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nanapiとスケールアウト、ビットセラーが合併

KDDIのオープンインターネット領域における中核へ

 ネット広告を手がけるスケールアウト、生活情報サイトなどWebメディアを運営するnanapi、KDDI子会社のビットセラーは、11月1日をもって合併する。新会社の名前は、「Supership(スーパーシップ)」。いずれもKDDIの傘下にあたる企業で、1社にまとまることで、DMP(データマネジメントプラットフォーム)によるソリューションの提供を目指す。

 新会社の資本金は3億4100万円。存続会社はnanapiとなり、KDDI傘下のSyn.ホールディングスの子会社となる。また、Syn.ホールディングスでは9月30日、動画広告を手がけるアップベイダー社と、スマホ向け販促プラットフォーム「Flipdesk」を提供するSocket社を買収し、子会社化したと発表している。新会社と買収した2社のリソースを組み合わせていく。

新会社を率いる森岡氏(中央)、古川氏(左)、山崎氏(右)

Syn.構想、次のステップへ

 これまで3社、そしてSyn.ホールディングスでは、異なる企業が提供するWebサービスの連携を強める「Syn.(シンドット)」構想を進めてきた。Syn.では、参画する企業のサービスに共通仕様のサイドメニューや、サイドメニュー上部の広告を導入。企業の垣根を超えてユーザーの回遊と送客を図り、収益化を目指してきた。

 新会社であるSupershipの代表取締役社長には、Syn.構想を牽引する森岡康一氏が就く。そしてnanapiの古川健介氏、スケールアウトの山崎大輔氏は、新会社の取締役となり、それぞれこれまで率いてきた事業を担当しつつ、全体を森岡氏が統括する。この組み合わせに、“けんすう”というニックネームでもユーザーから親しまれている古川氏は「ネット業界的には、今回は玄人ウケするかもしれませんね」と笑う。

 「相互に繋がる」「良い繋がりを提供していく」という根幹にあるコンセプト自体は、昨年10月の発表時点から変化はない。一方で、スケールアウトの広告事業では1億MAU(月間アクティブユーザー)、150億インプレッションという巨大なユーザーとの接点を有し、さらにSyn.を通じた過去1年間の取り組みでユーザー属性や行動など独自のデータを獲得した。こうした資産を組み合わせることで、「3社の事業基盤を活かして、新たなる価値の提供とさらなる競争力の強化を目指す」のだという。

キーワードは「DMP」「チャット風のユーザーインターフェイス」

 とはいえ、リリース文に記された「新たな価値」「競争力の強化」だけでは、何が提供されるのか、わかりづらい。具体的な取り組みは今後明らかにされるとのことで、30日の段階でも明らかにされていない。ただし、ヒントになるキーワードはある。それが「DMP」「チャット風のユーザーインターフェイス(チャット風UI)」だ。

森岡氏
 「2014年10月のSyn.構想発表時には、DMPを今後強化する、としか触れていなかったが、今回はその延長線上にある取り組み。パブリックDMPとも言われるcookieデータではなく、プライベートDMPと呼ばれるデータを活用してサービスと広告が繋がっていく。ユーザーからは慎重に合意を得つつ、気持ち悪い形にならないよう、チューニングを重ねていきます。たとえばnanapiの『answer(アンサー)』はチャット風UIにチャレンジしているサービス。これをデータを連携していくことで強化していく。今までのanswerだけではなく、いろんなサービスを提供できるものに仕立て上げていくという形」

古川氏
 「チャット風UIは、さまざまなUIのなかでも、スマホにおいて一番のUIだと思っています。というのも、スマホに触れる時間の6割がチャット風UIだと言われています。FacebookやSiriのようなサービスですね。そんなUIとDMPを組み合わせると、ユーザーさんの課題解決に繋がるのではないでしょうか」

個人を特定するデータではなく、アクションを予測するデータを

 このところ、Webサービスにおける広告で話題のキーワードである「DMP」は、コンシューマーからするとプライバシーへの懸念を抱いてしまう部分でもある。新会社であるSupershipのソリューションでは、導入企業が得た情報を共有することで、精度の向上を図る。こうした点について、森岡氏は、アライアンスメンバーからは理解を得つつ、全てが同意しているわけではない、とコメント。コンシューマーからの同意もきちんと得るなど、慎重に進めたいと語る。将来的には、アライアンス外の企業への売り込みも検討していくが、それはまだ先の話であり、まずはSyn.アライアンス内での展開が想定されている。

森岡氏
 「もちろん個人を特定するような情報は収集しません。たとえば居住エリアのような属性データを集めても、広がりがないのです。それよりもnanapiのある記事を見た人が、別のサイトでこういうアクションをした……ということのほうが立体的な形になる。僕らはそれをホログラフィックアイデンティティと読んでいて、より高い精度で行動を予測できます。このあたりを手がけている企業はほとんどないと思いますが、グーグルやFacebookは近いことをやっているかもしれません」

自社内回遊率を高い水準でアップさせる

森岡氏
 「今までは、サイトA、サイトB、サイトCの間の回遊を考えてきましたが、今回はその部分の強化に加えて、自社サービス内の回遊も精度を高められます。これはサイトAの情報を他サイトで活用できるようになるから。新会社では、その仕組みをソリューションとして提供していきます。まずはSyn.アライアンスに加入する企業に対してですね。自社メディア内の回遊が高まれば、導入しているアドネットワークからの収益も向上する。そういうエコシステムを作りたいのです」

山崎氏
 「DMPで、属性情報を企業間を超えて横に展開することはこれまで、あまりありませんでした。それを実現するためには、各サービス全ての回遊データのログを持っている必要があります。そういう流れで合併することになった。いわばものを作るために集まった、というのが今回の合併なのです」

オープンインターネットでの展開

 企業の垣根を超えてWebサービスを繋げていき、それぞれのサービスの価値を高めていくSyn.は、KDDIが下支えをする仕掛けでもある。auスマートパスのように、auユーザー向けのクローズドなサービスを展開する一方、Syn.は、auユーザーに限らず、オープンなインターネットに対するKDDIの取り組みという側面もある。

 森岡氏は、スマホ/ネットの世界には、ITリテラシーの高い人が巧く使える世界はもうできているが、そうではない人が来る中では、できるかぎり簡便かつ自然に、と語る。

 新会社は、KDDIのオープン領域における中核とも位置付けられている。「DMPによる、より自然に思える誘導」「チャット風UI」といったキーワードもあわせると、これからスマートフォンに乗り換えるユーザーも見据えた動きと言えそうだ。

(関口 聖)