は「石原さんに初めて会ったとき、石原さんはすでに高レベルなエージェントでした。ビジョンを共有し、新しいポケモンを開発できることに、とても興奮しました」と振り返る。

ハンケ氏と石原氏

 人々が友人や家族とともに、世界を探索して、知識を深められることを目指してナイアンティックは設立され、「Ingress」は現在、数百万人にプレイされている。現実では何気ない公園やアートなどが、ひとたびIngressの世界に入ると、エージェント同士が戦う舞台だ。Ingressを通じた新しい体験は「現実世界で繋がれること」とハンケ氏はアピール。そうしたインタラクティブ性がIngressを楽しむ人々に強く影響を与え、中には結婚して子供が生まれたという話もあるのだという。

 これまでも、Ingressの情報をプラットフォームにして、別の作品への活用を図る計画は明らかにされており、米国で100万部売れたというSF作品「エンドゲーム」のスマートフォン向けゲームが今後登場する予定だ。

 Ingressをベースとして新しい楽しみ方を提案する「Pokemon GO」についてハンケ氏は「ポケモン、任天堂とともに、Ingressの長所とポケモンを合体させて、ポケモンを現実世界に持ち出そうとしている。石原さん、そして生前の岩田さんが描いていたように、このゲームは家族全員で安心して楽しめる。外出して新鮮な空気を吸って、新しい場所を発見するモチベーションを与えてくれる。Pokemon GOでは、プレイヤーは世界中の公園、ショッピングモール、田舎町など、世界中のありとあらゆる場所でポケモンを捕獲できる。サンフランシスコの水辺にいるゼニガメ、新宿駅にいるフシギダネ、エッフェル塔にいるピカチュウを想像してみてほしい」と、現実世界での楽しみ方を伝えた。

ウェアラブルデバイス「Pokemon GO Plus」

 スマートフォンの画面を見ずとも、近くにポケモンが出現したら、LEDで通知する、という専用デバイス「Pokemon GO Plus」も用意される。価格は未定だが「お求めやすい価格で届けられるように任天堂と協議している」と石原氏。

Pokemon GO Plusを紹介する石原氏

 同氏は「スマホを見続ける人がいる。スマホを見続けなくても遊べるデバイスを任天堂とともに開発した」と「Pokemon GO Plus」を提供する背景を紹介する。Bluetooth Low Energy(BLE)でスマートフォンとペアリングし、「ピカチュウが現われた」などとゲーム内のイベントが発生すると通知してくれる。ボタンを押すと、モンスターボールを投げてポケモンを捕まえることもできる。ちなみに、ディスプレイや音声ガイドはなく、LEDとバイブで伝える。バイブの鳴動はスマートフォンのマナーモードのような動作に近いとのことで、「プレイヤーへ自然に気付かせる」ことを目指して開発が進められた。

 石原氏はPokemon GO Plusの有無によって、機能やサービス内容で、大きな差を設けるつもりはない、としつつ、「そうは言っても、やっぱり持ってる人がちょっとトクをして、持っていない人が『それズルい』と思わないような、サービスや面白さの差は出てくると思う」とした。

 またPokemon GO Plusの開発に携わった、任天堂 代表取締役専務の宮本茂氏は「本日はスーパーマリオメーカーの発売日だが、宣伝のためではなく、このために(東京に)来た」と述べてから、説明をスタート。今回の説明会で上映された映像を初めて目にしたときには、岩田氏とともに開発した「ポケモンスナップ」を思い出したのだという。

 宮本氏は「任天堂はいろんなゲーム機を作ってきたが、全て、ゲーム人口をいかに拡大するかがミッションだった。今日発表したPokemon GOも、そのミッションを現実にするものだと確信している。Pokemon GO Plusによって幅広い人に楽しんでもらえればと思う」とにこやかに話した。

任天堂の宮本氏

ポケモン完全新作との連携も示唆

 これまでのポケモンシリーズにディレクターとして深く関わってきたゲームフリーク社の増田順一氏は、今回も世界観の構築、ゲームデザイン、音楽面に参加する。

増田氏

 増田氏は「みなさん、この地球上へついにポケモンが登場することになった。探し出してモンスターボールを投げて捕まえる。捕まえたポケモンでバトルする。シンプルだが幅広い世代が楽しめるよう開発している。ポケモンはペットというより人に近い、友達のような不思議な生き物だと考えている。そのポケモンがどんな力を持ち、どんな場所に住んでいるのか。ポケモンが持っている新しい可能性を導き出せるよう、これまでの常識を取り払ってナイアンティックと開発している」とコメント。

 さらには今後登場するであろうポケモンの完全新作とも「どのような関係を持つか考えている」と述べた。

ポータル情報、どう活用?

 Ingressでは、ユーザーからの投稿により、街中のアートや寺社仏閣、歴史的な遺物などが、位置情報ともに「ポータル」として登録されている。Ingress上では、こうしたポータルをプレイヤー同士が奪い合う格好だが、石原氏の説明から、「Pokemon GO」ではそのポータル情報をフックにポケモンが出現する、といった形が予想される。

 その一方で、ポータルは観光地やランドマークだけに存在するのではなく、住宅地のなか、あるいは富士山山頂など、いたるところに用意されている。これらも「Pokemon GO」で活用するのだろうか。石原氏は「我々もはじめ、一番そのことを大切に考えた。親子で遊ぶゲームとして、屋外でどういう場所が適しているのか。交通の問題や、山の上のような場所もある。長い議論を重ねてきた。何よりもIngressがβテストから3年間の実績があり、ポータルがどこにできて、どんな形でコントロールフィールドが作られたか。学習やデータを大量にいただいて、ポケモンにとって安全性や家族とともに遊べる面白さを表現できるよう、ポータルを利用していきたいと考えている」と回答した。

 またベースとなるIngressとそれを元にする「Pokemon GO」の関係について、ジョン・ハンケ氏は「世界観それぞれは別のものになるが、それぞれのゲームのプレイヤーが交流したり、宣伝しあったりすることはあると思う」と述べた。

課金「射幸性あおる仕組みとは真逆に」

 基本プレイ無料のゲーム内課金となるが、「高額課金」との兼ね合いについて質問も挙がる。

 石原氏は「まさにその部分は一番熱心に議論しているところ。多くの人が、薄く広い課金によってフェアに遊べる仕組みを作っていきたい」とコンセプトを示す。

 そして具体的なシステムにはまだ触れられないと前置きした上で「少なくとも、少数の人間が、射幸性高く高額課金するような仕組みとは、真逆の方向で考えていきたい」と述べた。

現実に影響を与えてきたポケモン

 発表会冒頭から、急逝した任天堂の岩田氏との関わりが示された「Pokemon GO」がなぜIngressを提供するナイアンティックとの協力で、生み出されることになったのか。

 2014年のエイプリルフールには、グーグルの「Google Maps」では、ポケモンとのコラボが実施され、地図上でポケモンを探し出す、という遊び方を1日だけ実現していた。このときの企画において、現在、ナイアンティックの日本人スタッフである須賀健人氏は、グーグル側の一員として、そのコラボに携わった。そしてこの夏までグーグル社内の組織だったナイアンティックの創設者であるジョン・ハンケ氏は、かつてGoogle Mapsの開発にも幹部として関わっていた。

 こうした関係が根底にありつつ、石原氏は、「ポケモンシリーズでは、ゲームで集めたポケモンを現実の友達と交換したりバトルしたりできる。先日、世界大会も開催されたが、ゲーム内のポケモンがリアルの世界で交流を生み出している。またポケモンシリーズの世界では、北海道や関東、パリやニューヨークなど、実際の世界をモチーフにしている。このようにポケモンの冒険世界は現実と近い」とそもそもポケモンは現実にも大きく影響を与えることを目指してきたと説明。

 そんなあるとき、次のポケモン作品について構想を練っていた石原氏のもと、β版から正式版になって間もないIngressを持ってきてくれた人がいたのだという。石原氏は「衝撃を受け、夢中になり、同時にポケモンと共通する哲学があると感じた」と述べる。

石原氏も高レベルエージェント

 筆者もまたIngressにハマった1人だが、質疑ではIngressのエージェントだけに伝わるような言葉ではなく、一般的な用語に置き換えて質問を投げかけた。だが、石原氏は途中から「ポータル」「コントロールフィールド」というIngress用語をさらりと使う。

 石原氏自身が「衝撃を受けた」と口にしただけではなく、ハンケ氏の説明にもあったように、石原氏は相当、Ingressをやりこんでいる様子だ。

専用機と相乗効果を期待

 ゲーム専用機と市場を食い合うのではないか、という指摘に対して、長くと任天堂、そして岩田氏と長く議論してきたと述べる石原氏は「どのようにゲーム人口を拡大し、できるだけタッチポイントの広いスマートフォンのなかで遊びを作り、ゲーム専用機を活性化させているか。カニバる(互いに同じ市場を奪い合う)というよりも相乗効果があるだろうとと思っている」と胸を張る。

 任天堂とDeNAがスマートフォンを軸にした事業を手がける方針としていることとの関係については、「私からは言いにくいが、任天堂さんのほうで、今日でなく、また機会を設けて話す時があるでしょう」と述べた。

「ポケモン×Ingress」

 リアルでの交流を生み出してきたポケモンシリーズ、現実世界を舞台にして遊ぶIngress、そしてゲーム人口の拡大をはかるためにさまざまなチャレンジに取り組んできた任天堂という3社が協力することになった今回。

 急逝した任天堂の岩田氏と進めてきたプロジェクトとあって、質疑であらためて質問が挙がると、石原氏は「何より、ポケモン社と任天堂で、スマートフォンデバイス上でやる遊びは、これまでにない遊びを作りたい、というのが一番最初からのテーマだった。そこに向かって築きあげてきた。このゲームを通じて、ポケモンに位置情報を加えて、再定義し、新しい次元にゲームを導いていきたい。そんなビジョンを抱いてきた」と述べる。

 20周年を迎えるポケモンは、子供だけではなく、大人も楽しむゲームの1つ。またIngressは、現実を舞台にして、今まで知らなかった場所へ誘ったり、ふとしたきっかけで多くの人と知り合えたりする。現実を拡張し続けてきた2つのゲームが融合すれば、どのような体験を味わえるのか。「パパはIngress、子供はPokemon GO」といったスタイルを、子供にスマートフォンを持たせずとも楽しめるようになるのか、ポケモンの魅力だった育成やコレクション、バトルといった要素がどう進化するのか、今後の案内にも注目したい。

(関口 聖)