ニュース

映像コンテンツを軸にしたMVNO「J:COM MOBILE」の特徴とは

まずは顧客のシニア層に訴求

 ジュピターテレコム(J:COM)は、au網を利用したMVNO「J:COM MOBILE」を10月29日より開始すると発表した。10月13日には都内で記者向けに発表会が開催され、サービス開始の背景や戦略が語られた。別記事にて掲載している、新サービスの「J:COM MOBILE」、および「LG Wine Smart」についても参照していただきたい。

ジュピターテレコム 代表取締役会長の佐々木新一氏(中央、左)と代表取締役社長の牧俊夫氏(中央、右)。特徴と位置付けるサポートのスタッフもフォトセッションに登壇した

 冒頭に登壇したジュピターテレコム 代表取締役会長の佐々木新一氏からはJ:COMの事業が概要が説明された。

 佐々木氏は、J:COMのケーブルテレビへの加入世帯が500万世帯を超え、ケーブルテレビでのシェアは50%で、業界最大手になっている現状を紹介した。またテレビは405万、インターネットが301万、電話サービスが363万契約と、各サービスの状況も紹介する。

 近年の取り組みでは、2013年第4四半期からテレビサービスのオプションとして、セットトップボックスと連携しタブレットでテレビを見られる「with タブレット」サービスを提供。累計で45万契約、アクティブ利用率は55%で、「順調にセカンドスクリーンとしての利用が浸透している」とした。

 ネット、電話、電力とサービスを拡充しており、今回発表のモバイルを加えることで「宅内から宅外へ、どこでも使えるサービスの提供に努める」と方針を示す。加えて、3400名の販売スタッフ、3500名のサービスエンジニア、12拠点のコールセンターにより、契約から工事・アフターサポートまでカバーし、電話に加えて訪問によるサポートも可能と、充実したサポート体制が強みであるとした。

ジュピターテレコム 代表取締役会長の佐々木新一氏
サービスコンセプト紹介映像

50代~のユーザーに外でも映像コンテンツを見てもらいたい

 ジュピターテレコム 代表取締役社長の牧俊夫氏からは、新サービス「J:COM MOBILE」について解説された。

 牧氏はまず、新サービス導入の背景として、テレビなど映像コンテンツの視聴はモバイルシフトが進んでいるとする。一方で、スマートフォン市場自体は成長が頭打ちになっているとも指摘。「当社は50代~70代がメインのユーザー層。家のテレビだけではなく、外で映像を見ていただきたい、そういう大きな提案をしたい。コンテンツを見る人の層を広げたい」と語り、50代以上のユーザーを想定して、今回発表のフィーチャーフォン型のLTE端末を用意した経緯を明かした。

 佐々木氏から説明もあったように、J:COMではケーブルテレビの提供に伴う、ユーザー宅への訪問を含めたサポート体制を既に整えているのが強みとなり、シニア層を含む世代への端末提供に際しても、電話や遠隔操作での初期設定サービスを無料で付属させたり、訪問サービスも一部は無料にしたりするなど、サポート体制の充実で既存の格安SIMとの差別化を図っている。

 サービス面では、J:COMのテレビサービスを契約しているユーザーが大きなメリットを得られるよう設計されており、「J:COMオンデマンド」アプリについては、外出先などでのモバイル通信でもパケット通信量をカウントしないという特徴を備えた。「映像を楽しむ人には圧倒的に優位な料金プラン。強みはスポーツで、野球なら12球団全部に対応する」などとして、ビデオオンデマンドにとどまらず、映像コンテンツの料金や内容でも優位性があるとした。

ジュピターテレコム 代表取締役社長の牧俊夫氏

「J:COMオンデマンド」でキャリアと差別化

 J:COMはこれまで、auのスマートフォンとセットで販売する「auスマートバリュー」を提供しているが、これは主にauのスマートフォンが安くなる取り組みであり、今後も継続していくとした上で、「スマートフォンは高いというユーザー、あるいは今フィーチャーフォンを使っているユーザーに対して、J:COM MOBILEを提案していく。ユーザーの予算にあった料金体系を提案していく」とした。テレビサービスの契約が前提の「with タブレット」などを含めて、サービスのバリエーションを拡充したという形で、auのスマートフォンとのセット販売とは共存させていく方針。

囲み取材に応じる牧氏

 以下は、ジュピターテレコム 代表取締役社長の牧俊夫氏への囲み取材の模様。

――スマートフォン市場にかげりという説明があった。現状のスマートフォン市場の認識を改めて伺いたい。

 アプリ・サービスや端末それぞれに料金があり、自分にベストな価格はどれか、まだ分かりにくい。それで伸びが少し収まったというのが私の認識。まだまだスマートフォンというのは、料金体系を変えることで伸ばしていける。スマートフォンはツールであり、我々のテレビとも相性がいい。ケーブルテレビは大枠として、トリプルプレイ(テレビ、電話、インターネット)にモバイルを加えてクアッドプレイにしていこうという基本戦略がある。もっと事業を伸ばすために、われわれのユーザー層である50代~70代のユーザーにあった商品体系で提供したいと考えた。今後は20代~40代のユーザーにあったものも出していかないといけないだろう。

――50代以上のユーザーには「LG Wine Smart」の画面は少し小さいのでは。

 この端末の前のモデルは、すこし画面が大きいモデルだった。しかし持ちやすさなどもあり、ターゲット層にはこのモデルが良いと考えた。画面を大きくすると、ターゲット層は少し下りてくる(若くなる)。今回の端末はターゲットを50代以上に絞り込んだ。LINEでお孫さんとやりとりしたいという人はたくさんいらっしゃる。そういう人にはぴったりではないか。ローソンに注文できる生活支援サービスもある。シルバー世代、シニア世代の生活をサポートしていきたいというコンセプト。

――グループとしてのKDDIのauスマートバリューとの棲み分けは。

 基本的にはカニバらない(共食いにならない)こと。auスマートバリューを武器に、iPhoneが中心だが、スマートフォンを販売している。そこと重ならない層を開拓していく。50代以上にKDDIはフィーチャーフォンを提供しようとしているが、我々はスマートフォンを提供していきたい。なぜスマートフォンで提供するかといえば、映像を見ていただきたいから。

――今後は、今のターゲットよりも若い世代にしていくということは、KDDIのターゲット層と重なるのではないか。

 テレビを中心に、若い世代にどう提供できるかだろう。キャリアはキャリアサービスに力を入れていくことになる。我々は「J:COMオンデマンド」を充実させて、いろいろなものを見ていただきたい。それをリーズナブルに提供したい。

――テレビ離れに対し、ケーブルテレビ業界にとってもスマホ対応が不可欠か。

 若者って、映像から離れているわけではない。ニコニコ動画とか、見逃し配信とか、スマホ・タブレットで見ている。リアルタイムでは見ていないだけ。それをオンデマンドで提供するのはひとつのやり方ではないか。Netflixはドラマ、映画が中心だが、我々はそれプラス、スポーツがある。関連会社でJ SPORTSがあり、もっとスポーツ番組を提供していきたい。ディズニーと組んだり、いろんな商品開発をできるのが我々の立ち位置。

――プレゼンテーションでは1日1時間視聴した例だったが、1日1時間以上視聴されると、帯域を買っているMVNOとしては辛くなるのではないか。

 オフロード率など、いろいろな計算をしている。すべてのユーザーが(モバイル網で)見ると辛い側面は出てくるが、それに伴ってケーブルの多チャンネルのサービスのユーザーが増えれば、十分ペイできると考えている。

――今回発表のサービスで、ユーザーの生活がどうよくなるのか、具体的なイメージは。

 VODのサービスはたくさん出てきたが、接触する機会が少なく、何が配信されているか、分からない。リコメンドをしっかりするなどの取り組みを進めていきたい。そうすることで、空いた時間にスポーツを見るなど、自分にあった使い方ができるようになる。そこはまだ緒についたばかりのところ。映像をもっと楽しんでもらう文化を作っていきたい。

――タブレットとスマートフォン、どちらに力を入れていくのか。

 タブレットは(with タブレットとして)すでに45万件の実績があり、テレビの付随サービスという位置付け。マーケットが違うと考えている。モバイルは、端末が0円でなくても大丈夫なら、J:COM加入者でなくても(J:COM対象エリアに住むユーザーなら)申し込める。そういう意味ではタブレットよりモバイル端末のほうが数が出るのではないか。

――契約が世帯単位なのは、たくさん持ってもらうためか。

 それは各社が狙っているところだろう。我々は(特徴にしている)訪問サービスで駆けつけるなら、世帯に1台でも2台でも同じなので。

――J:COMのユーザー以外や、J:COMのエリア外に向けて販売する計画は?

 最初からその議論はあった。自らきっちりとアフターサポートを提供する点で、エリア外は難しい。ノウハウが貯まれば試せるが、提供するのであれば、まずはエリア外のケーブルテレビ会社との連携などを模索しなければいけないだろう。

太田 亮三